©「ケンとカズ」製作委員会

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昨年の東京国際映画祭日本映画スプラッシュ部門で作品賞を受賞、その後各国の映画祭で注目を浴びた小路紘史監督の長編デビュー作『ケンとカズ』が7月30日(土)より公開されます。

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それに先立って日本外国特派員協会にて記者会見が行われた。

海外の記者たちは、この鮮烈なインディペンデント映画をどう見たのでしょうか?

これまでの日本映画とは違う、圧倒的にリアルな描写

海外記者たちの推薦により、インディペンデント映画としては異例の海外特派員向けの記者会見が行われた映画『ケンとカズ』。

自動車修理工場で働きながら、暴力団の下請けとして覚せい剤の密売をしている2人の男・ケンとカズ。

高校時代から互いに支えあって生きている2人の男ですが、ケンに家庭ができたことから、友情に亀裂が生じ始めます。敵対グループとの抗争や家族との関係など、一見よくあるストーリー展開。

しかし、単なるバイオレンス映画ではなく、リアルな人間ドラマへと昇華させているのです。

外国人記者からは「これまでの日本映画とは異なる、圧倒的にリアルな描写に感動した。どうして、このような映画ができたのか?」ということに質問が集中しました。

これに対し小路監督は「もともと日本映画はあまり見ておらず、海外、特に韓国映画、ポン・ジュノやキム・ギドクのリアルな暴力描写に影響を受けた。

それにはリアルなロケーションが不可欠だと感じ、自分が実際に暮らしている千葉県市川市の街をくまなくロケハンした」と返答。

これに対し海外記者たちは「マーティン・スコセッシの『ミーン・ストリート』(監督が生まれ育ったニューヨーク・リトルイタリーが舞台)と似た印象を受けたのかも」と納得していました。

行き場がなく、もがき苦しむ姿は、今の日本社会を描写

主人公・ケンを演じたカトウシンスケさんは、台北映画祭に参加した際、「1960〜70年代の高倉健や菅原文太主演の任侠映画は爽快感があるのに、この作品にはそれがない」といわれたそうです。

そして「あの頃は日本が高度経済成長期で輝ける未来を見えていたが、今は時代が異なる。

主人公たちにカッコ悪く、生活を豊かにするために麻薬密売に手を染めていったのに、それさえもうまくいかない。

そんな行き場がなく、もがき苦しむ姿は、今の日本社会を描写できたのではないのだろうか」と振り返りました。

小路監督は、キャラクターを決めてからオーディションをするのではなく、出演者を決めてからキャラクターを調整していったといいます。それもまた、商業映画では考えられないことです。

カズ役の毎熊克哉さんいわく「小路監督は、実際には映画には出てこない主人公たちの背景に重点を置いていた。さらに、撮影現場での空気感に対して、並々ならぬこだわりを持っていた」とのこと。

麻薬中毒者の描写さえなく、ただひたすらに2人の男の苦悩を追っていきます。あえて個人にこだわることで、日本社会そのものの姿を見せる。

その撮影スタイルは、海外の記者たちの目に「バイオレンスではなく、社会ドラマとして、極めて重要な作品である」と映ったようです。

肌に伝わる芝居をしてくれる俳優たち

カトウさんは「日本の俳優は、肌に伝わる芝居をしてくる人があまりいない。

この作品はインディペンデント映画で予算も掛かっていませんが、その芝居を導き出すことに心血を注いでいます。

肌感覚でわかるものは、どの国へ行っても伝わるということが、海外で上映されたことでわかったの」とうれしそう。

小路監督の演出は、カメラを主人公たちに並走させ、その息遣いを写し撮っていきます。

その演出法は、今年のカンヌ国際映画祭でパルムドールを受賞したケン・ローチやダルデンヌ兄弟が使ってきた演出法。

近年は、ハリウッドでも近年採用されており、レオナルド・ディカプリオが主演賞を受賞した『レヴェナント』や『マネー・ショート』などで顕著にみられるものです。

ただ、日本のメジャー作品ではほとんど見られない作品だけに、海外の記者には「これまでの日本映画とは違う」ように映ったのかもしれません。

実は2011年に、小路監督は同名の短編を製作して各国の映画祭で上映もされています。しかし、短編では伝えられない思いがあり、長編として再度この作品に挑みました。

言葉でだけでは説明がつかない、リアルな空気感によって紡ぎ出される男たちの友情。

そこに何が描かれているのかを、是非スクリーンで確認してください。