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飼い主にとってはかわいい猫が、近所迷惑になる可能性もーー。近隣の賃貸住宅が「猫屋敷」となって悩んでいる方が、弁護士ドットコムの法律相談コーナーに「強制退去などは難しいのか」と質問が寄せました。

相談者によると、近隣の住民が数年前から猫を数匹飼い始めたそう。避妊手術をしていなかったのか、猫の数は増えていく一方。気づけば、なぜか飼い主は別の家に住みだして、隣家は完全な「猫屋敷」となってしまったそうです。

そこで問題になったのが、猫の管理でした。3年ほど前からは「猫屋敷」が悪臭を放ち、次第にハエが大量発生するようになりました。飼い主は日に1回は姿を見せるそうですが、放置したまま。相談者は「管理会社も動いて下さっているようですが、遅々として改善が見られません」と嘆いています。

この隣人を強制退去させることはできないのでしょうか。渡邉正昭弁護士に聞きました。

 ●交渉するにあたって、注意すべきポイント

多くの専門家は、訴訟を前提にして「猫屋敷」の住人に賃貸借契約の義務違反がないか見つけ出し、それを理由に契約解除と明け渡し請求を勧めます。例えば、(1)ペット飼育禁止条項違反(2)用法義務違反(3)近隣に迷惑をかけない禁止条項違反等々です。

ところが、これらの違反行為を理由に裁判を起こしても、満足のいく結果にならない場合があります。その理由を説明しましょう。まず、飼い主の多くが、ペットに深い愛情があるため、飼育方法に独特の価値観を持っています。この特性をきちんと認識しないと、訴訟が泥沼化し、長期化し、逃げ場のない感情的対立となります。

次に、訴訟という選択肢を選んだ場合には、手続き遂行の責任と負担は賃貸人(貸し主)が負うことになります。また、激しい感情的対立で、双方の非協力、嫌がらせ、非日常の人間関係に直面します。

さらに、臭気の測定や鑑定に依存する訴訟活動となる場合ですと、飼い主のペットの種類・数・管理飼育状況、臭気の程度・範囲・季節や時間、建物の構造や貸室の位置関係、問題飼育者の改善の状況、他の居住者のペットの飼育状況等を考慮して、建物の広範囲にわたる受忍限度を問題としなければなりません。

そこで、交渉戦略策定については、次の点に注意が必要です。

(1)問題の飼い主に、改善の努力や話し合いの意思が認められる場合には、いきなり明け渡しの要求をするのではなく、これまでの交渉の成果と課題を分析し、明け渡しと継続の両面から交渉戦略を再検討すること。

(2)その上で、訴訟による明け渡し請求を選択する場合には、訴訟の限界を十分認識した上で、他の居住者、賃貸人及び管理会社の理解と納得を得ること。



【取材協力弁護士】
渡邉 正昭(わたなべ・まさあき)弁護士
交渉戦略家・弁理士 元家事調停官
心理学を活用した法的交渉が特徴。ペット問題等の相談や事件依頼は日本全国から。セカンドオピニオンや引き継ぎ依頼も多い。
事務所名:渡邉アーク総合法律事務所
事務所URL:http://www.watanabe-ark.gr.jp/