これまでに、京都の神社仏閣などの名所500ヶ所以上を見てきたという英学(はなぶさ がく)さん。そんな英さんが「一番感動した」という「桂離宮」の魅力を、ご自身の無料メルマガ『おもしろい京都案内』で紹介しています。世界的建築家ブルーノ・タウトをして「日本建築の世界的奇跡」とまで言わしめた究極の離宮、「訪れないわけにはいかない」という気にさせてくれます。

「涙が出るほど美しい」桂離宮の魅力

今回は参観して間もない桂離宮の魅力を余すところなくご紹介します!

桂離宮は宮家の別荘として江戸時代初期に建てられたもので、造営が始まってから400年以上の間、一度も火災に遭っていません。ところどころ修繕を行っているももの、ほぼ創建当時のままの姿を残しています。敷地には池を中心に古書院、中書院、新御殿を主な建物として、いくつかの茶亭を配して造営されています。

離宮建築最高の技法であり、美しい日本庭園の集大成とも言われています。

元々は八条宮家初代の智仁(としひと)親王の別荘として豊臣秀吉の援助を得て創建されました。智仁親王は後陽成天皇の弟で秀吉の養子となりましたが、秀吉に実子の鶴松が生まれたことで皇族に復籍して八条宮家を創設しました。

桂離宮は1930年代に来日したドイツ人建築家ブルーノ・タウトが「日本建築の世界的奇跡」と絶賛し世界中で一躍有名になりました。彼の「涙が出るほど美しい」という言葉はその後桂離宮を表現する代名詞ともなりました。

参観するためには宮内庁に参観の事前申込みが必要ですがそれほど美しい桂離宮を是非一度訪れてみて下さい。30人ぐらいのグループを宮内庁職員が丁寧に1時間かけて苑内を説明してくれます。私は7月20日に訪れたばかりですが、今まで京都の寺社仏閣や名所を500ヶ所以上見た中で一番感動しました。苑内を数歩歩くたびに景色がどんどん変化するぐらいものすごく沢山の工夫がされています。写真のみならず、ずっと動画を回していたいぐらい常に素晴らしい眺めでした。

それではガイドに導かれた順番に苑内をご紹介しましょう!

苑内に入りすぐ目の前の池を見ようとするものの、正面には綺麗に剪定された松が邪魔して見えないような配慮がなされています。「目隠しの松」です。松はわざと池や庭園全体を隠していて、その後に展開する景色への期待を高める効果があります。

職員の案内に従って少し進むと、外腰掛(そとこしかけ)が見えてきます。これは茶室・松琴亭(しょうきんてい)への待合所で茶会に招かれた客はここに座って待機するものです。外腰掛の目の前には薩摩藩の島津家から寄贈されたソテツが植わっています。ソテツを植えたりするのは江戸時代初期の流行だったそうです。庭の一箇所に異国風のものを取り入れアクセントをつけています。

外腰掛から茶室に向かって歩くと池には石橋が渡されていて天橋立を見立てた光景が目に飛び込んできます。手前には沢山の形の同じ丸みを帯びた黒い石が池の岸に敷き詰められていて州浜が広がります。この州浜は明石の海に見立てている光景です。

見どころ1 松琴亭(しょうきんてい)

桂離宮には4つの茶室がありそれぞれ春夏秋冬の性格を持っています。最初に見えてくるのが冬の茶室・松琴亭で桂離宮の中では一番格式の高い茶室です。内部は当時としてはとても珍しい青と白の市松模様の襖がはめ込まれていている。松琴亭を出て飛び石を歩くとわざと歩きにくいように作ってある箇所があります。歩きにくくしているのは「おもてなし」の演出です。歩きにくいところでは下を向いて歩いて歩かざるを得ませんね。そして歩きやすくなったところで顔を上げると目の前には絶景が現れるという工夫がされているのです。この辺りは「さすが桂離宮」といったとことです。

見どころ2 賞花亭(しょうかてい)

