東京・代々木公園では今年も、4月から定期的に蚊を採取し、ウイルスを持っていないか検査している。感染防止に向けて気は抜けない (c)朝日新聞社

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 昔より夏が暑くなったのなら、増える病気も変わるのでは──。そう考えたアナタに、猛暑で注意したほうがいい病気を教えます。

 昨年8月、東京都内に住む会社員男性(47)は、息子の野球の試合を応援しているときにめまいがして足がしびれ、立っていられなくなった。その日の気温は35度以上。「熱中症の一歩手前だな」と感じ、妻に助けてもらいながら涼しい場所へ移動したが、一向に回復しない。

 救急搬送された病院での診断は「脳梗塞」。男性は右手足に軽いまひが残り、リハビリを続けている。

●夏こそ怖い脳梗塞

 猛暑の夏、熱中症はもちろんだが、怖いのは脳梗塞だ。

「脳卒中は冬に多いイメージですが、それは脳の血管が破れる脳出血のほう。汗をかくと血液中の水分が減って、どろどろした状態になり、血管が詰まる脳梗塞になりやすくなるのです」

 こう話すのは、国立循環器病研究センター脳血管内科の古賀政利医長だ。2011〜14年に同センターに入院した脳梗塞患者の発症時期を季節別に集計したところ、夏(6〜8月)が最も多かった。

 特に気をつけたいのが、就寝中だ。エアコンを使わず汗をかいて脱水を起こす場合もあるが、エアコンを使うと乾燥気味になって脱水が進むことも。

「特に高齢者は脱水に気づきにくいので、エアコンは加湿器を併用するといい。寝る前に水を1杯飲むのも効果的です。ただしお酒は、アルコールを分解するために体内の水分をたくさん利用するので尿量が増加し、脱水が進行します。寝る前の大量飲酒はダメです」(古賀医長)

 夏風邪などの感染症にも注意が必要だ。食欲が落ちて水分をあまりとれない上に、炎症や発熱、下痢などで体内の水分が外に出ていきやすくなり、脳梗塞の危険が高まるという。

●デング熱流行の恐れも

 感染症といえば14年の夏、国内で約70年ぶりにデング熱の感染者が確認され、感染が広まった。海外で感染した人が発端とはいえ、熱帯地方で流行するデング熱が日本で広がったことに驚いた人も多いだろう。

 環境省が温暖化の影響をまとめた報告書によると、デングウイルスを媒介する蚊の一つ、ヒトスジシマカ(通称・ヤブ蚊)の分布は1950年以降、東北地方を徐々に北上。「2035年には本州の北端まで、2100年には北海道まで拡大する」と予測されている。厚生労働省で感染症対策にもかかわった沖縄県立中部病院感染症内科の高山義浩医師は、こう話す。

「デング熱はすでに台湾で大流行するなど、東アジアでも感染地域が北上しています。いずれ日本でもデング熱が大流行する日が来る可能性は十分あります」

 蚊が媒介する感染症には、ジカウイルス感染症(ジカ熱)、日本脳炎、マラリアなどがある。世界の新規感染者数はデング熱が毎年5千万〜1億人と多く、感染拡大のリスクが高い。

 ではどうすればいいのか。

「個人レベルで特別な対策は必要ありませんが、流行を見越して備えることは大事です。蚊の多い場所に行かない。やむを得ない場合は肌の露出を避け、明るい色の服を着る。虫よけスプレーを使うなど、蚊に刺されないように心がける。特に子どもには、うがいや手洗いと同じように生活習慣として身につけてほしいと考えています」(高山医師)

(ライター・熊谷わこ)

AERA 2016年8月1日号