多機能ヘッドホン Parrot Zik 3レビュー。リスニングも充電もすべてワイヤレス、ノイズキャンセルも秀逸

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Parrot のアクティブノイズキャンセリング機能付きBluetoothヘッドホン『Zik 3』をお借りしたので、その使用感などをお届けします。

Parrotは創業1994年のテクノロジー企業で、Bebop DroneやMini Droneなどのドローン製品で日本でも知られたメーカーです。センサーやDSP、音声認識技術などを得意分野としていて、たとえば植木鉢や畑に挿しておくだけで、植物の世話に必要な情報をスマートフォンに通知する「Flower Power」といった独創的かつ実用的なIoT製品も販売しています。ヘッドホンのZikシリーズも、一般的なオーディオ製品というよりは、Parrotが得意とするDSPを活かした高機能かつデザイン性も高い製品に仕上がっています。初代Zikは、スマートフォンアプリからDSPやアクティブノイズキャンセル機能の詳細な設定が可能。かつ、当時はまだ少なかったハウジングのタッチセンサーによる操作も大きな特長でした。2代目モデルのZik 2.0では、レザー調の生地を採用するなどデザイン面で著しい進歩を遂げ、機能面でもアクティブノイズキャンセル機能に周囲の音も聞こえる「ストリートモード」を追加。小型高性能化したバッテリーで、連続使用時間は最大18時間にまで延びました。

3代目モデル「Zik 3」は、Zik 2から基本構造を引き継ぎながらも、ハウジング部およびヘッドバンド部にクロコダイル柄やステッチ柄のデザインを採用。もはやオーディオ・家電販売店だけでなくファッション系のショップでも取り扱われるまでになっています。

仕様と装着感


仕様面では、40mm径ネオジウムドライバーを採用しており、Bluetooth 3.0に対応。コーデックにはSBCのほかAACを採用してMFi 認証を取得しています。オーディオソースとの接続は、Bluetoothのほかアナログの有線接続、USB接続の計3種類を使えます。そのほか、基本的な機能は初代および2代目から引き継ぎつつも、内蔵DSPによるイコライザー機能の充実や、USBによるデジタル接続再生、Qi規格準拠のワイヤレス充電機能などを追加しています。

 

 

今回お借りしたZik 3は、クロコダイル柄に新色のグリーンをまとったモデルです。箱から出して最初に感じたのは、とにかく安っぽさのないヘッドホンだということ。派手めのグリーンはクロコダイル柄との相性も良く、Zikシリーズが持つ高級感をさらに引き立たせるようです。

一方で気になるのは、おそらくこの外装素材からくるにおい。新品ゆえにビニールのような化学系の独特の香りが強く、その手のにおいが苦手な人には最初はキツいかもしれません。しかし幸いにもこのにおいは2〜3日でかなり薄れ、1週間もすればもうわからないレベルにまで低下します。においに敏感な人は購入後すぐに箱から出して置いておくと良いかもしれません。

高級なものは丁寧に扱わなければならないという、貧乏人独特の先入観をもってZik 3を手に取ると、実はかなりしっかり作られていることに驚かされます。装着してみても、可動部がギシギシと軋むこともなければ、首の動きでイヤーパッドがずれてしまうようなこともありません。ヘッドバンドはかなり強引に曲げても問題がない柔軟性を備えており、左右ユニットもかなり自由に動きます。

イヤークッションのフィット感は良好です。外観からは分厚く見えるものの、厚みの半分ぐらいまでがソフトな素材で、残りの半分は硬くなっています。「側圧が高め」などと知ったふうなことを言いそうになるものの、長時間着用しても耳やこめかみが痛くなるようなことはありません。むしろ屋外で使用するときはこれぐらいの圧があったほうがずれたりしないため、独特のデザインを周囲に見せつけつつドヤ顔で街を闊歩できそうです。

使ってみる


 

最近のBluetoothヘッドホンは、バッテリー交換ができないものが多くなりました。一方のZikシリーズは代々、着脱式バッテリーを採用し続けています。よって最初に使うときにはまずバッテリーを装着しなければなりません。左ハウジングの蓋を開け、ソケットにZik 2.0 と共通の830mAhバッテリーを装着します。蓋をして、右ハウジングの後ろ部分にある電源ボタンを押せばZik 3の電源が入ります。

電源が入ったら、とりあえず手持ちのiPhone 6とペアリングしてみます。すると、すぐに専用アプリ「Parrot Zik」のインストールを勧められました。このアプリはZikシリーズが備えるアクティブノイズキャンセルやDSPの設定用です。ファームウェアのアップデートにも使うので、迷わずインストールしておきましょう。

 

 

アプリを起動してまず現れるのが、Zik 3のバッテリー残量表示の画面。この画面では下に「ノイズコントロール」「イコライザー」「コンサートホール」のアイコンが表示されており、それぞれの機能のオン/オフを設定できます。

起動直後は「ノイズコントロール」と「コンサートホール」がオンになっていたので、両方ともオフにしてヘッドホン本来の音が聴けるようにしました。すると、突然「ゴーーーーー」という音が耳に。何事かと思ったものの、どうやらこれは部屋にあるPCサーバーの音のようです。もう一度「ノイズコントロール」をオンにしてみます。すると耳障りな音はピタリととまり、ほぼ静寂と言っても良い状態になりました。Zik 3は「最大30dBのノイズ低減」とのタタキ文句でノイズキャンセリング機能をアピールしていますが、看板に偽りなしと言って良さそうです。

