地域密着 愛されご当地パン たくあんとパンの甘〜い一体感! 滋賀県長浜市の「サラダパン」

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地元で愛されているパンを探して、全国各地をゆく「地域密着 愛されご当地パン」。今回はユニークな“中身”が話題の名物コッペパンを訪ねて、滋賀県長浜市の「つるやパン本店」にやってきました!

かつて北国街道の宿場町だった長浜市木之本町の景色に溶け込むように建っています。 かつて北国街道の宿場町だった長浜市木之本町の景色に溶け込むように建っています。

入り口から見た店内。手前にはパンや飲み物、奥にはおかしがずらり! 入り口から見た店内。手前にはパンや飲み物、奥にはおかしがずらり!

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湖北地域と呼ばれる琵琶湖の北方、長浜市木之本町で1951年に創業したつるやパンは街一番の老舗パン屋。創業時から学校給食用のパンを手がけ、人気商品は県内の一部のスーパーなどでも販売しています。

そんなつるやパンで、半世紀以上愛されている名物が「サラダパン」。長年、湖北地域でひっそりと売られていたところ口コミがじわじわと広がり、ここ数年は数多くのメディアに取り上げられて評判になっています。それでは早速、ご当地パンを拝見!

「サラダパン」。地元の高校の購買でも販売しているそうです。 「サラダパン」。地元の高校の購買でも販売しているそうです。

黄と緑が基調の鮮やかなパッケージは、発売当時から変わっていないそう。サラダパンという文字がレトロでかわいらしいですね! 一方で、パッケージ越しに見えるのは至って普通のコッペパン。しかし、サラダパンの最大の特徴は“中身”にあるのです。パンを開いてみると……

この中身は一体!? この中身は一体!?

中に挟まれていたのは、なんとマヨネーズで和えたたくあんの千切り! 意外な組み合わせに驚かされますが、一口食べてパンとの相性の良さにもう一度びっくり! 甘めのたくあんとオイリーなマヨネーズが口の中で溶け合い、パンと抜群のハーモニーを奏でます。その味の秘密を、創業者の孫にあたる専務の西村豊弘さんに聞いてみました。

西村さん「使っているマヨネーズが、一般的なものとは違います。サラダパン誕生当時の味に合わせて、できるだけ酸味を抑えたマイルドなものを使用しているんです。たまに自宅で作っても同じ味にならないとお客さんに言われますが、市販のマヨネーズは酸味が強めなので違ったテイストになってしまうんですね」

そんな中身が、パンの端までぎっしり詰まって満足感も高し! 機械では端まで行き渡らせるのが難しいそうで、工場のスタッフがひとつひとつ手作業でパンに塗っています。

流れるようにパレットナイフをふるうのは20年以上勤めるベテラン主婦。 流れるようにパレットナイフをふるうのは20年以上勤めるベテラン主婦。

中身のインパクトに気を取られがちですが、主役のパンもこだわりの一品。甘く優しげな味わいに仕上げられ、沈み込むようなふわふわの食感です!

西村さん「オーソドックスな中種製法で、ふんわりもちもちに焼き上げています。都会ではハード系のパンが流行していますが、こちらは田舎なので子どもからお年寄りまで食べやすくて、ホッとするようなパンに仕上げています。そんなパンを買ってくれるお客さんがいるので、50年以上作り続けることができています」

工場の窯で焼き上げたコッペパンは、つやつや光るきつね色! 工場の窯で焼き上げたコッペパンは、つやつや光るきつね色!

たくあんとパンという不思議な組み合わせ。でも、しっかりとおいしいサラダパン。ずっと売れ続けている理由が、わかった気がします!

■次なるサラダパンへ!

