『胎内記憶でわかった 子どももママも幸せになる子育て: 「もって生まれた才能」の伸ばし方』(池川 明/誠文堂新光社)

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 お腹の中にいたときの記憶「胎内記憶」は本当にあるのか。自分が記憶を持っていたり友人の子どもが持っていたりするから「ある」と肯定する人と、「非科学的だ」「それは思い込みだ」と否定する人がいる。「ある」としたら神秘的なことだ。

「胎内記憶」はあり、そして子育てに生かすことができると断言するのは、「胎内記憶」からはじめて子育てを語った『胎内記憶でわかった 子どももママも幸せになる子育て: 「もって生まれた才能」の伸ばし方』(池川 明/誠文堂新光社)だ。産科医でもある著者は、1999年ごろから胎内記憶の調査を続けており、子どもたちの証言から2〜5歳児の約3割が記憶を持っていることを突き止めたという。

 子どもたちは、どんな記憶を持っているのだろうか。例えば、2歳7カ月の男の子は、「お腹の中にいたときにね、木とかビルとか街灯が見えたよ。雲とかオレンジ色で、夕焼けみたいだった。道路もオレンジ色だった」と言って母親を驚かせた。確かに母親は妊娠中によく夕日を浴びながら公園を散歩していたが、子どもにそれを伝えたことはない。本書いわく、物が見えるのは光の振動を目がキャッチして脳で映像化するからであり、また感情にも周波数がある。どちらも波動で、それがなんらかの経路で赤ちゃんに伝わっているのかもしれない、と推測する。

 ただ、本書が読者に伝えたいのは、胎内記憶が確かに存在することや、そのメカニズムを解き明かすことに留まらない。「子どもは母親を選んで生まれてくる」という子どもたちの証言こそ、本当に伝えたいことなのだ。

 胎内記憶はお腹に宿った後の話なので、人によっては眉唾ものでも「あるかもしれない」と思えそうだが、お腹に入る前の記憶となると、いわば“たましいの世界”。「子どもは母親を選んで生まれてくる」…実際、著者も非科学的な話に「まさか」と思ったそうだが、何百人もの子どもたちから証言を聞くうちに、「あるらしい」と考え直した。

 本書によれば、どうやら子どもは生まれる前から母親候補を観察し、「やさしそう」「かわいい」など母性が強い好みの女性を母親として選ぶそうだ。つまり、子どもは親の一方的な願いで生まれるわけではない。お互いの思いが成就して、生命が誕生するのだ。思春期の子どもが親に向かって「頼んで産んでもらったわけじゃねえよ!」と毒づくのは、真実に反しているということになる。

 本書によると、子どもが母親を選ぶとき、自分の好みより「母親の役に立てるかどうか」を優先することもある。嫌なことやつらいことを多く経験した女性に対して「喜ばせに来た」という証言がちらほら聞かれるという。胎内記憶を科学的に証明することはできないが、「ある」と信じ、自分を選んで生まれてきてくれたんだと思えたら、育児の苦労も多少はやわらぐかもしれない。

 ちなみに、わが子に胎内記憶を聞くなら、言葉を覚え始めた2〜4歳ごろ、子宮の中を連想させる入浴中や、布団の中で抱っこするなど密着しているシチュエーションがいいらしい。胎内記憶は、あるから偉いというものではない。本書は、無理強いして聞いたり、聞けなくてもがっかりしたりしないでほしい、と述べている。もし聞けたらラッキー、育児に役立たせよう、くらいの心持ちでいるのがよさそうだ。

文=ルートつつみ