「ダリ展」国立新美術館で開催!本格的な回顧展が10年ぶりに帰ってくるのキャッチ画像

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スペインの画家「サルバドール・ダリ」の回顧展「ダリ展」が国立新美術館で2016年9月14日(水)から12月12日(月)までの約3ヶ月間にわたって開催されます。200点の作品が展示される、2006年以来約10年ぶりとなる本格的な展覧会です。サルバドール・ダリの世界観に浸れる魅惑的な展示の内容をご紹介します。

日本では過去最大規模の「ダリ展」

「ダリ展」では、ガラ=サルバドール・ダリ財団やサルバドール・ダリ美術館、国立ソフィア王妃芸術センターのダリ・コレクションと日本国内から、主要作品が200点ほど揃います。日本では過去最大規模となる展覧会です。ダリは絵画や彫刻の創作以外にも、宝飾品や映画の制作、舞台装置、衣装のデザイン、挿絵、執筆活動も精力的に行っていました。ダリの魅力がたっぷり詰まった回顧展を、鑑賞してみませんか。

展覧会の構成

●初期作品(1904年〜1922年)

サルバドール・ダリは、スペイン・カタルーニャ地方のフランス国境に近い町「フィゲラス」に誕生しました。芸術や文化に造詣が深く、自由な気風の家庭だったと言います。ダリは少年時代から絵画の才能を賞賛されていました。10代に描いた作品は、地元のフィゲラスや夏の休暇を過ごした漁村カダケスの風景です。

●モダニズムの探求(1922年〜1929年)

ダリは1922年にマドリードのサン・フェルナンド王立美術アカデミーに入学します。しかし、そこでの教育に飽き足らず反抗的な学生だったそうです。学生寮で生活し、後に映画監督・脚本家・俳優として活躍した「ルイス・ブニュエル」や、後の詩人「フェデリコ・ガルシア・ロルカ」と出会い交友を結びます。10代後半から20代前半にかけて制作したのは、キュビスムや、ピュリスム、未来派などの新しい芸術の影響を受けた作品です。

●シュルレアリスム時代(1929年〜1938年)

1929年には、ブニュエルと共同で脚本を手掛けた映画「アンダルシアの犬」がパリで公開され大反響を呼びました。また、フランスの詩人「アンドレ・ブルトン」が中心になって活動するパリのシュルレアリスト・グループに参加します。パラノイア的(批判的)方法を生み出して、シュルレアリスムの中心的存在の画家として活躍。その一方で、ブルトンとの不和が芽生えてしまいます。

●ミューズとしてのガラ

ダリは1929年の夏、詩人「ポール・エリュアール」の妻「ガラ」と出会い、すぐに恋に落ちてしまいました。ガラは常にダリに寄り添い、ミューズ的存在で芸術に霊感を与えながらプロデューサーとして支援し、ダリを成功へと導きます。

●アメリカへの亡命(1939年〜1948年)

第二次世界大戦が始まると、ダリとガラは戦火のヨーロッパを後にアメリカに亡命します。1934年以降、アメリカで何度か展覧会を開いていたダリは既に名の知れた作家でした。商業的な仕事や、初の小説、自伝などの出版を通じてシュルレアリスムを体現し確固たる地位を確立します。

●ダリ的世界の拡張

ダリはアメリカ滞在中に舞台芸術や映画など、美術の仕事を行っていました。協力したのは、ヒッチコックやディズニー、マルクス兄弟などです。他にもファッションや宝飾の仕事も積極的に行い、ダリの芸術から派生したイメージは大衆的な人気を集めます。

●原子力時代の芸術(1945年〜1950年代)

1945年、ダリは広島と長崎への原爆投下に大きな衝撃を受けました。新しい原子物理学の知見と宗教的な神秘主義を結びつけ、核時代の到来で変質してしまった新しい世界での芸術のあり方を探り奮闘します。

●ポルト・リガトへの帰還、もしくは晩年の作品(1960年代〜1980年代)

