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LINEは2日、東京都渋谷区と「シブヤ・ソーシャル・アクション・パートナー協定」を締結した。LINEアプリを活用して行政サービスの向上を目指すのが狙いとなる。今回の協定締結は、渋谷区民向けのニュースにも思えるが、取り組み方次第では、LINEにとって経営基盤をさらに強固にする可能性を秘めており、重要な意味を持ちそうだ。

○渋谷区との協定内容は?

LINEが地方自治体とパートナー協定を結ぶのは初の試みとなる。これまで、福岡市や千葉市などの地方自治体が「LINE@」を活用し、災害情報等を発信してきたが、今回の協定は情報提供にとどまらず、多様なサービス展開を考慮したものとなり、自治体サービスに広く関わるのが特徴だ。

協定内容は、行政サービスの情報配信、オンライン予約や支払いのほか、区内の小中学生を対象としたリテラシー教育の実施、シェアリングサービスの実現、ITを活用した区役職員のワークスタイルの変革、人材開発や研修プログラムによる人的交流も含まれ多岐に渡る。

このうち、最初に具体化されるのは、行政サービスの情報配信で、渋谷区在住の妊婦、未就学児を持つ家庭に向けてのサービスを今年度末から来年度初頭をメドに提供する。妊婦向けの必要な検診の通知、パパ・ママ教室などの情報提供のほか、行政サービスに関わる1対1の相談をLINEで手軽に行えるようにする。

○LINEにとってチャンス

今回のニュースは、渋谷区民約22万人を対象にしたもので、一見小さな話のようにも見える。そして、企業の社会貢献的な色合いも濃く、LINEにとってのメリットも見えにくいかもしれない。しかし、LINEの現状を考慮すると、興味深い取組みに見えてくる。

国内におけるLINEの登録ユーザー数は6800万人と圧倒的な存在を誇っている。しかし、総人口からすれば、まだリーチできていない層があるのも事実だ。10代、20代では必須のツールとなっているが、それ以外の年代層ではまだ拡大の余地がある。

その拡大余地をなくすためには、多くの人に必要なサービスを追加していけばいい。LINEでは現在、「Closing the distance」という標語を掲げ、従来の人と人を結ぶコミュニケーションツールから、人とモノ、企業、サービスをつなぐ存在になろうとしている。そのため、LINE Payといった決済サービス、LINEニュース、LINEバイトなどのデジタル・ライフコンテンツを追加してきた経緯があり、かつ、LINEアプリをこれらのサービスの入り口となるポータル的な存在としてとらえている。

行政サービスは幅広い年齢層に必要となるものであり、今回の渋谷区との協定は、10代、20代以外の層にLINEの有用性を認識してもらえる可能性を秘めている。現段階では、まだ協定を結んだ段階に過ぎないとして、情報配信以外の具体的なサービス内容については明らかにされていないが、今回の取組みが有用性の高いものであれば、他の自治体へも波及するだろう。LINEにとっては新規ユーザーを獲得するチャンスとなり、経営基盤を強化することもできそうだ。

(大澤昌弘)