なお、アプリの画面を右フリックすると「ノイズコントロール」「イコライザー」「コンサートホール」 「推奨プリセット」の順に詳細な設定画面が現れます。特に「ノイズコントロール」画面では、通常のノイズキャンセル機能に加えて周囲の話し声などを聞き取れるように設定したストリートモードを選択可能です。この機能は音楽を聞くためにノイズを低減しつつ、駅構内や電車、バス内のアナウンス、自動車の走行音などを聞き取れるように設定したモードで、特に通勤通学時に有効です。なお「Parrot Zik」アプリはApple WatchおよびAndroid Wearにも対応しており、上と同様の設定操作が可能です。

またZik 3のアクティブノイズキャンセル機能にはストリートモードなるものがあり、騒音を低減しつつ、人の話し声はよく聴こえるよう設定できます。通常のノイズキャンセルでは人の話し声もほぼ聞こえなくなるため音楽に集中することはできるものの、屋外では安全のためにもストリートモードを使用するのが良いでしょう。

音楽を聴いてみる


さて、それでは実際に音楽を聴いてみます。BluetoothでiPhoneと接続し、アプリの使い方もひととおり理解したところで、実際に音楽を聴いてみます。以後基本的にノイズキャンセルはオン、イコライザーやエフェクト類はすべてオフとします。

手持ちのCDライブラリーからExtremeの「III Sides To Every Story」を通しで再生。導入部のSEからもはやBluetooth経由で聴いていることを忘れてしまうほど自然で誇張のない音。解像感があり高音域もよく出ているものの、耳に刺さるわけではありません。低音域はやや控えめながらも物足りなく感じる手前でしっかりとボリューム感を演出しています。全体に素直に音が聞こえてくるため、「Cupid's Dead」の後半、延々と続くギターとベースのユニゾンパートも持て余すことなく楽しめます。中音域もしっかりと中身の詰まった音でExtremeの隠れた得意技、3声ハーモニーも声質の違いまでガッツリと堪能できました。

続いてApple Musicから柴田淳の初期のアルバム「オールトの雲」を聴いてみます。「日本一歌詞が暗い」とも言われる柴田淳ですが、心地よい声質に豊かなメロディ、アコースティックなサウンドは目を閉じて聴いているとじんわりと体内に染み入ってくるかのような感覚を生み出します。Zik 3ではサウンドとともにヴォーカルの輪郭が非常にくっきりとして、本人がすぐ目の前で歌っているようにも感じられます。ノイズキャンセル設定をストリートモードにして、通勤などのときに聴く場合はこれぐらいはっきり聴こえるほうがちょうど良いかもしれません。

最後に聴いたThe Duの「Crazy Noisy Bizarre Town (EDM arrange Ver.)」は、70〜80年代ディスコ風の原曲をEDMにアレンジしたバージョン。EDMはどちらかというとヘッドホンで聴く音楽とは違うかもしれないものの、聴いてみれば意外とイケるものです。上から下までぎっしりと詰まった電子音のひとつひとつを隅々まで分けて聴いてみるといった、自分でも考えなかった楽しみ方もできてZik 3の再現性の高さを堪能できました。

 

USB接続で聴いてみる


Zik 3の新機能のひとつUSB接続によるデジタル再生も試してみます。まず付属のUSBケーブルを使ってPCへと接続します。特にドライバーのインストールなどは必要なく、PCの再生デバイスをParrot Zik 3 USB Audio 5.1に選択しなおすだけで、USB接続での再生が可能となりました。

USB再生での音質はBluetoothに比べるとさらに音のレンジが増したような印象。「USB接続だから」という思い込みもあるかもしれないものの、ヴォーカルの息遣いやほんのわずかな細かいニュアンス的部分の情報量の多さが、瑞々しさとなって現れているような印象です。なおUSB接続では5.1ch音声の再生にも対応します。

ひとつ注意しなければならないのは、Zik 3のUSB接続は48kHz/16bitでの再生となるところ。Zik 3 の発表当初はParrotからの詳しい説明がなかったため、PCM 192kHz/24bitの再生に対応と殆どのメディアが紹介していました。ところが、実際にはDSPの内部処理が192kHz/24bitというだけで、PCに接続したUSB-Audioデバイスとしては48kHz/16bitでしか認識されません。ヘッドホンとしての再生周波数帯域も20Hz〜22kHzであり、定義上はZik 3はハイレゾ対応機器ではありません。

と、偉そうに言っては見たもののハイレゾ対応だろうとなかろうと、自分の耳で聴いてみて良いと感じるならそれが良いヘッドホンであることに違いはありません。その意味ではZik 3は十分にメインで使用するヘッドホンの役割を果たせる実力を備えていると思えます。またDSPで加工した音が嫌いでなければ、イコライザーをいじったりアーティストやユーザーが作ったプリセットをいろいろと試してみて、自分好みのヘッドホンへと育てていくこともできるでしょう。

 

 

あと、若干気になったところは、イヤーパッドの接合部が縫合ではなく熱圧着のような方法でとじられていること。この製品にかぎらず最近よく見かけるこの手法ですが、なかには使用開始から数か月もしないうちに接合部が剥がれ、クッション材が露出してしまうものもあるようです。オプションのQi充電器を使った充電は、イヤークッションを充電器に乗せるように置いて使いますが、このときかなりの温度になるため、熱で接合部が劣化しないか少し心配になりました。

Parrot Zik 3 の販売価格はだいたい5万円前後。そこそこ高めの価格設定ではあるものの、リスニングも充電もワイヤレスででき、強力なノイズキャンセリングを備え、さらにUSB接続や有線接続でじっくりと音楽を聴きこむといった使い分けが可能で、毎日使い続けても飽きのこないヘッドホンであることは間違いありません。