アメリカからスペインに戻ったダリとガラは、カダケスの近くの小さな漁村「ポルト・リガト」で暮らし始めます。1960年代以降は古典芸術に回帰し、巨匠たちに影響を受けた作品を描きながら、自身の芸術要素を集大成した「テトゥアンの大会戦」など一連の大作絵画を次々と制作。そして1974年、生まれ故郷のフィゲラスに、全身全霊で作り上げた「ダリ劇場美術館」をオープンしました。

ダリ展の見どころ

●スペインとアメリカのダリ・コレクションが全面協力

スペインにあるガラ=サルバドール・ダリ財団や国立ソフィア王妃芸術センター、アメリカのサルバドール・ダリ美術館の世界的なダリ・コレクションが一堂に集結するのは初めての機会です。

●ダリの創作活動の全貌を網羅的に紹介

ダリはスペインやフランス、アメリカと色々な国で、常に独自の世界を作り出し多くの人々を魅了しました。京都と東京での回顧展では初期から晩年までに渡り、ダリの作品が国内外から集結。過去最大規模の約200点にもおよぶ作品によって創作の軌跡をたどります。

●さまざまなジャンルで活躍したダリ・ワールドが展開

ダリは絵画や彫刻の創作以外にも、宝飾品や映画の制作、舞台装置、衣装のデザイン、挿絵、執筆活動も精力的に行っていました。ダリ展はさまざまなジャンルで才能が開花したダリの魅力がたっぷり詰まった回顧展です。展示会場では、圧倒的なダリ・ワールドを存分に満喫できるでしょう。

作品をピックアップしてご紹介

●ラファエロ風の首をした自画像(1921年頃)

ダリが最も敬愛した画家の1人が、イタリア・ルネサンスの画家「ラファエロ」です。この作品は、ラファエロが制作した自画像を思わせるポーズをとっています。背景に描いているのは、カダケス湾とピショット家が住まいを構えていた小さな島の風景です。ダリが芸術の道を歩む中でも、芸術に造詣の深いピショット家との関わりは大きな意味を持っていました。ポスト印象主義の影響を大いに受けたダリは、筆を大胆動かし鮮やかな色彩でこの作品を描いています。

●降りてくる夜の影(1931年)

この作品を制作するにあたり、ダリは故郷のアンポルダ地方で目にしたノルフェオ岬の岩壁と、ロサス海岸のイメージを組み合わせました。広大な土地に夕暮れ時の影が差すノスタルジーで幻想的な場面を描いています。カダケスの別荘近くにあるコンフィテーラ海岸(キャンディ・ビーチ)の光景をイメージしているのが画面中央の白い石です。右端にある岩の背後から姿を現す白い布で覆われた立像は人のように見えますが、胴体から不思議な突起物が現れています。得体の知れないその幻影は、鑑賞する人達をミステリアスな世界へと誘導するでしょう。

●少女の後ろ姿(1926年)

ダリが生涯を通じて何度も立ち返ることになった作品が「女性の後ろ姿」です。初期の1920年代、ダリは4歳下の妹のアナ・マリアをモデルに後ろ姿を描いた作品を何点か創作しました。後にその姿は妻のガラに替わります。アナ・マリアのうねる豊かな黒髪を克明に描写しているのに対し、背中は大きく単純化したマッスとして捉えています。写実性と神秘性を併せ持つ光の解釈に、フェルメールの影響が伺える作品です。

●子ども、女への壮大な記念碑(1929年)

時間の経過によって腐敗する物体に関心を抱いていたダリは、映画「アンダルシアの犬」で腐ったロバを登場させます。1929年から30年にかけて、絵画作品でも腐敗のイメージを積極的に描きました。この作品では、人間の頭部や手、ナポレオン、モナリザなど様々なものが朽ちるかのように溶け合い圧倒的な存在感を示しています。また、画面右上で牙をむいているのは、ダリにとって恐怖の対象・ライオンです。

●引出しのあるミロのヴィーナス(1936年・1964年に再鋳造)

古代ヘレニズム期の彫刻、ミロのヴィーナス(紀元前3〜1世紀)をもとに制作した作品です。ダリは幼少期にミロのヴィーナスを模したテラコッタ製の彫刻を制作し、その後エロティックな歓びを見出したと語っています。古典芸術を象徴する女神像のなめらかな身体についているの6つの引き出しです。胸と腹部には白テンの毛があしらわれています。

