『さびしすぎてレズ風俗に行きましたレポ』(永田カビ/イースト・プレス)

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 「素人童貞」は風俗嬢としかエッチ経験のない男性──、とは限らないようだ。なんせいまや、レズビアン御用達のレズ・デリヘルもあるというのだから……。「へぇ〜、レズ風俗なんてあったんだ!」と、その秘められた存在が知られるきっかけとなったのが、昨年、イラストコミュニケーションサイトpixivに投稿された、『女が女とあれこれできるお店に行った話』と題されたコミックエッセイだった。

 そして描かれたその内容からは、驚嘆だけでなく「その気持ちよくわかる」「わたしもがんばる!」など共感の輪も広がり、いつしか閲覧数480万超えの話題作に成長。すぐさま出版社の目にもとまり、新たな描き下ろしを加えて改訂され、この度『さびしすぎてレズ風俗に行きましたレポ』(永田カビ/イースト・プレス)として生まれ変わったのである。

 28歳で性的経験ナシ、うつと摂食障害アリ、自己肯定感ゼロ、という著者。本書はそんな著者自身を主人公に、18歳から28歳までの日々を赤裸々に綴ったセルフドキュメンタリー。全編を覆うのは、その生きづらさを実直に語るモノローグだ。

自分にとって親からの評価が絶対だった

親から認められたい

がんばらなくても許されたい

それだけが原動力で動いていた

「自分がどうしたいのか」がわからなかった

考えられなかった

 高校まではごく普通だったという著者。しかし大学を半年で中退し、「所属する何か」を失い、引き換えに得たものは不安と焦り、そしてうつに摂食障害。自問自答を繰り返す日々の中で著者が気づいたのは、これまでの人生において、親からの評価や親の顔色がすべてであり、「自分」という「原動力・ものさし」を養ってこなかったこと。

 うつと拒食・過食を抱えながらスーパーでアルバイトをした著者が、解雇に至るまでの壮絶な一部始終、自傷行為をしてしまう心理、日ごとに募る「死」への逃避願望などが、コミカルなタッチの画とは裏腹に、読み手の心にも重くのしかかる。

 しかし、明けない夜はない。社員となるべく面接に行ったパン屋の面接官から言われた「マンガがんばった方がいいよ」の一言が、転機をつかむきっかけに。漫画家への道をゆっくりと歩み始める著者。その一方で、まだ心に大きなしこりを抱えていた。それが、これまで自分の中で押し殺してきた「性的なことへの欲求」だ。

 親のごきげんがとりたいがために、性的なことなんか考えてはいけない、そう自分に信じこませていたという著者。しかし、もうそんな呪縛は自ら解き放つとき。そう気づいた著者は、ついに行動に出る。それが携帯を使ったレズ風俗の検索だ。

お店のホームページを見た時から、いや検索できた時から

「親のごきげんとりたい私」の要求じゃなく

私が私の為に考えて、行動している

それがこんなに充実感のある事だなんて

 こうして自分の心と初めて真剣に向き合った結果、著者はレズ・デリヘルの扉をたたく。そこにはもう、親の顔色はない。この辺のくだりを読んでいると、著者がこれまでいかに親目線で生きていたかがよくわかる。

自分に正直に生きるなら、時には親から嫌われる勇気も必要だ。そのことを知った著者。その意味でデリヘルへのアクセスは、28年の著者の歩みの中でも、とても大きな一歩だったのだろう。

 本書には、著者の母親へのいささかいびつな感情、レズという認識に至るプロセス、そして風俗嬢とのやり取りなども詳細に記されている。中でも、精神科でカウンセラーに対して「そんなのいいから抱きしめろ!!!」と心の中で叫んだという「抱きしめられたい願望」は、多くの人の共感を呼ぶに違いない。

 おそらく480万pixiv読者の全員が、今回の単行本化を、著者同様に手放しで喜んだことだろう。なぜなら本作は、著者自身の人生の再生そのものであり、親以外の他者から評価され、認められることを可能にしてくれる、やっとつかんだ著者の「希望」なのだから。

文=ソラアキラ