旅行先で自分だけが知っているお気に入りのお店を見つけた! そんな幸運に巡り会うと、その場所を再び訪ねた時、多くの人は同伴する人を案内してあげたくなるものだ。

旅先でのエスコートを記憶だけに頼ると失敗が多いのはなぜ?

ついにその日が来た! 香港が初めてで浮かれている妻を連れ、夕食の為、外に出た。目的地は“スパイスクラブ Spicy Crab”の店だった。

以前、出張で訪れた時、香港駐在の日本人の方が、“おいしい店”だと、わざわざ連れて行ったところだった。カリッと揚げたニンニクとスパイシーな蟹の味がとても印象的で…漢字で書かれていたお店の名前を教えてほしいと頼み、今までずっと大事に保管してきたのだった。

香港への旅行は久しぶりではあったが、まだしっかりと記憶に残っていた。フェリーに乗って香港島へ渡り、摩天楼が見える歩道橋を渡っていく、その道である。

旅先でのエスコートを記憶だけに頼ると失敗が多いのはなぜ? 旅先でのエスコートを記憶だけに頼ると失敗が多いのはなぜ?

我々は、スターフェリーに乗って香港島へと渡った。

華麗な夜景の都心を通り、見覚えのある裏道を通るまでは、雰囲気は絶頂であった。問題は、確かにちゃんと着いたのではあったが、その「蟹の店」がまったく見当たらないのである。まさかと思い、周りの横道まですべて見回してみたが、無駄だった。時間は既にフルコースにデザートまで終わらしている時を過ぎようとしていた。いつ爆発するかわからない活火山のような表情が、妻の顔に浮かんでいた。

絶体絶命と思われたその瞬間、道先に観光案内センターが見えた。いくらグルメ店ではあっても、記憶の中の「蟹の店」は小さくて古びたお店だったはずだ…案内センターのような場所で教えてくれるようなところではないと思っていた。しかし、“ワラにもすがる”思いで、お店の名前が書いてあるメモ用紙を受付の男性へ渡した。

“1時間も探しているお店だが、もしや…?”

しかし意外な答えが戻ってきた。

“あ、ここですか? 有名なお店ですが…ここではなくて、向かい側のトラムに乗って4つ目の停留所で、なんやかんや…”

旅先でのエスコートを記憶だけに頼ると失敗が多いのはなぜ?

地図上に丁寧にペンで印までしてくれる。なんてこった! とにかく私達は教えられた場所へ向かった。彼が教えてくれた場所は全く反対側のコーズウェイベイ地域であり、ほとんど1か所に集中していたが、支店も何店かあったのだ。

それと本当にあきれたことに、お店に行けば“そうそう、ここだったよな!”と懐かしくなると思ったのに、実際行ってみるとそこは…全く見慣れない雰囲気だったのだ!

2008年、 Hong Kong

[旅の達人情報]

人の記憶がどんなに信用できないものなのか、学会でも実験にて立証されたことがある。

断片的な記憶、そして自分自身が記憶したいものだけを編集するのが人間の習性だという。正確な記録ではない記憶で賭博(?)をするような過ちを、旅先では犯さないようにしよう。

そしてもう一つ! グルメ店というのは大小に限らず、意外と多くの人に知られているという事実がある。探す時は一人で悩まず、道行く人や地下鉄の駅員など、誰にでも聞いてみよう。

どっちみち、だめでもともと。大抵は助けを得ることができる。

取材・文/劉昊相(YOU HOSANG)

韓国出身。見知らぬ場所や文化を楽しむ、生まれついての旅行家。イギリス在住時に様々なプロジェクトを経験、Panasonicなど多国的企業での海外業務経験を持ち、英語、日本語、韓国語に通じる。旅行 コミュニティー「Club Terranova」を運営。