●奇妙なものたち(1935年頃)

夜の風景の中に描かれているのは、柔らかい時計やカダケスのクレウス岬、小枝の髪の毛を生やす女性、パンを頭に乗せた男性の胸像など、ダリのシュルレアリスム時代を特徴づけるモチーフです。ダリは1930年代半ばから同一形態を異なるテーマに変化させて繰り返す、形態学的なこだまの探究をスタートしました。この作品は女性の下半身や赤い建物の毛で塞がれた開口部、白い椅子の肘掛のほか、女性の右腕に形態学的なこだまが確認できます。無関係な図像の集まりのようですが、同一形態の反復と限られた色彩により幻想的な雰囲気が生まれ、見事に調和しています。

●見えない人物たちのシュルレアリスム的構成(1936年頃)

1926年に制作した、「エス・ヤネの岩礁」を描き直した作品です。制作するにあたり、最初のヴァージョンの前景に描いた手で顔を隠す女性や入り江を、椅子、ベッド、柱脚のある舞台装置っぽい白いステージに変更。前年に制作した「奇妙なものたち」と同様に、椅子やベッドに女性の人型を残しています。

●ウラニウムと原子による憂鬱な牧歌(1945年)

広島と長崎に原爆が投下されたことを知ったダリは大きな衝撃を受けて、この作品の制作に取り掛かりました。画面中央、首を左斜めに傾けた人間の頭部の中に描いているのは、爆弾を落とす戦闘機です。画面右端の爆発のイメージと組み合わせると、広島に原爆を投下した爆撃機エノラゲイを想像させます。黒を基調とした背景で、原爆がもたらす恐怖により支配されてしまう陰鬱な世界を表現しています。

●ラファエロの聖母の最高速度(1954年頃)

ダリは1951年に発表した著書「神秘主義宣言」で、原子力などの科学技術と宗教、古典主義に回帰することの重要性を強調し、ルネサンスの画家「ラファエロ」への敬愛を示しました。この作品は、そうした関心事に基づいて制作した一連の作品群に属します。ラファエロ風の微笑みを浮かべた聖母像は、動的なエネルギーで旋回しながら幾何学的な形態へと解体。現代的なテーマと古典芸術の融合で、神秘的な力を見出そうとしたダリの意図が表れています。

●素早く動いている静物(1956年頃)

16世紀のオランダの画家「フロリス・ファン・スホーテン」が描いた風俗画「食物のあるテーブル(1617年)」にヒントを得て制作した作品です。原子物理学に関心を持っていたダリが、物体が空間の中で浮遊し回転する様子を描き、宇宙の成り立ちへの理解を示そうとしていました。テーブルの隅で傾く瓶や、ねじ曲がった果物鉢、鋭い包丁など、それぞれバラバラに存在するように見えます。しかし実際に置かれているのは、黄金分割の数学的な座標軸上です。厳格なシステムによって支配されている絵画空間を表現しています。

東京・国立新美術館のほか、京都でも開催中のダリ展。独特の世界観を感じに足を運んでみませんか。

イベント詳細
名称:ダリ展

京都展
会場:京都市美術館(岡崎公園内)
住所:京都府京都市左京区岡崎円勝寺町124
会期:開催中〜2016年9月4日(日)
開館時間:9:00〜17:00 ※ただし、8月11日(木・祝)・12日(金)は19:00まで(入場は閉館の30分前まで)
休館日:月曜日
電話番号:050-5542-8600(ハローダイヤル)

東京展
会場:国立新美術館 企画展示室1E
住所:東京都港区六本木7-22-2
会期: 2016年9月14日(水)〜12月12日(月)
開館時間:10:00〜18:00 ※ただし、10月21日(金)・22日(土)は22:00まで(入場は閉館の30分前まで)
休館日:火曜日
電話番号:03-5777-8600(ハローダイヤル)

公式サイト:http://salvador-dali.jp