いまや介護は誰でも避けては通れない問題。平成27年の厚生労働省の調査では、85歳以上の60.3%は介護が必要な状態であることがわかっています。

家族の介護には多額の費用が発生しますが、それだけでなく、介護する側が仕事を辞めたり、休職したりせねばならず、収入が減ってしまうこともあります。

このような状態で徐々に家計が圧迫され、「介護破産」に陥るケースも近年増えているといいます。

収入が減っても住宅ローンなどは払い続けなくてはならないため、事前にきちんと資金計画をしていないと、後で取り返しのつかないことになってしまうかもしれません。

そこで目を通しておきたいのが、『高齢者施設 お金・選び方・入居の流れがわかる本』(太田差惠子著、翔泳社)。介護が必要になった場合の施設の選び方から、かかるお金、契約についてまでが具体的に説明されています。

今回は本書のなかから、施設入居を計画する際に知っておくべきポイントをご紹介します。

■1:親が「100歳になるまで」を想定して計画する

高齢者施設に入居するにあたって必要な費用は、大きく分けて「入居一時金(前払金)」「月々必要な料金(居住費・食費・サービス費など)」「その他の費用(医療費・生活用品・小遣いなど)」「予備費」となります。

入居一時金は無料〜1億円、月額費用は5〜40万円と施設によってかなり幅があるため、「いくらかかるか」というより「いくらかけられるのか」という視点で検討していく必要があります。

資金計画を立てる際は、親が100歳まで生きると想定して計算します。入居一時金などのまとまったお金は貯蓄から、月々の支払いは年金などの収入から支払うのが基本です。

たとえば、1,000万円貯蓄があるAさん(80歳)の場合、一時金200万円、緊急の出費に備えた予備費を200万円とすると残りは600万円になります。

100歳まであと20年間生きるとすると、年間で使えるお金は30万円で、月額にすると25,000円。毎月10万円の年金があるとすると、12万5,000円までは支払えるということになります。

まずは早い段階で、親の貯蓄と毎月の収入を把握しましょう。資産状況がわからないまま施設探しをすると、あとあとやりくりができなくなってしまう恐れがあります。

■2:月額利用料の他にかかる費用にも注意する

特別養護老人ホームや老人保険施設など、介護保険で入れる「介護保険施設」では、おむつ代や食事用エプロン代など細かなものまで介護費に含まれています。

しかし、介護付き有料老人ホームなどの民間施設の場合、おむつ代は原則有料。

持ち込みをした場合でも廃棄料金が必要になる施設もあります。通院への付き添いや買い物代行なども費用がかかります。

また、民間施設入居中に病院に入院する場合、食費以外は継続して支払わなくてはいけません。

このような状況になると「施設費用」と「入院費用」が二重にかかり、厳しい状況になります。そのため、あらかじめ予備費をとっておかなくてはいけません。

■3:利用料金に合ったサービスかどうか確認する

民間施設の利用料金を大きく左右するのは、「立地」「設備」「人件費」の3つ。一般不動産と同様、立地条件のよいところは施設料金も高くなる傾向があります。

建物についても新築は割高で、中古物件をリノベーションした施設は割安になっています。共用施設の広さや豪華さも注意したいところです。

また、人員体制も確認しましょう。国の指定基準は要介護者3名に対して職員1名となっていますが、民間施設では2.5:1や2:1となっているところもあります。

また、介護職員よりも看護職員の方が人件費が高くなるため、看護師が24時間体制で常駐する施設では利用料金が高くなります。

比較検討する際は、なにが必要でなにが必要ではないのかをしっかり見極めることが大切です。

■4:自分自身も年金生活になる可能性を想定する

親の貯蓄や年金で費用が十分にまかなえない場合、子からの支援が必要になることもあります。

しかし、現在は働いていて収入が十分にある人でも、将来は年金生活になるということを意識しておかなくてはいけません。

自分自身が介護される身になった、もしくは先に自分が亡くなってしまった場合は次の世代に大きな負担をかけることになってしまいます。

親の支援をする場合は、子の生活設計も考え、できる範囲で行うことが大切です。

■5:「共倒れ」になる前に生活保護も視野に入れる

介護疲れで、共倒れ寸前のような状態になると「お金はあとでなんとかなるはず」と考えて、とにかく施設入居の契約をしてしまう人がいます。しかしこれは危険。

途中で経済状況が厳しくなり、施設を退去しなくてはならない事態に追い込まれることもあります。

それを回避するには、まず担当のケアマネージャーに相談し、在宅のままショートステイを連続30日間利用する、3ヶ月間老人保健施設に入居してもらうなど一時的に親と離れ、冷静に考える期間をもうけましょう。

親の経済状況がかなりひっ迫している場合は、親に生活保護を申請することも一案です。

施設の月額利用料を生活保護の「生活扶助」「住宅扶助」で賄える可能性があります。実際生活保護を受けながら、住宅型有料老人ホームやサービス付き高齢者向け住宅で生活している例も珍しくありません。

介護にかかる費用は施設によって大きく異なるので、資料などを取り寄せてしっかりと比較検討することが大切。

親が元気なうちはまだまだ大丈夫と思いがちですが、元気なうちだからこそ、しっかりと話し合っておきたいですね。

(文/平野鞠)

 

【参考】

※太田差惠子(2016)『高齢者施設 お金・選び方・入居の流れがわかる本』翔泳社

※介護や支援が必要な人の割合はどれくらい?-公益財団法人 生命保険文化センター