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相模原市の障害者施設で7月26日の未明に起きた殺人事件で、メディアには逮捕された植松聖容疑者(26)の人物像に迫る記事が多く配信されている。

そのソースのひとつになっているのが、植松容疑者のものとみられるSNSアカウントの投稿だ。ツイッターやフェイスブック投稿内容を詳細に報じ、顔写真を紹介するメディアもある。

SNSの投稿内容の引用や、顔写真の掲載をめぐってたびたび議論は起きているが、犯罪の容疑者のSNSの投稿についてはどう考えればいいのか。一般人とは異なるルールがあるのか。プライバシーの問題に詳しい佃克彦弁護士に聞いた。

●「報道のために必要な範囲であれば、法的に問題はない」

「私は個人的には、犯罪報道は被害者も容疑者も原則として匿名とすべきであるという意見です。この意見を前提とすると、SNSに掲載されている顔写真を報道に利用することは、匿名で報じるべきであるにもかかわらず人物を特定してしまうことになるため、問題だということになるでしょう」

佃弁護士はこのように述べる。判例や学説などでは、どう考えられているのか。

「現在の判例も通説的な見解も、実名で報じることそれ自体が問題であるという立場には立っていません。

簡単に言えば、『報道の目的で報道に必要な範囲で利用するのであれば法律上問題はないけれども、そうでない限り問題を生じる余地がある』ということです。

犯罪の容疑者であれば、その人物を特定するためにSNSの顔写真を利用することは、報道の目的で報道に必要な範囲で利用されたものとしてその利用は正当化されるでしょう。

他方、そのような事情がない人についてSNSの写真を勝手に利用することは、その利用を正当化できる理由がありませんから、肖像権侵害の問題を生じる可能性があります。

よって、SNSに掲載されている顔写真を報道に利用することは、報道の自由の保障の観点から、被写体の人の承諾を得ないで利用したとしても、原則として法的に問題はないといえます。

具体的には、事件の被害者や容疑者を特定するという目的で、その特定に必要な範囲で写真を利用している限り、たとえ被写体の人に無断で利用したものであったとしても、そのような写真の利用は違法ではないと思われます」

入手先がSNSであるという点は、どう考えればいいのか。

「入手元がSNSであるということは、こと報道に関する限り、特段法的に問題はありません。

もっとも、SNSの写真は入手が容易なので、利用が過多となり報道に本来必要な範囲を超えてしまう危険性があるということはいえるでしょう。そういった意味では、SNSの写真の利用が問題を含む可能性はあります。

なお、SNSに自分の写真をアップしている人は、その範囲を限定しているとしても、自らの意思で写真を公開しているものですので、およそ公開を欲しない写真を公開してしまったという場合とは事情がかなり異なります。

このため、仮に報道において人物の特定に必要な範囲を多少超えていたとしても、その利用行為が違法となる可能性は低いと思われます」

(弁護士ドットコムニュース)



【取材協力弁護士】
佃 克彦(つくだ・かつひこ)弁護士
1964年東京生まれ 早稲田大学法学部卒業。1993年弁護士登録(東京弁護士会)
著書に「名誉毀損の法律実務〔第2版〕」、「プライバシー権・肖像権の法律実務〔第2版〕」。日本弁護士連合会人権擁護委員会副委員長、東京弁護士会綱紀委員会委員長、最高裁判所司法研修所教官を歴任。
事務所名:恵古・佃法律事務所