初戦は黄秀京・藤田海琴ペアに初めてのストレート勝利。試合の途中でサーブのターゲットを変えたシーンについて問われると、「特にふたりで相談したりというのはなかったんですけど、あうんの呼吸ですね」と坂口

写真拡大

ビーチのヒロインから本物のアスリートへ。先月、東京・台場で開催されたマイナビシリーズ第4戦で坂口佳穗が見せた、小さくも確かな成長の証は――。

* * *

「え、坂口って週プレの表紙やったんですか?」

「みんな浅尾美和の幻想を追いかけているんだよ」

ジャパンビーチバレーボールツアー2016 第4戦・マイナビシリーズのコートを見守る記者席で、前列に陣取ったベテラン記者たちの声がする。心の中で「すいません、その表紙やったの、われわれです」とつぶやきながら会話に耳を傾ける。

大会2日目のコート上では、第4シードの田中姿子(しなこ)・藤井桜子ペアと第5シードの鈴木悠佳子(ゆかこ)・坂口佳穗(かほ)ペアが激戦を繰り広げていた。このゲームに勝利したほうが、翌日の大会最終日に行なわれる準決勝に進出できる。

鈴木・坂口の“スズカホ”ペアと、この日の対戦相手の藤井桜子は、シーズン前に共に合宿を組むなどいわば手の内を知り尽くした間柄。序盤、田中・藤井ペアはターゲットをあえて鈴木に絞る作戦(国内大会では坂口が狙われることが多い)で相手を翻弄(ほんろう)する。スズカホは第1セットを16−21で落とした。

「でも姿子(田中)たちから16点取れたなら上出来でしょ」

前述の記者たちの声が再び聞こえた。それもそのはず。田中も藤井も日本代表として国際大会で活躍した経歴を持つ。実績も経験値も、坂口たちは遠く及ばない。

「まあ、(坂口たちの)ストレート(負け)だろうな」

そして始まった第2セット。一時最大6点差がつく展開だったが、中盤からスズカホの怒濤(どとう)の反撃が始まる。第1セットでは目立たなかった鈴木が立ち直り、スパイクに当たりが出始める。スペースを的確についたスパイクやブロックアウトでポイントを重ね、気がつけばスコアは16−18。

連続ポイントが欲しいこの局面で、坂口に好プレーが飛び出す。ジャストミートした相手のスパイクのコースを完全に読み切り、正面に回り込む。レシーブがきれいに鈴木の真上に返る。トスをもらった坂口はそのままスパイクを打ち込み、1点差。このあたりから、会場の空気が変わり始める。

思えば、勝利した前日の試合から坂口は好調をキープしていた。この日の試合も劣勢の第1セットで所々目を引くプレーを見せており、狙い撃ちされる鈴木を引っ張っているように見える場面すらあった。

鈴木はインドアのバレーボールの実績こそあるが、ビーチ歴は実は坂口のほうが長い。そんな思いもあったのかどうか、とにかくこの日の坂口には、ペアに頼りきりだった昨年のような脆弱(ぜいじゃく)さは感じられなかった。先にマッチポイントを握られるも食らいつき、とうとうセットカウントをタイに戻す。

「予想、外れましたね…」

同業者に指摘され、先ほどの辛口記者は頭をかいている。結局、ファイナルセットは地力で勝る相手に押し切られたものの、途中「もしや初のベスト4か」という見せ場もつくるなどふたりの成長が見られる一戦だった。

試合後、ヘッドコーチの瀬戸山正二氏に話を聞いた。

「大事なところで坂口にレシーブミスが出ましたね。レシーブがしっかり上がれば、いい攻撃につながっていく」

今日に限っては坂口がリズムをつくっていたのでは?との指摘に対しては、

「坂口はああ見えて度胸があるんですよ。サイズもパワーも鈴木のほうが上だけど、メンタルは坂口のほうが強い。鈴木はそこが課題です。坂口の課題は、もっとありますが」

実は、この2週間後に行なわれたツアー第5戦・行橋(ゆくはし)大会で、ふたりは同じ田中・藤井ペアからフルセットの末、金星と言っていい勝利をもぎ取った。“スズカホ”の成長は続いていく。

●坂口佳穗(SAKAGUCHI KAHO)

1996年3月25日生まれ 宮崎県出身 身長172cm 体重58kg ○マイナビ/KBSC所属 武蔵野大学法学部政治学科に在籍中。2014年から川崎ビーチスポーツクラブビーチバレーアカデミーに入校し、ビーチバレーを始める。公式Twitter【@KAHOSCOAT】 公式ブログもチェック!【http://lineblog.me/sakaguchikaho/】 その他の詳細は川崎ビーチスポーツクラブホームページで!【http://www.kawasaki-beach.or.jp/】

◆『週刊プレイボーイ』33号では坂口佳穗がグラビアに登場! 是非ご覧ください!

(撮影/熊谷 貫)