よくある企業の悪循環

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 ウェブ上で見かけたある四コマ漫画。その内容は、1人が退職して4人分の仕事を3人でこなさなければならなくなっているのに、定時でさっさと帰ってしまう2人を怒っていた1人が、「4人の仕事を3人でこなしてしまったら、人事部は補充してくれなくなる」と、逆に2人から怒られてしまうというものです。

 人員不足のなかで仕事をやりきってしまうと、会社は人を補完してくれなくなるという話で、同じような場面の当事者になってしまった人、危うく難を逃れた人など、こういう経験を持つ人は結構たくさんいるのではないかと思います。

◆いっぱいいっぱいでも表面化しづらい理由

 一見すれば仕事が回っているようでも、終わらない業務を家に持ち帰っている、残業が申請しづらかったりできなかったりするなど、表に見えていない業務量まで含めると、実質的には人員不足の会社や組織は、非常に多いのではないでしょうか。

 一時期、批判の的にもなったある飲食チェーンのワンオペ(1人だけでの店舗運営オペレーション)ですが、これは店舗運営を1人でできるような仕組みを作ったとはいうものの、「運営できる」のレベルがかなりの現場負荷を前提とした、要はいっぱいいっぱいで何とかできるというレベルだったのだと思います。そこに、さらなる負荷がかかる新たなオペレーションを入れたことで現場が破たんし、多くの退職者が出て店舗が営業できなくなり、この企業は大きな損失を計上することとなりました。会社が現場の仕事量を見誤り、人員削減によるコストダウンが行き過ぎたということですが、現場からのアクションで初めて気づくというレベルでは、すでに手遅れということでしょう。

◆組織の至るところで起こる「無駄なこと」

 人員不足だけに限らず、これと同じようなことは、組織の至るところで起こっています。例えば、せっかく予算を節約したのに、使い切らなければ翌年に減らされてしまうからと、ただ予算消化だけが目的の活動が行われることがあります。本来の姿から言えば、無駄なことでしょう。また、相当に頑張った、もしくはかなりラッキーなことがあった上での営業目標達成で、翌年も見込めるベースがほとんどないにもかかわらず、次の営業目標はさらに上乗せされるケース。それを見越して、本当はもっとできたとしても、ほどほどで打ち止めにしておくようなことは、確実にあるでしょう。

 このように、仕事をこなしてしまうと自分たちの首が締まっていくようなことは、意外に多いと思います。こういうことが増えていると感じる背景は、やはり競争が激しいことで、会社がコスト削減などの負荷を現場に求めすぎ、その結果の実態をつかんでいないことにあるのだと思います。

 行き過ぎたコスト削減で、人員不足や業務過多があったとしても、それを会社に認識させようとすると、「できない」ということをアピールするしかなく、場合によっては自分たちが能力不足と評価されないとも限りません。人員不足を現場から言い出すことは、なかなか難しい部分があるでしょう。予算もその都度適切に配分されるとわかっていれば、無駄に消化することはしないでしょうし、営業目標でも同じことでしょう。仮にコスト削減よりもサービス維持を優先したとすると、会社はそのために必要な人員を考え、若干の余裕を持たせた体制をとるでしょう。そのかわりに価格は当然高くなりますが、それでも価格に見合ったサービスだと顧客が評価すれば、その人たちはその場所を利用します。会社が本当に求められていることを見極める視点も必要でしょう。

 現場の努力で仕事を回している人たちに甘えてしまっていると、いつかは破たんすることになります。それによって不利益を被るのは、社員だけでなく会社も同じことです。社員が声を上げられる雰囲気を作り、その声に耳を傾けて本質を把握するということは、会社が率先してなすべきことではないかと思います。

文=citrusユニティ・サポート小笠原隆夫