次世代をになうトップジュニア選手たちによる合宿「全日本フィギュアジュニア強化合宿」(7月27〜30日、中京大アイスアリーナ)が行なわれた。現在、世界のジュニアはロシアと日本の2強が席巻する時代が続いており、この全日本ジュニアのトップグループが、そのまま世界のジュニアのトップを競うことになる。気迫も技術も世界レベルのジュニアたちが、刺激しあう合宿となった。

■14歳のトリプルアクセル少女あらわる

 メディア公開となる30日、ひと際目をひいたのは、7月に14歳になったばかりの天才少女、紀平梨花(きひら りか)。まだ148僂両柄な身体からは想像できないほどスピード感のある滑りでジャンプコースに入ると、飛距離のあるパワフルなトリプルアクセルを決めた。コーチや選手から大きな歓声が上がる。すると紀平は、迷うことなく続けて3回転トーループを跳んだ。まだ世界女子が公式戦で成功させたことのない「トリプルアクセル+3回転トーループ」の連続ジャンプだ。歓声はさらに大きくなる。練習だというのに、歴史的瞬間を目撃したような興奮でリンクは包まれた。

「トリプルアクセルは得意なので、高さも流れもあるので、クリーンに降りた時は3回転トーループも付けるようにしています。いまは練習では5本に3本くらい降りているかな」

 そんなことを、さらっと言ってのける。女子未踏の領域へ突き進んでいるという気負いは一切ない。

 2002年7月、兵庫県で生まれた。5歳でスケートを始め、2年前に濱田美栄コーチのもとに移ると、宮原知子、本田真凜、白岩優奈らのトップ選手がひしめく環境で、切磋琢磨する日々。昨年春からトリプルアクセルの練習を始めると、早くも昨秋、試合の6分間練習の場でクリーンに着氷した。

「あのときはビックリしすぎて、他のジャンプが不安になっちゃうくらいでした。そのまま試合でもトリプルアクセルは(転倒したけれど)クリーンに回転しきったと認定してもらったので、本当に嬉しかったです」

 昨季の全日本ノービスは、2位に大差をつけて優勝。今季はジュニア参戦を決めたうえに、将来有望だとしてシニアの強化合宿(7月23〜26日、軽井沢)にも参加した。そこでは、トリプルアクセルを武器にする憧れの先輩、浅田真央とも1日だけ顔を合わせることができた。

「シニアの合宿では、真央さんの滑りを見て、すごいエッジワークでやっぱり上手いなと思いました。やっぱり真央さんは日本人で女子なので、ジャンプの跳び方は、インターネットで見て参考にしています」

 しかし、さらに紀平がトリプルアクセルの感覚を学んだのは男子からだった。宇野昌磨、無良崇人といったダイナミックなジャンプを持つ選手と練習し、刺激を受けたという。

「無良選手、宇野選手のジャンプをたくさん見ました。2人のジャンプを見ててわかったのは、跳ぶ前の構えの姿勢がいつも一定で、ブレたり揺れたりしないこと。まだ、自分はちょっと揺れるような時があって、それが成功率の差だなと思いました。なのでシニア合宿に出てからは、(左足に乗って)構える姿勢を安定させることを意識するようにしています」

 その練習の成果か、シニア合宿終了からわずか3日後に行なわれたジュニア合宿の報道公開日では、プログラム曲をかけての練習で、「トリプルアクセル+3回転トーループ」を成功させた。驚くべき身体能力の持ち主だが、その秘訣は幼稚園のころの運動にもあるという。

「私が通っていた幼稚園は運動をたくさんさせてくれる所で、逆立ち歩きとか、跳び箱8段とかを練習していたんです。今でも逆立ち歩きが得意で、疲れるまでいつまででも歩けます。駆け足も50mが7秒8なので、速い方なのかな? 運動が得意なのは、幼稚園のときにたくさん運動したおかげかなって思っています」

 逆立ち歩きには体幹の筋力もバランス感覚も必要で、そのままスケートのジャンプのときに、空中で身体コントロールをする能力に繋がっているようだ。

 トリプルアクセルの成功率も高まり、ジュニアの国際大会デビューに向けて、気持ちは高まる。初戦は、ジュニアGPチェコ大会(8月31日〜9月3日)、2戦目はジュニアGPスロベニア大会(9月21〜24日)への出場が決定している。

「やっぱり今年の目標はトリプルアクセルを降りること。でもトリプルアクセル以外のジャンプも降りないと、トリプルアクセルをせっかく入れる意味がないので、全部の技を丁寧にこなしたいです」

 大技のトリプルアクセルに注目が集まるが、「3回転ルッツ+3回転トーループ」の連続ジャンプもプログラムに入れており、実際にはこれを成功させるだけでも世界のジュニア女子の表彰台に十分届く。公開練習では「3回転サルコウ+3回転ループ」も成功させるなど、伸びしろは計り知れない。

「今年は世界ジュニアに出ることが目標なので、出場できるようジュニアのグランプリや、西日本ジュニア、全日本ジュニアと続く全部の大会で、トップ選手たちに食らいつく気持ちで向かっていきたいです」

 恐るべき14歳が、今年のジュニア女子界を席巻しそうだ。

■ジュニア女王、本田真凜の新たな魅力

 昨季の世界ジュニア女王、本田真凜も新たな成長を見せている。世界ジュニアでは「3回転+3回転」をクリーンに降り、技術面では自信がついた。そんなジュニア女王にとって、今季のテーマは表現力だ。今季は思い切って、プログラムを2曲とも変更。ショートは『スマイル』、フリーは『ロミオとジュリエット』を選んだ。

「ロミオとジュリエットは、ずっと前から滑りたかった曲。やっぱりソチ五輪の羽生結弦の演技は何度見ても感動します。それを超せるわけはないので、少しでも印象に残る演技をしたいです。自分の世界観を伝えられるようになればいいです」

 本田はジュニアGP横浜大会(9月9日〜11日、新横浜スケートセンター)へのエントリーが決まっており、日本のファンの前で今季の本格的なスタートを切る。

「子どもの頃から、大きな大会に出たいとずっと思っていました。ノービスの頃は全日本ジュニアに、ジュニアになってからは全日本ジュニアに出たい、というように。今はそれが、世界選手権や平昌五輪とか大きな大会になってきています。来年にシニアに上がるためにも、今年は初戦からしっかりよい結果を残していきたいです」

 合宿には、この他にも白岩優奈、青木祐奈、坂本花織らも参加。ジュニアGP開幕を控え、最後の追い込みを見せていた。また男子も、ジュニアGP横浜大会への出場が決まっている友野一希、木科雄登、三宅星奈をはじめとする有望選手が集まり、それぞれが実りある合宿生活を送っていた。

野口美恵●文 text by Noguchi Yoshie