『理想の旅は自分でつくる!――失敗しない個人旅行のつくり方』(酒井修一/ダイヤモンド社)

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 大学のゼミ旅行で行った長崎以来、海外はおろか国内旅行すらまともにしていない。が、旅行願望は人並みにある。お盆休みのような長期休暇でもあれば、自ずと旅に出たい欲求が湧き上がってくるもの。

 私事で恐縮だが、我が家の両親は、2〜3年に1度くらいのペースで海外旅行へ行く。母いわく「子どもが小さいうちは行きたくても行けなかった」とのことで、これまでのうっぷんを、子どもが成人した今になって発散しているらしい。目的はもっぱら世界の名所巡り。帰国後に半強制的に聞かされる思い出話の長さと、分厚く重たい数冊のアルバムを埋め尽くす写真の数々が、母の海外旅行への情熱を物語っている。

 本書『理想の旅は自分でつくる!――失敗しない個人旅行のつくり方』(酒井修一/ダイヤモンド社)では、読者一人ひとりに合う旅の探し方・つくり方について解説。書籍の後半では、旅行客の希望や目的に合わせた個人向けのオリジナルツアーを提案する、旅行会社・パーパスジャパンを利用し、各々の目的を達成した人々の実例(旅行体験記)を紹介している。著者は、同社の代表取締役社長。だからこそ、旅行会社側の事情に踏み込んだアドバイスも多く、興味深い。

 たとえば、良い旅行会社の見極めるひとつの目安。担当者に「旅先でおすすめのホテルは?」と尋ねたとき、即座に「どこどこのホテル」と返事が来る=それは旅行会社が売りたいホテルと考えてほぼ間違いないという。良い旅行会社(または担当者)なら、まず客の目的を聞く。おすすめのホテルを提示するのはそれからだ。

 こうした、一般人には知り得ないアドバイスは、現実的で非常にためになる。個人的に本書の中で興味深かったのは「終章 夢をかなえた旅人たちの旅行体験記」。この章では、パーパスジャパンを利用して個人旅行を計画・実行した人々の実体験が紹介されている。

 20年前から温めていた旅の計画を実行した初老の男性は、男2人でスペインのギター工房を巡る旅へ。連れ合いの男性はマドリッドのATMでお金が下ろせず、予約していたギターの購入を断念。そんな苦い経験も交えつつ、気の向くままに工房を巡る様子が綴られている。

 高齢のため海外旅行卒業を宣言した父――最後の旅行先として選んだのはクロアチア。美しい自然と世界遺産をゆっくりじっくり堪能した結果、一家の父は「やっぱり次も行く」と卒業宣言を撤回したという体験記は、実に微笑ましい。また、読んでいて少しうらやましくもあり、無性に海外旅行へ出かけたくなった……。

 そこで、私も夏の旅行を想定し、旅行のプランを立ててみたいと思う。が、私は暑さが苦手なので、行くなら涼しい場所がいい。涼しい国といえばロシアだ(大学時代、第2外国語はロシア語を履修していたので、ロシアにはちょっとした思い入れがある)。

 ではロシアのどこへ行こうか? 話は飛躍するが、私は『不思議の国のアリス』の作者として知られるルイス・キャロルの作品に一時期凝っていた。ルイス・キャロルが初めて出かけた外国はロシアだったそうで、そのときに書かれた日記も以前読んだ。その日記の旅を再現するのはどうだろう。ちょうど、ルイス・キャロルのこの旅は、7月から9月にかけて行なわれたことだし。

 午前中にサンクトペテルブルクのイサーク教会へ行き、午後はカザン寺院へ。それからネフスキー大通りを端から端まで歩く。19世紀の人なので、必ずしも目的地すべてが現存するとは限らないだろうが、その痕跡を辿るだけでもかなり楽しめそう!

 旅のプランニングをすると、海外旅行実現へ向けて一歩前進したような気がしてくる。残る課題は、ふたつだけ――お金と時間をどう工面するか。それをこれから考えないと……。

文=上原純(Office Ti+)