『旅の報酬 旅が人生の質を高める33の確かな理由』(成瀬勇輝/いろは出版)

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 キュレーションメディアからスタートし、現在は旅を中心としたカルチャーメディアへと進化を遂げている「TABILABO」。そんなWEBメディア「TABILABO」の創業者による一人旅推奨本が、本書『旅の報酬 旅が人生の質を高める33の確かな理由』(成瀬勇輝/いろは出版)だ。

 旅には娯楽や癒しを求めるものと、きっかけを求め人生を変えてしまうようなものがあると思う。後者に重きを置いた本書では、Appleの創立者スティーブ・ジョブズも晩年、「もっとも影響を受けたのはインドへの一人旅だ」と語っていたと記している。FacebookのCEOマーク・ザッカーバーグも、ジョブズのアドバイスを受けインドを旅したことで、悪戦苦闘していたビジネスを迷いなく展開できたのだそうだ。

「こころの動きが伴う旅をすることで、僕たちは人生を劇的に変化させることができる」

「旅には、人を変える力、成功に導く力がある」

 その仮説を後押しする例としてまず著者は、スティーブ・ジョブズのほか、物理学者のアインシュタイン、日本初のアメリカ留学者であるジョン万次郎、キューバの革命家チェ・ゲバラ、岩倉使節団などを挙げ、旅が人に与える影響の大きさを語る。

 旅とは人生そのものだ、という言葉があるが、本書には旅を通じて得られる、人生をよりよくするきっかけとなるようなエッセンスが、33個も挙げられている。

 著者は言う。若い時は「お金がないから」、働いてからは「時間がないから」、年をとって「気力がないから」など、いつでも「旅に出られない」理由はたくさんある。しかし、「無理にでも旅に出て、外の風を頻繁にいれるべきだ」と。

 外(アウトサイド)に触れ、様々な価値観のブレを経験する。外に出る前後で自分の心が大きく移動していることに気が付く、インサイドジャーニー(内面の変化、内面旅行)こそ価値がある。実際にインサイドジャーニーにはどのようなものがあるのか? その変化を著者自身の体験のほか、旅好きな経営者やビジネスマンとの対話をもとに具体例を挙げて説明する。

 著者は10日間休みをとり、一人旅をすることを提案している。これは目から鱗だ。長期間の旅を思いきってするよりも、短いながらも頻繁に旅をすることを薦める理由は、日常の中に旅を取り入れることこそが大切だからだ。

 無理のない10日間ほどの旅で心をリセットし、新しい価値観に出会い、知らなかった自分に気が付くことが必要だというのだ。加えて、旅するために10日間ほどの休みが取れない、そのような働き方をしているとするならば少し働き方を見直してみる必要があるかもしれないとも語る。

 本書は、安いルートやグルメ、絶景スポットを紹介する、いわゆるガイド本とはまるで違う。旅から学べることとは? 日常に学びをどう活かすか? 旅経験豊富な著者の言葉は人生を迷い、きっかけを求める人によい刺激を与えてくれるだろう。

文=トトノ うさき