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PTCジャパン(PTC)は7月29日、「IoT時代におけるサービスの変革 ~顧客満足度の向上と収益の拡大に向けて~」と題した製造業向けセミナーを開催した。本稿では、IoTを活用したサービス変革の成功事例として登壇した米McKinley ElevatorのCFOであるケビン・ルシン氏の講演内容を紹介する。

○エレベーターをIoT化することでサービス品質を向上

McKinley Elevator(McKinley)は、米国カルフォリニア州アーバインに本社を置き、一般家庭向けエレベーターや車用ターンテーブル、車イス用リフトの販売・設置を手がけている。1948年創業と歴史はあるものの、従業員数は約60名と少なく、カルフォルニア州以外では、ネバダ州、アリゾナ州において事業を展開する地域密着型の企業だ。

決して大企業とはいえないMcKinleyはサービス品質を高めることで厳しい競争を生き抜いてきた。サービス品質にこだわる同社はこれまでもフィールドサービス業務支援クラウドサービス「ServiceMax」を導入し、製品に関連するさまざまな情報を活用することでいくつかのKPIにおいて他社を圧倒。例えば、緊急時にフィールドエンジニアが現場に到着するまでの所要時間の米国平均が8.5時間出会ったのに対しMcKinleyは2.5時間とはるかに短く、修理時間も全国平均が4.7日だったのに対し同社は1.4日だった。

競合他社を上回るサービス品質を実現していても、ルシン氏はさらに品質を向上させられると考えていた。同氏はその理由について「(サービスの品質で)競合他社に勝っていたとしても、依然として"対応型"のサービスだった」と説明。販売・設置したエレベーターが故障してからでしか、サービスを提供できない状況を改善しようと決意したという。「エレベーターからデータを取得できて、故障前にエラーを把握でき、その問題に最も適したエンジニアを派遣することが可能になれば、業界を変えられると思った」(同氏)。エレベーターにIoTを導入することでサービスを改革し、顧客満足度をさらに上げようと目論んだわけだ。

しかし、McKinleyはメーカーではないため設計部門を持っておらず、ルシン氏の構想を実現できるような人材もいなかった。何から手を付ければ良いのかわからず途方に暮れたというルシン氏だが「"千里の路も一歩から"という言葉を思い返し、最初の一歩を踏み出さなければいつまでたってもスタートできないことに気がついた」とのことで、技術者をいきなり2名雇い入れてエレベーターのIoT化に向けた取り組みを開始した。

技術者を雇い入れたは良いものの、そこからの道のりはかなり大変だったようで、ルシン氏は当時を「血と汗と涙の日々だった。多くの場合コンクリートに囲まれているエレベーターからどのようにワイヤレスで信号を受信すれば良いかなどの課題があった」と振り返る。その後、開発に成功してとある大口顧客に披露したところ、顧客は気に入り、すぐに導入が決まった。しかし、実際にそのアイデアをビジネスとしてどう実現・拡大していけば良いのか、またどれだけの投資が必要なのかもわからなかったため、ルシン氏はまたしても頭を抱える事態に陥ってしまった。

ルシン氏が新たな課題に直面していた時、ServiceMaxとPTCの提携が発表された。同提携はIoTを活用したサービス提供を目指すMckinley、そしてルシン氏にとって非常に大きな転機となった。「(PTCのIoTプラットフォームである)ThingWorxとServiceMaxを連携させることで非常に価値の高いコネクテッド・フィールド・サービスが出来上がった。現在ではIoT化されたエレベーターや車イス用リフトを提供できるようになった」(同氏)。

この"IoTエレベーター"サービスでは、例えばとある家庭のエレベーターの緊急ボタンが押されると、そのユーザーに通知が行く仕組みとなっており、外出中であっても自宅で何か異常が起きていることを知ることができる。一方、McKinley側では、エレベーターの運用情報を常に把握することで、リアルタイムにどのようなエラーが発生したかを検知し、適切なエンジニアを派遣するためなどに活用。今後もアップタイム100%の実現や製品の改善にIoTを活用したいとする。

最後にルシン氏は次のようなメッセージで講演を締めくくった。「私はこの取り組みが業界全体の変革につながると本気で思っている。最高の人材の採用につながるし、今の従業員の報酬も上げられるだろう。私達のような規模の企業にできるのであれば、皆さんにもできるはずだ」(同氏)。

(神山翔)