欧州のターミナル駅は“散在”に要注意! そしてタバコは口ほどにものを言う 欧州のターミナル駅は“散在”に要注意! そしてタバコは口ほどにものを言う
(C)Gare du Nord : http://www.flickr.com  、(C)TGV train : Hosang You

【パリでの悪夢】

 列車での移動は飛行機とは違う趣がある。しかし、空港と違い駅の数は多く、乗り換えには油断が禁物だ。

 アテネで休暇を過ごすため、久々にイギリス海峡を渡った。今回、イギリスとベルギーの友達をそれぞれ訪問する予定であり、とても興奮していた。ロンドンを出発し、カレー(Calais)を経由し、パリ北駅に到着した時間は夕方7時頃。時刻表を広げてみると、ちょうどトリノ行きの夜行列車が1時間後に到着し、絶妙なタイミングであった。しかし、列車が駅に到着するまで時間に余裕があるためか、発車表には列車番号が表示されなかった。

 本を読みながら時間を潰して30分ほどが過ぎたが、相変わらず列車番号が表示されない。“おかしいなぁ。もう一度見てみようか…あれっ?”細かいタイムテーブルを指で追いながら確認していた私はショックで倒れるかと思った。待っていた列車の出発駅は一つ下に表示されていた『リヨン駅』だったのだ。冊子が曲がっており、見間違ってしまったのだった。

 今回、フランスには滞在予定がなかったため、当然、両替(当時はフランスはユーロではなくフランを通貨としていた)もしていなくて、タクシーや電車に乗る事もできない。状況を確認しようと地図を見ると、リヨン駅は以前行ったことがあり、私の速足と秀でた方向感覚であれば30分以内に到着できそうかと思えた。

 しかし、常にそうであるように、理想と現実は違うのだ! 実際に歩いてみると交差点で方向を迷いだし、歩けども歩けどもリヨン駅は現れてこなかった。…冷や汗が流れた。最後には結局、息苦しくなるほど走って行かなければいけなかった。だが、ようやく到着したリヨン駅のプラットフォームといえば、がらんとした静寂のみ…

 やっと落ち着きを取り戻し、もう一度時刻表を開き、今の時間から乗れる夜行列車をなんでもいいから探してみた。幸いにも、今日最後のアムステルダム行きの夜行列車が30分後にあった。ホッとしてため息をつくのもつかの間、出発駅はなんとあきれたことに、先ほどまで居たパリ北駅だった! 

 もうこれ以上、両替の手数料など気にする状況ではない。直ちに両替する為にキオスクへ走った。店の明かりはついているのに、若い店員は“本日の営業は終わりました”との一言。切迫した状況を説明し、同情心を誘おうとトライしたが、動じぬ様子。

欧州のターミナル駅は“散在”に要注意! そしてタバコは口ほどにものを言う
(C)Eiffel Tower : http://www.flickr.com

 押し問答する時間すら惜しいため、すぐさまタクシー乗り場へ走り、運転手さんに叫んだ。“パリ北駅20ドル、OK?”どさくさに紛れてこう叫んだが、満足する金額だったのか、とにかく何も言わず出発してくれた。やはりドルの威力は強い!

 しかし、5分あれば余裕で駅まで飛んでいけると思ったタクシーが、予期せぬ事態に陥った。夜も遅いのに、なんという渋滞… 混んでいる道を走りながら、ふと別の考えが浮かんできた。“こんなに近いのに20ドルだなんて…”

欧州のターミナル駅は“散在”に要注意! そしてタバコは口ほどにものを言う
Illustration : Hosang You

 そして、駄目でもともとと思い、運転手さんに一言さらっと投げてみた。“実は、手元に20ドルがあると思ったんですが、もう一度、ちゃんと確認してみると15ドルしかないんですが…”という、しらじらしい私の言い訳に運転手さんは断固に“No!”と返事する。しかし、その瞬間、頭に浮かんだ接待用のタバコ一箱! 

 既に開けた箱ではあったが、手持ちのドルが足りないので残りはこれで何とかしようと思って話してみたら、運転手さんが一本吸ってみようと言ってくれるではないか。喜んで火までつけてあげると、味が気に入ったのか快くOK! タバコ代がめっぽう高い国なので予想はしていたがここまでだとは! 千ウォン(百円)でお互い気分よく交渉はまとまり、タクシーも幸いに列車出発5分前に到着した。緊迫していたパリの夜もようやく再度美しく見え始めた。

Paris, France

[旅の達人情報]

今回のエピソードで三つの教訓を得ることができた。

一、ヨーロッパの列車は目的地によって出発駅が違うため、旅行ルートを練るときに注意すること。

二、たいてい地図では近く見える距離が実は案外遠かったりするので、距離感覚に気を付けること。

三、タバコは世界どこでも歓迎される役立つ袖の下(?)になるという事実。本人が喫煙者でなくとも非常用に何箱か準備しておく価値ありだ。

取材・文/劉昊相(YOU HOSANG)

韓国出身。見知らぬ場所や文化を楽しむ、生まれついての旅行家。イギリス在住時に様々なプロジェクトを経験、Panasonicなど多国的企業での海外業務経験を持ち、英語、日本語、韓国語に通じる。旅行 コミュニティー「Club Terranova」を運営。