『ミライの授業』(瀧本哲史/講談社)

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 今あなたは何歳だろう。もし14歳、もしくはその手前の年齢であれば幸いだ――なぜなら『ミライの授業』(講談社)の内容のすべてを吸収し、血肉にすることができるからだ。本書は京都大学で「企業論」などを教えるエンジェル投資家・経営コンサルタントである瀧本哲史氏が、普段大学生に対して行っている講義を14歳向けにわかりやすくした授業をあますところなく収録している。わかりやすくした、といってもレベルを落としたわけではない。より目線を低くし、歴史に名を残すイノベーターの思考とはどういうものだったのかを丁寧に解説して、未来を作るための思考法を伝授しているのだ。

 しかし本書が有効なのは14歳の人ばかりではない。かつて14歳であった大人にも『ミライの授業』は非常に効く。発売早々にAmazon売れ筋ランキングのカテゴリー別で1位を獲得。発売から1カ月経った今も首位をキープしている(2016年8月1日現在)。書店でも平積みされるなど、14歳ではない世代にも支持されているのがわかる。

 本書の最後にある「ミライのきみたちへ」には、瀧本氏のこんな言葉がある。

誰もがかつては14歳だった。自分の可能性をあきらめ、愚痴や不満ばかりこぼしている大人たちも、かつては14歳だった。わたしはきみに、そしてすべての「かつて14歳だった大人たち」にこの本を贈りたい。たとえ何歳であろうと、未来をあきらめることは許されないし、わたし自身が未来を信じているからだ。

 14歳のきみたちには、未来がある。可能性がある。

 そしてかつて14歳だった大人たちには、知識がある。経験がある。もう一度人生を選びなおすだけの、時間も残されている。50歳を過ぎて天空を見上げた伊能忠敬を、60歳を過ぎて国際問題の最前線に身を置いた緒方貞子さんを、思い出してほしい。

 本書では万有引力の法則を発見したニュートン、地動説を唱えたコペルニクス、ノーベル賞を受賞した大村智教授らの人生や偉業からさまざまな考えを学ぶ授業が行われる。それは14歳の中学生の目を開かせ、大人にはいつの間にか体に付いてしまっていた思考の贅肉を落とし、偏狭な色眼鏡を外してくれることにつながる。特に瀧本氏の言葉にもある伊能忠敬と緒方貞子氏のページは「歳だから」とつい言ってしまう大人に発破をかけるものだ。

■星を見上げる男、伊能忠敬

 詳細な日本地図を作ったことで知られる伊能忠敬は商人として働き、リタイヤした50歳になってから江戸へ出て「天文学」を学び始めた。そこで学んでいた忠敬にある大きな目標が生まれたことから日本地図の作成をするのだが、普通だったら「そんなこと無理」と言われそうな難題だ。しかし非常に勤勉な忠敬はひとつひとつ課題をクリアし、やってのけた。

■銃弾飛び交う紛争地帯のど真ん中にさえ乗り込んだ、緒方貞子

 元国連難民高等弁務官として知られる緒方貞子氏はもともと国際政治学者として大学教授などを務めていたが、63歳の時に国連難民高等弁務官として選出され、初の女性、初の学者出身、そしてアジア人としても初という「無名の新人」として就任する。当初お飾りと思われていた緒方氏は豊かな見識と経験を活かして強力なリーダーシップを発揮、人道支援機関であった国連難民高等弁務官事務所を“戦う組織”に変え、自ら紛争地域へ出向いて問題解決をする姿から「小さな巨人」として尊敬を集めた。この2つのエピソードを知ると「歳だから」はただの言い訳でしかないことがよくわかるだろう。

 これらの授業は独立しながら有機的につながり、発見と検証、そして理解することを通じて「未来は作ることができる」と確信させてくれる。自分に偉人たちがやったようなことができるわけがない、と考えてしまいがちな14歳には学ぶことの大切さと一歩踏み出す勇気を、そしてかつて14歳だった大人たちには、自分の限界を決めているのは自分であり、鵜呑みにした常識に囚われ、現状に文句を言って「やらない理由」を探すことがいかに愚かであるかという気づきを与えてくれる。

 そうなったらどうするか? もうすぐに行動するしかない。本書との出会いは今日という日を、そして明日からの未来を確実に変えてくれることだろう。現状維持? そんなもの、犬にでもくれてやれ!

文=成田全(ナリタタモツ)