妖精が住むガジュマルの木に出会える、沖縄「ガンガラーの谷」へ

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旅行ライターの松岡絵里が、夏休みに行きたい国内のプチ秘境旅を提案するシリーズ。第1回は、古くから信仰の場とされてきた鍾乳洞と、深い緑に覆われた亜熱帯の森から成る「ガンガラーの谷」をご紹介します。妖精が住むと言われる巨大なガジュマルの木に出会えたり、鍾乳洞の中に作られたカフェでひと休みしたりと、夏の暑さも忘れる気持ち良さですよ。

2008年に初めて公開された、亜熱帯の森と鍾乳洞

「空気が違う!」。一歩森に足を踏み入れた瞬間、思わずそんな声をあげました。那覇空港から南へ約30分。沖縄の南部、「おきなわワールド」に隣接する「ガンガラーの谷」は、沖縄に行ったことがある人でも、その名を知らなかったという人もいるかもしれません。ここは2008年に公開されるまでひっそりと時を刻んでいた、知られざる亜熱帯の森なのです。

ガンガラーの谷は、数十万年前に鍾乳洞だったところが、一部崩壊して森となった場所。だから神秘の森への旅は、芝生のフィールドの中にぽっかりと口をあけた鍾乳洞からスタートします。「こんなところに鍾乳洞が!?」と意表を突かれる幕開けも、なかなかドラマチックなのです。

「『ガンガラー』というのは、かつて谷内に存在した丘の上の岩穴に石を投げ入れると『がんがらー』と響いて聞こえた来たことに由来します」とガイドさん。ガンガラーの谷を見るには、事前に予約してガイドさん同行のツアーに参加する必要があります。ちょっぴり手間はかかるけれど、その価値はあり。

ガイドさんの説明を聞いていると、それまで「鍾乳洞」「森」という漠然と大きなイメージだったのが、一つ一つの鍾乳石や植物それぞれにストーリーがあるのがわかってくるのです。

良縁と子宝に恵まれる洞窟内のパワースポット

ガンガラーの谷のツアーは約1キロの道。アップダウンはありますが、森を散歩する感覚で気軽に歩ける行程になっています。

最初の見どころが、「イナグ洞」「イキガ洞」というふたつの洞窟。イナグは女性を、イキガは男性を意味するそうです。

ランプを手にイキガ洞の奥へと進んでいくと、ひんやりした空気が頬に触れ、なるほど神聖な気配が漂います。かつてここは祈りの場だったそう。古くからここで拝めば良縁に恵まれ、子孫繁栄につながると信じられてきました。

さらに、洞窟を後にして森へと歩を進めると、そこに待ち受けているのは緑の世界。亜熱帯の森のせいか、植物たちも南国の気配をまとっています。映画『ジュラシックパーク』の舞台と言われても納得がいくし、上を見上げるとターザンがいてもおかしくない……そんな雰囲気なのです。

妖精が住むと言われる、神秘的なガジュマルの木

そしてハイライトが「森の賢者」と呼ばれるウフシュガジュマル。ウフシュは漢字で「大主」と書きますが、その字がぴったりの圧倒される大きさです。天からしたたり落ちるように無数の根が広がっていて、その形も芸術的。この木には沖縄で知られる森の妖精、キジムナーが住むと言われています。現実離れした佇まいは、確かに妖精が住んでいそうです。

そして、ツアーはいよいよ終盤。森の中に設けられた素朴な木の階段を登っていくと、それまでの森の雰囲気から一転、パッと視界が開けます。スタッフが手作りしたというツリーテラスからは、眼下に広がる青々とした森と水平線が望めます。この森は太古の昔から根付く小さな命の集合体なんだと、なんだか感慨深い気持ちに。たっぷりと清浄な空気を吸い込むと、心も体も浄化されるような気がします。

ツアー後は、涼しいケイブカフェで余韻と和みの一杯を

ツアー終了後は「ケイブカフェ」でひと休み。その名の通り天然の洞窟の中に造られたカフェです。ドアなどで仕切られていない開放的な空間は、洞窟だけあり空気もひんやり。歩き疲れた体を心地よく癒してくれます。天井から垂れ下がる無数の鍾乳石を眺めながら、和みの一杯とともに森の余韻に浸りたいものです。

風化した珊瑚で焙煎し、地下水で入れた極上のコーヒー

ケイブカフェでいただけるのは、沖縄ならではのドリンク。風化した珊瑚で焙煎している35(さんご)コーヒーは、近くの玉泉洞の地下水で入れたこだわりの一杯。ピンク色が華やかなハイビスカスソーダは、爽やかな酸味が疲れを吹き飛ばしてくれます。ビール好きの方には地ビールも。

ちなみに、ケイブカフェのすぐそばでは発掘作業も行われているそう。ガンガラーの谷は日本の考古学的にも重要な場所で、貴重な出土品も多く発見されているとか。

太古の昔から、植物たちはもちろん、人間も好んで住んでいたガンガラーの谷。ケイブカフェで一杯を味わいながらその歴史に思いを馳せると、ツアーで歩いた道がさらに意義深いものに思えるはずです。

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