西村さん「サラダパンには、最初はたくあんではなくキャベツが入っていました。今から56年ほど前に、雑誌でマヨネーズのレシピを見て気に入った祖母が、マヨネーズとキャベツと和えてコッペパンに挟んだのがサラダパンの始まりです。当時販売されていた胃薬の『キャベジン』の原料がキャベツらしいと聞いて、油やお酢など胃に負担がかかりそうな材料でできたマヨネーズと合わせることで、中和できると考えたそうなんです」

サラダパンの誕生について、ユニークなエピソードを語ってくれた西村さん。実は、サラダパンのパッケージの緑色はキャベツがモチーフ。黄色はたくあんかと思いきや、マヨネーズの色なんだそうです。

売り場に並ぶととても目立つサラダパンのビビットなカラー。 売り場に並ぶととても目立つサラダパンのビビットなカラー。

では、なぜキャベツがたくあんに変わったのでしょう?

西村さん「近所の商店に卸し始めたころから、翌日になるとキャベツの水分でパンがふやけてしまうことが問題になったんです。一度は販売をやめたのですが、パッケージが大量に余ってしまいました。そこで祖母は日持ちして食感が良い食材ということで、キャベツの代わりに家にあったたくあんを和えたそうです。それが今のサラダパンというわけです」

意外な組み合わせがロングセラーとなったつるやパン。他にも数々の人気商品を販売し、地元のくらしのなかにすっかり溶け込んでいます。そんなつるやパンが今年4月、ひとつの転機を迎えました。JR長浜駅からほど近い長浜市の中心部に、2号店の「まるい食パン専門店」をオープンしたのです。

「まるい食パン専門店」。看板が“まるい食パン”の形に。 「まるい食パン専門店」。看板が“まるい食パン”の形に。

洗練された印象の店内。白い板の壁は西村さんのDIYだとか! 洗練された印象の店内。白い板の壁は西村さんのDIYだとか!

主力商品は角食でも山食でもない、“まるい食パン”を使ったサンド。開店時間の朝7時からは、フレンチトーストやハムチーズなど焼きたての「朝ベイク」を販売。“まるい食パン”が焼き上がる午前11時以降は、自家製バタークリームやソース焼そばなどの具材を注文に応じてその場で挟む「昼サンド」をふるまっています。でもなぜ、初の支店を本店とはまったく違うスタイルにしたのでしょう?

西村さん「学校や小売店へのパンの卸しをメインにやっていると、お客さんの顔が見えないのが不安になるんです。かつて本店は地元の中学生や高校生が集まるような店でしたが、今は随分と減ってしまいました。今度の2号店の周りは木之本町より人口も多いし、学校もたくさんある。もともとつるやパンがやってきた、学生さんが集まってわいわいしながらパンを食べる場所が作れるんじゃないかと思ったんです」

昼サンドの看板「焼サバ」。長浜名物のさばとしょうが、青しそ、タルタルソースが調和する絶品! 昼サンドの看板「焼サバ」。長浜名物のさばとしょうが、青しそ、タルタルソースが調和する絶品!

西村さん「そして作り手として、食べた感想やどんなパンを食べたいかも聞きたいです。昼サンドはトッピングを選べるので、“ジャムサバ”とか“ピーナッツサバ”だって作れるかもしれません(笑)。学生さんは“そういうの”も好きそうですしね。たくあんとマヨネーズだって、普通ならパンには合わないと感じそうなものです。学生さんのやわらかい頭で自由に発想してもらって、サラダパンに続く商品ができたらいいなと思っています!」

専務の西村豊弘さん(左)とまるい食パン専門店の店長・西村洋平さん(右)。 専務の西村豊弘さん(左)とまるい食パン専門店の店長・西村洋平さん(右)。

創業から65年越しに新たな一歩を踏み出したつるやパン。2号店にもうわさを聞きつけた地元客が、パンを買い求めに続々とやってくるそうです。第二のサラダパンだって、いつか本当に生まれるかもしれませんね!

店舗情報
● つるやパン本店
住所:滋賀県長浜市木之本町木之本1105
電話:0749-82-3162
営業時間:月〜土8:00〜19:00、日・祝9:00〜17:00(無休)
http://www.tsuruyapan.jp/
● まるい食パン専門店
住所:滋賀県長浜市朝日町15-31
電話:0749-62-5926
営業時間:7:00〜17:00(水曜休)

※記事中の情報・価格は取材当時のものです。