『18歳からの格差論』(井手英策/東洋経済新報社)

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 初めての18歳選挙権が導入された先の参院選。18・19歳の投票率は、過去の20代より高かったという。若者たちが、社会の生きにくさを肌で感じているからかもしれない。

 ――かつての日本は「国民総中流社会」「平等主義国家」と呼ばれ、海外の人たちから憧れられていた存在だったが、もはやその面影はない。

 ――格差が広がりつつある中で、ひとりでも子どもを持てればいいほう、結婚することさえ、貧しい人たちからみれば立派な「既得権」である。

 このように断言するのは、『18歳からの格差論』(井手英策/東洋経済新報社)。本書は、若者に向けて格差社会の実態を語っている。

 本書によると、今の社会の格差は「3つの分断の罠」によって、拡大に拍車がかかっている。

 1つ目は「再配分の罠」。「国民総中流社会」時代に比べ、中間層はじわりじわりと貧しくなっている。本書によると、格差拡大の結果、平均所得を下回る人たちは全体の6割を超えている。格差是正で貧困層を助けようとすれば、負担者の大多数となる中間層の反発を招くため、再配分に歯止めがかかる。

 2つ目は「自己責任の罠」。本書によると、日本は意外にも「小さな政府」。消費税が10%になったとしても、日本の租税負担率は先進国の平均を下回るほど低い。多くの先進国は税負担が重い分、政府が教育や子育て、老後の生活のために必要なサービスなどを提供できるが、税負担が軽く政府が小さい日本では、必要なサービスの一定部分を自己責任で買い入れる必要がある。このような自己責任社会では「社会の成長の行きづまり」が、とくに貧困層の生活を直撃する。

 3つ目は「必要ギャップの罠」。人は年齢に応じて、必要とするものが違う。内閣府の調査によると、医療や年金、高齢化対策については、すべての年齢層が支持しているものの、少子化対策では中高年、とくに高齢者の支持がはっきりと落ちているという。少子高齢社会の到来で、若い世代と高齢世代の間で対立を生んでいる。

 以上の「3つの分断の罠」により、所得層や世代間でさまざまな分断を生んでいるのが今の社会。各々の層や世代は、相手が「いかに嘘つきであるか」をあばきたて、たたいて利益を切り取ることで、自分側の負担を軽くしようとし合っていると本書は明かし、「つめたい社会」と表現している。

「つめたい社会」を生んだ格差は、2つの方法で是正できるという。

 ひとつは、困っている人を助け、お金持ちに重い税をかけること。しかし、中高所得層の理解は得づらい。そこで本書が提案するのは、もうひとつの「全員が受益者となり、全員で負担も分かちあう」方法。つまりは「大きな政府」。国民全員の受益感を高めながら租税抵抗を緩和することで、格差が縮小される。そして、「みんなががんばるチャンスにめぐまれ、堂々と競いあえる社会」が実現する、と予言している。

文=ルートつつみ