『人生と勉強に効く 学べるマンガ100冊』(佐渡島庸平、里中満智子ほか著/文藝春秋)

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 日本だけでもあり得ない数のマンガが存在する。『人生と勉強に効く 学べるマンガ100冊』(佐渡島庸平、里中満智子ほか著/文藝春秋)は、その中から本当に面白いマンガが見つかれば、ということで出版されたようだ。マンガといえば娯楽のイメージがあるが、マンガはただ面白いだけでなく、人生の役に立つ学びを得ることもできる。受験テクニックが描かれている『ドラゴン桜』、日本の政治の裏側を描く『加治隆介の議』、障がいの大変さを知る『どんぐりの家』など、あらゆるテーマについて描かれたマンガが存在し、作者の思いが登場人物を通じて読者に訴えかける。この3冊のマンガも本書で知ることができた。本書は、本当に面白く人生のタメになるマンガを100冊選んで紹介してくれている。この記事では、その中から3つタイトルを選んで紹介したい。

『イムリ』(三宅乱丈/KADOKAWA)

 本書はSFなので、最初の設定がとっつきにくいらしい。しかし、それさえ乗り越えたら夢中になって読めると、著者が太鼓判を押している。以下があらすじだ。

主人公はまったく違う部族・違う環境で育てられた双子の兄弟。この世界では双子はつよい共鳴力を持つ。と同時に、この主人公の双子は、自然や社会に対する、文明の二つの態度を象徴する。一つは、「自然」も「人の心」も強い 力で意識的に支配し、コントロールしようとする文明。もう一つは、「自然」には逆らわず、「自然」にも「人」にも寄り添って、相手が自分から力を貸してくれるのを待つ、という文明。いわば西洋文明と東洋文明の対立だ。

 私の知人も大絶賛している作品で、クライマックスを迎える今後の展開が気になるという。

『ブラックジャックによろしく』(佐藤秀峰/講談社)

主人公は超一流大学病院の研修医。いい医者になりたいという情熱に燃えながらも、医療現場の現実や制度の矛盾、負の側面に幾度となく直面する。

 このマンガは私も読んだ。とても衝撃的だった。抗がん剤はがんを治す薬ではない。精神病患者に対する偏見。「生と死」にどう向き合うか。その覚悟はあるのか。今までの人生で目を背けてきた、もしくは考えもしなかった問題に気づかされ、眠れなくなったのを覚えている。「あなたならどう生きますか?」。この言葉の重みは計り知れない。

『ピンポン』(松本大洋/小学館)

 やはり本書にも紹介されていたようで嬉しい。私の人生のバイブル本だ。

「才能」とどう向き合うか? が大きなテーマとなっている作品。物語の中心となるのは卓球選手のペコとスマイル。ペコはなんでもすぐできる天才。しかし、それゆえ努力をせずくすぶっている。やがて、努力をしない天才は、努力を重ねた人に負けてしまう。天才のペコに憧れているスマイルは、自分より才能のあるペコが本気になることを期待するあまりに、ペコとの試合で無意識に手を抜いてしまう……。

 このマンガでは「才能のない平凡な選手が見る世界や苦悩」と「才能があるからこそ誰も知らない世界や苦悩」を対比して描いている。「どこで間違えた?」「何につまずいた?」「何を見失った?」「俺が本当に見たい景色は…?」。その答えはもがきながら出さないといけない。

 以上、本書より3つの作品を紹介した。そして個人的ではあるが、本書にはない作品をもう1つ紹介したい。私が大好きな作品だ。

『Monster』(浦沢直樹/小学館)

天才脳外科医の主人公Dr.テンマは、ある日双子の男の子を手術して助ける。しかしその男の子は、悪の怪物的な存在だった。手術から回復した男の子は病院からこつ然と姿を消し、次々に人々を殺し始める。それを知ったDr.テンマは、彼を殺すための旅に出る。

 このマンガは、人間の感情や心の移り変わりを巧みに描き、そして悲しい話の中に一筋の光を当ててくれる。Dr.テンマの「明日はきっといい日だ」という言葉も、リアリティある心の内側が描き出されているからこそ、真実味のあるものとなっている。ヒューマンストーリーが大好きな方は、ぜひこのマンガを読んでほしい。

 マンガは、作者が人生で大切に思っていること、どうしても伝えたいことをドラマチックに描き出して読者に伝える。いわば、作者の哲学がつまっているのだ。マンガは本当に素晴らしい文化だ。

文=いのうえゆきひろ