関連画像

写真拡大

従軍慰安婦問題の記事を書いた元朝日新聞記者の植村隆氏を父に持つ19歳の女性が、ツイッターに自身の顔写真や誹謗中傷の投稿をされたとして、投稿主の中年男性に損害賠償を求めていた訴訟の判決が8月3日、東京地裁であった。裁判所は「投稿が、原告のプライバシーや肖像権を侵害する違法なものであることは明らか」として、男性に請求通りの170万円を支払うよう命じた。

判決後、東京・霞が関の司法記者クラブで会見した、女性側弁護団長の阪口徳雄弁護士は、「(同種の裁判で)一般個人の慰謝料の金額としては異例。無関係な家族や子どもをネット上で攻撃する風潮はあってはならないという、裁判所の考えが表れているのではないか」と話した。

植村氏は1991年、従軍慰安婦問題に関する記事を書いた。2014年3月に朝日新聞を退職したが、一部週刊誌が記事の内容を「捏造」と報道したことから、ネットを中心にバッシングが発生した。

朝日新聞は同年12月、記事に表現上の誤りや用語の誤用があったことを認めたが、捏造については否定。植村氏は現在、名誉回復を求め、週刊誌を相手に訴訟を起こしている。

●「健全なインターネットの利用」考える機会に

判決によると、問題のツイートは女性が高校2年生だった2014年9月に投稿された。ツイートの中では、女性の顔写真とともに、名前や学校、学年が示されており、「超反日サラブレッド」など誹謗中傷する言葉も書かれていた。

裁判所は投稿当時、植村氏や家族に対する、脅迫状やネット上のバッシングが多数あったことを認定。「当時17歳の高校生であった原告の恐怖及び不安は耐え難いものであったと考えられる」と指摘し、問題の投稿を「悪質で違法性が高い」ものと判断した。

会見では、「匿名の不特定多数からのいわれのない誹謗中傷は、まるで、計り知れない『闇』のようなものでした」とする女性のコメントも読み上げられた。

コメントの中で女性は、今回の判決について「不当な攻撃をやめさせるための契機になってほしい」「健全なインターネットの利用とは何かについて、考える機会になってほしい」などと思いをつづっている。

●匿名ユーザーも「最後は突き詰められる」

裁判を起こすためには、相手を特定する必要がある。弁護団によると、匿名であるツイッターの投稿者を特定するため、裁判前にプロバイダ責任制限法に基づいた、複数の手続きを行ったという。

弁護団はまず、米国ツイッター社から投稿者のIPアドレスなどを入手。続いて、入手したIPアドレスをもとに、国内のプロバイダーに投稿者の氏名や住所の開示を求めた。いずれも東京地裁に仮処分の申し立てや訴訟を提起する必要があったため、今回の裁判を始めるまでに1年以上の時間がかかったという。

阪口弁護士は、「(ネットの匿名ユーザーは)およそ見つからないと思ってやっているだろうが、限界はあっても最後は突き詰められる可能性がある。今回の判決で再確認できた」と語った。

(弁護士ドットコムニュース)