町に着いたら、本屋をめざそう。Vol.005  books moblo(神奈川県鎌倉市)

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【毎週水曜 21:00 更新】
知らない町に迷い込むのと、本屋さんで心を遊ばせるのは、どこか似ている気がする。
そして、旅先で出会った本の一節はなぜか、いつも以上に心に残ったりもする――。
全国の町の味わい深い本屋さんが、旅のお供におすすめの1冊を教えてくれる、リレー連載。
長野県松本市の「栞日」菊地徹さんがご紹介くださったのは、神奈川県鎌倉市のこちらです





◆あれもこれも、雑多に並べられた空間は
“本好きの友達”の部屋を彷彿とさせ、懐かしくなる

『books moblo』があるのは、一年を通して人でにぎわう鎌倉の中でも落ち着いた雰囲気の大町エリア。
「この辺りは駅から距離があるし、有名な神社仏閣やカフェも少ないから、比較的静かなんですよ」と店主の荘田賢介さん。
お肉屋さんやクリーニング屋さんなど、昔からやっているお店が並ぶ土地柄もあってか、近所に住んでいるお年寄りもふらっと立ち寄ってくれる。荘田さんにとって、店が街に根づいていることを感じられる嬉しい瞬間だ。
古い本をはじめ、ちょっとマニアックなリトルプレスに絵本――いろんなジャンルの本が雑然と置かれた店内を眺めていると、荘田さんの部屋に遊びに来たような錯覚を覚える。この親しみやすさも、愛されている理由なのだろう。





◆緑いっぱいの鎌倉を歩くとき
かばんの中に偲ばせておきたい一冊

本が好きだからこそ、あえて整理整頓はしすぎないのだという荘田さん。
「きれいに並べると手を伸ばしにくいというか…。大げさに言えば、転がしておいてもいいくらい(笑)」
 そんな荘田さんのおすすめは、1960年代に出版された串田孫さん一の『絵はがき文庫』。山にまつわるエッセイなどで知られる串田さんの文章や絵は、いつも自然への愛情にあふれていて、読む人の心を穏やかにする。お子さんと一緒に、市内のハイキングコースをよく散歩しているという荘田さんらしいセレクトだ。
タイトル通り、一枚ずつ切り離してはがきとして投函することができるから、旅の思い出をしたためるのもいいかもしれない。(ちょっともったいない気もするけれど)

『お気に入りの一節』
水中カメラで彼女達の踊りをうまく撮影し、
それに竪琴で少し古風な音楽を付けて人に見せると、
忘れていたのどかな心を思い出すでしょう ―― 川のこけしが踊る より









御成町にある小さなカフェスタンド「THE GOOD GOODIES」。コーヒーをドリップする間、本を読みながら待っていてほしいという思いから、店内一角に本棚が設けられ、荘田さんが選んだ本が月替わりで並ぶ/寿福寺から源氏山公園へと続くハイキングコースは、荘田さんのお散歩コース。ハイキングコースから見下ろす街の景色。鎌倉=海や観光地というイメージを払拭する

◆本をきっかけに新しい出会いが生まれますように。
そんな願いが込められたブックイベントを開催

鎌倉は、大佛次郎や川端康成をはじめ、多くの文学者(鎌倉文士)に愛された文学の街。mobloでは、かつて鎌倉文士達が地域と文化の振興を目的に行っていた「鎌倉カーニバル」にあやかり、2012年より「ブックカーニバルinカマクラ」を主催している。
会場を複数に分けて、トークイベントや読み聞かせ等が行われるほか、鎌倉文学館や図書館、市内の本屋さんなど「本のある場所」をめぐるスタンプラリーもお楽しみの一つだ。 荘田さんの願いは、本を通して街とたくさんの人がつながること。
「この街が好きな人も、本が好きな人も、大人も子どもも、みんなが集まって楽しんでもらえたら」
本が身近になったら、そして、同じ趣味を持つ友達ができたら、読書がもっと楽しみになる――本屋さんは、本と人とをつなぐパイプの役割を果たしているんだと教えてもらえるような場所だ。



TEL 0467-67-8444
神奈川県鎌倉市大町1-1-12 WALK大町2 2F-D
営業/10:00〜18:00
月曜休(祝日の場合は営業)

おすすめの本
串田孫一 絵はがき文庫

THE GOOD GOODIES
TEL 0467-33-5685
神奈川県鎌倉市御成町10-1
営業/7:00〜19:00
水・最終火曜休

WRITING/MINORI KASAI