松琴亭から土橋を渡り、織部(キリシタン)灯籠を背にすると賞花亭があります。苑内で最も高い場所にあり峠の茶屋といった趣です。ここに立つと正面にメインの古書院、中書院などが見えます。竹の連子窓から見る景観は山奥にいるかのような風情を感じる造りになっています。

書院は増築を繰り返して今の姿になっているものの、建物は全て斜め向きに増築されています。どの部屋から見ても景色が見やすいようにする配慮がなされています。上から見ると雁が並んで飛んでいるように見えるため雁行型と言われ、二条城二の丸御殿などもこの様式を用いています。

見どころ3 園林堂(おんりんどう)

後水尾上皇の宸筆扁額(手書きの額)が正面に掛けてあります。園林堂は智仁親王の尊像や細川幽斉の画が祀られていた場所で代々の宮家の位牌なども安置されていた持仏堂です。堂前から手水鉢をつなぐ飛石が45度に回転して並んでいて観る者を惹きつけます。

見どころ4 月波楼(げっぱろう)

月波楼は古書院の並びにあり観月のための茶亭です。「歌月」の額は霊元上皇の宸筆(しんぴつ)と伝わります。小高い場所に建てられているので、正面の池に映る月の影を楽しむ為に作られたと伝わります。北側の窓からは紅葉を楽しむことが出来、葉が落ちるとソテツが見えるように植栽の配置にもこだわっています。まさに秋から冬へと移り変わる景色を楽しむことが出来るおもてなしを考えた造園の技が光ります。

見どころ5 キリシタン灯籠

八条宮智仁親王の妃である常照院は、キリシタン大名宮津藩主京極高知でした。そのため、桂離宮にはキリシタン灯籠(織部灯籠)が7つあります。キリシタン灯籠にはマリア像のモチーフがあるのが特徴です。全てを確認することは出来ませんでしたが、形の違う灯籠を一つ一つ観察しながら苑路を周れたのも楽しいものでした。

桂離宮は、八条宮家智仁(夫人は、キリシタン大名の娘)、智忠(としただ)親王父子によって創建されたものです。智仁親王は、後陽成天皇の弟で兄から皇位を譲られるところだったが、豊臣秀吉に子がなかったので一時秀吉の養子になっていました。そのため江戸時代、天皇に推薦された時は徳川幕府に取り消され、権力の座から遠ざけられたと伝えられています。智仁親王が兄の後陽成天皇に宣教師を紹介したことがきっかけで、桂離宮には多くの西欧手法が用いられるようになりました。このような手法が積極的に取り入れられていることを考えると当時の作庭家小堀遠州が関わった可能性が高いといわれています。

先細りの空間を造り遠近感を強調するパースペクティブの技法などは小堀遠州の得意とする手法です。極端に細長い空間を造り遠近感を強調するヴィスタの技法なども西洋から取り入れた空間技法で遠州の名刺替わりといった感じです。この他にも人間にとって最も美しいと感じる黄金比率なども取り入れられています。

ソテツの植栽、青白チェック模様の襖、ビロードの腰張り、7本のキリシタン灯籠、十字型の手水鉢なども特徴的です。これら西欧文化の影響が随所に見られるのも大きな魅力です。それでいて延段(のべだん)の敷石の模様などは書道や華道、茶道などに通じる「真」「草」「行」の美意識を取り入れています(真・草・行の三体は、「真」は正格、「草」はくずした風雅の体、「行」はその中間)。

桂離宮の庭園や建築物を観賞するとおびただしい数の技法や工夫がされているのが分かります。それらは実用性などとは程遠いものが多く、人を喜ばせる「おもてなし」の気遣いが感じられるものばかりです。人の心を想うことがいかに大切にされていたかということが過去の遺産から感じ取ることが出来ました。今必要なこと、将来必要とされることのヒントは過去を知ることでしか探ることは出来ません。皆さんも是非、いつか桂離宮をそして京都を訪れてそのようなものを探してみて下さい。

image by: Shutterstock

 

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出典元:まぐまぐニュース!