『「世界で戦える人材」の条件』(渥美育子/PHP研究所)

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 あらゆるシーンでグローバル化が叫ばれる今、自国を飛び越え世界に繰り出せる人材になるためには、いったいどんなスキルを身につけるべきなのだろうか。

 渥美育子氏の著書『「世界で戦える人材」の条件』(渥美育子/PHP研究所)には、そうした「世界で勝負できる人材」になるためのノウハウが実に詳しく記されている。

 日本で生まれ育ったものの居心地の悪さからカナダ・英国・米国へ渡り、ハーバード大学研究員を経て米国初のマネジメント研修会社を設立した著者は、「グローバリゼーションという言葉が頻繁に使われるにもかかわらず、日本ではその定義は極めて曖昧である」と指摘する。そこから著者は“グローバリゼーション”の本当の意味について「地球をまるごと一つの単位として見るということ、「地球規模」での視点、発想」と述べている。つまり著者が考える“世界で戦える人材”とは、そういった視点や発想を持った人物なのだ。

 日本を代表する大企業の社員500名に「グローバル人材に必要な能力は何か」というアン ケートをとったところ、ほとんどの社員が「英語力」「コミュニケーション能力」と答えた。しかしこの回答は、“日本人が国際ビジネスとグローバルビジネスの違いを理解していないことの表れ”だという。グローバルビジネスを行う本当の能力とは、グローバルスタンダードを理解したうえで現実の市場を同時に推進し、スピーディーに効果を出す能力のことだ。事業を展開する地域に合わせた対応を身につけ、さらにその考えを現地の人々にも納得してもらえる論理的な説明力が必要なのである。

 世界で競争力を持つ人間になるためには、まず“俯瞰視点“を持つことが大切だと著者は言う。これは、グローバル時代を生き抜くうえでもっとも重要な力である。競争の土俵となる世界全体を俯瞰し、必要とされているものを把握することで戦略を立てるのだ。また、俯瞰視点を持つことで目的達成への行動も早くなると考えられている。俯瞰視点は、「世界のどこに最適な市場があるか」「どの国から輸出をすれば関税がかからないか」といったことなどを判断する際にも非常に役に立つのだ。

 日本人がグローバルという言葉の意味を勘違いする最大の原因として、日本人は日本を通して世界を見るばかりで、外から日本を見る視点が圧倒的に欠けているということが挙げられる。そこで必要となってくるのは、“マルチカルチュラルレンズ”と呼ばれる“相手の立場からも日本/日本人を見ることができる能力”である。現地の人にとって何がプラスで何がマイナスかを知ることで、彼らの文化のレンズを知ることにつながる。国際的な交渉においてこのレンズは非常に大きな効果を発揮し、より高い視点から物事を調整して考えることができるようになるのだ。

 また、日本人の悪いところとして指摘されることが多いのは、「顧客に対しては対応が早いが、企業の意思決定や問題解決になるとスピードが遅い」ということだ。この問題点は国際的にも常識となりつつあり、日本のグローバル化を阻む深刻な問題となっている。原因はいくつか考えられるが、「リーダーシップの欠如」「話し合いによる決定がいちばんだと考えている」「人間関係を重視しすぎる」といったことが挙げられる。世界に後れをとることのないグルーバル化を求めるなら、まずこうした明確な課題から改善していかなければならない。

 著者が“日本人にどうしても身につけてほしい能力”として述べているものがある。それは“「次世代モデル」を生み出す能力”だ。著者の経験上、「今すぐやってみたい」と思えるアイデアを提案するのはやはり日本人よりも米国人のほうが多いという。だが、その違いは頭の良し悪しではなく、単なる教育の問題であるそうだ。世界で必要とされる人材として活躍したいと本気で思うのなら、著者はまず“自分自身がシンクタンクになる”ことを心がけるべきだと言っている。世界に衝撃を与える情報を積極的に取り入れ、画期的なデザインがあれば、それがどのように作られたか関心を持つ。そうしたことの積み重ねが、米国人のような教育を受けてこなかった日本人をグローバルな人材へと変える大きな一歩になるのだ。

 だれもが自由に世界とつながれるようになった今、日本という国を背負い世界で活躍できる人材が必要とされている。自分がその中のひとりとなるよう、自覚を持った意識改革が必要である。

文=ハル