浅田真央の新シーズンが始まった。7月30日、自身が座長を務めるアイスショー「THE ICE」の大阪公演がスタート。この後、8月6日から8日までは名古屋公演(愛知県体育館)、8月10日から11日までは北九州公演(西日本総合展示場新館)が行なわれ、名古屋公演では新シーズンのショートプログラム(SP)をお披露目する予定だという。

 そしてこの3公演を終えれば、フィンランディア杯(10月6日〜10日、フィンランド・エスポー)に向け、本格的な練習に取り組むことになる。1年間の休養から復帰した昨季は、シーズンが進むにつれて失速してしまっただけに、今季はシーズンを通して戦い抜ける気持ちとコンディションを作っていきたいところだ。

 2007年に始まった「THE ICE」は今年で10周年を迎えた。日本からは全日本女王の宮原知子や次代のエース宇野昌磨、海外からは五輪や世界選手権のメダリストであるパトリック・チャン(カナダ)、カロリーナ・コストナー(イタリア)ら豪華メンバーが勢ぞろいした。特に今回のショーは、6年ぶりとなる浅田舞とのペアプログラムあり、ファン投票で選ばれた過去の人気演目の再現ありと、例年になく盛りだくさんの内容に。同時に、この10年で彼女がどれだけ成長を遂げてきたのかを感じさせるイベントとなった。

 このアイスショーで初めて披露された浅田の新しいエキシビションと、ジェフリー・バトルとのコラボにより2014年に滑ったナンバー『ボレロ』という2つのプログラムからは、今季、浅田が目指している演技がほのかに見えてきた。

 エキシビションナンバーである『チェロ・スイート』(無伴奏チェロ組曲)は、挑戦的かつ画期的なプログラム構成になっており、これまでのフィギュアスケートのプログラムで見たことがないほど濃密な内容だ。

 チェロの重厚な音が速いテンポでリズムを刻み、その音に合わせるように、細かくステップを踏みながら絶え間なく身体を回し続ける浅田の姿にくぎ付けになった。コンパルソリーの要素や、多彩なステップ要素が盛り込まれており、長年浅田のプログラムを振り付けてきたローリー・ニコル氏が、愛情たっぷりに作り上げた振り付けとなっている。このプログラムを完璧に滑り切れたあかつきには、浅田はさらに一段、レベルアップしたスケーターになっているに違いない。そう思わせるほど、バレエの動きも満載の素敵なプログラムだった。

「私自身、すごく気に入っている」と言うこのプログラムについて、浅田はこう語っている。

「今回の『チェロ・スイート』はフィギュアスケートのコンパルソリーだったり、基礎のステップだったり、いろいろなステップが本当にたくさん入っていて、"これが最初のフィギュアスケート!"という内容ですね。私はそこまで本格的には(コンパルソリーは)やっていないですけど、すごく勉強になりました。やっていて練習になるので、このプログラムを踏めれば(やりこなせれば)、試合のプログラムも楽に滑れるんだろうなと思います」

 また、今回のショーでは最後を飾る演目だった『ボレロ』では、凜として艶のある演技を見せた。2年前に見た『ボレロ』とは違う雰囲気を醸し出しており、ベテランスケーターとなった25歳の浅田の成長ぶりを大いに感じることができた。

 競技会で演技するSPとフリーのプログラムはまだお披露目されていないが、どちらも同じ曲『リチュアル・ダンス』を使う。新プログラムについて浅田は「2つで1つの作品で、滑ったことがない曲」と言う。チャレンジングで意欲的な内容になりそうだ。

 浅田の今季初戦は、初めて出場する国際B級大会のフィンランディア杯となる。昨季はシーズン中に失速したこともあり、今季は初戦から真剣勝負の試合に出場することになったようだ。

「出ることによってポイントがもらえるし、ショートとフリーの両方があるので、いいシミュレーションができるんじゃないかなと思います。

『THE ICE』が(私にとっての)シーズンのスタートということで、名古屋公演ではショートを滑らせていただきます。フリーのほうはまだ準備が整っていないので滑りませんが、まずはショートをお披露目できればいいなと思っています。そこでまた何かいろいろ課題が見つかれば、シーズンに向けてそこをクリアにして臨みたいなと思います。

 ショートとフリーは試合に向けて毎日(滑り込みを)やっているので、この『THE ICE』が終わったらすぐに滑れるようにしています。(プログラムの仕上り具合は)いつもと同じような感じには来ています」

 そう語る彼女は気力に満ちあふれているように見えた。平昌五輪を見据えた重要なシーズン、視界は良好だ。

辛仁夏●文 text by Synn Yinha