興梠の臨機応変なプレーはチームに新たな選択肢をもたらしている。写真:小倉直樹(サッカーダイジェスト特派)

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 7月19日から始まったオーバーエイジ3人(興梠慎三、塩谷司、藤春廣輝)を取り込む作業は、およそ2週間が経過した。アラカジュで直前合宿を張り、セルジッペ戦、ブラジル戦とふたつの実戦を消化。オーバーエイジ融合による+αは見られたのか――。

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 結論から言うと、攻撃の興梠と、守備の塩谷・藤春で明暗が分かれる。前者は力強さとしなやかさを武器に、派遣問題に揺れる久保裕也に代わって、前線のターゲットマンとして及第点の働き。4-2-3-1の際は、CFとトップ下の関係で浅野拓磨と好連係を披露。手倉森監督も「くさびだけでなく、ダイレクトプレーや一気に裏を突く動きなど、質を上げてくれている」とスピーディな攻撃実現への貢献度を評価する。
 
 ブラジル戦では後ろがビルドアップで苦戦しているとみるや、自分の判断でポジションを下げ、後方をサポート。戦術理解と状況判断に長け、臨機応変なプレーはチームに新たな選択肢をもたらしている。
 
「僕の役割としてやっぱり前で収めることだと思うので、しっかり仕事をして、チャンスがあればゴールを狙っていきたい」
 
 もっとも、“興梠依存症”には要注意だ。明確なオプションができたのはポジティブな要素だが、まずは興梠に預けてから、と周りが意識しすぎている感も否めない。縦パス一辺倒になると相手に狙われやすくなり、ブラジル戦のように一方的に押し込まれると前線で孤立してしまう。手倉森監督も「裏を狙うからこそ、彼の足下が効いてくる。その優先順位を理解してもらいたい」と話しており、興梠を経由する形と、そうでない形(カウンターやサイド攻撃など)のメリハリをつけて展開していきたい。

 気掛かりなのは、塩谷と藤春の“守備組”のほうだ。

 塩谷のフィジカルや1対1の強さは国内トップレベル。ブラジル戦ではこの日1本目のFKを任されるなど(結果は壁に阻まれる)、強烈な一発も兼ね備える。しかし、所属クラブの広島では3バックを採用しており、本格的に4バックでプレーするのは水戸時代の2012年まで遡る。こと4バックにおける連係は、CB同士のマークの受け渡しや、SBのカバーリングなど、まだ手探りな印象も強い。
 ブラジル戦では、ガブリエウのカットインに逆を取られて先制点を許し、セットプレーでは植田直通とボールへの対応が重なってしまったところを、マルキーニョスの豪快なヘディングシュートを決められてしまった。試合後、コメントを残すことなく帰路に就いたため、失点に関する塩谷の見解は定かでない部分はあるが、グループリーグ初戦のナイジェリア戦まで残された時間は少ないだけに、コンビネーション向上に全力を注ぐほかない。
 
 左SBの藤春は、U-23世代をサポートする意識は非常に高い。中島翔哉に「やりやすいようにやっていい」とメッセージを送るなど、基本的に相手SBのオーバーラップに対応して自陣深くまで戻らず、対応は後方の藤春が担い、攻撃にパワーを注げるように試みている。初めてコンビを組む中島も、「亀くん(亀川諒史)とやるのと変わらないし、そう言ってもらえるのはありがたい」と歓迎している。
 
 ただし、一方的に押し込まれ、1対1の対応に追われる展開では、藤春の持ち味であるスピードやダイナミックな攻撃参加は生きない。事実、ブラジル戦では対面のガブリエルやフェリペ・アンデルソンとのマッチアップが続き、自陣に釘付けにされてしまった。
 
「我慢するところでしっかり止めて行かないと、本大会では負けてしまう。ポイントポイントでブロックを作ったり、試合中に声を掛け合いながらやっていたので、“耐え方”は少し見えたと思います。ただ、90分間守り続けるのは精神的にも肉体的にもキツい。どこかで自分たちから仕掛けるというか、リスクを冒してでも前に出て行くことが必要かなと。そうしないと点は取れないし、点を取れないと勝てないので」(藤春)
 
 右SBの室屋成は、オーバーエイジふたりとの融合という感覚よりも、「最終ライン」としての意識を持って臨んでいると証言する。
 
「僕はDFなので塩谷選手、藤春選手とコミュニケーションを取ることが多いですけど、オーバーエイジというよりも、最終ライン4人でどれだけ合せていくかを考えて話し合っている。テグさん(手倉森監督)もアジア予選から少し変えた守り方について話していますが、本当に能力のある選手たちだし、問題ないと思います」(室屋)
 
 ブラジルに完敗を喫した後、選手たちは「相手は大会の中で一番強いチーム。本大会で勝とう」と声を掛け合い、気持ちの切り替えに努めたという。グループリーグ初戦が行なわれるマナウスに移動し、8月1〜3日の3日間でラストスパートをかける。
 
取材・文:小田智史(サッカーダイジェスト特派)