テスラの自動運転はあくまでも半自動運転と語る石川氏

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『週刊プレイボーイ』本誌で「石川英治のホワイトハッカーなんでも相談室」を連載中のホワイトハッカー、石川英治がアメリカのテスラモーターズが製造・販売している電気自動車「テスラ」について語る。

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自動運転で初の死亡事故が起きた「テスラ」ってどんな車?(47歳・会社員)

5月7日にアメリカで発生したテスラモーターズ「モデルS」の起こした事故が自動運転初の死亡事故として7月1日に米国道路交通安全局(NHTSA)によって公表され、話題となりました。

テスラの自動運転はあくまでも“半自動運転”であり、ドライバーはきちんとハンドルを握って前方を注視していなければならないのです。もし、これが自動運転を過信した結果の死亡事故だとすれば、いろいろ考えさせられます。

テスラはとても先進的な自動車メーカーで、自動車のソフトウエアをアップデートすると機能が向上するという、スマートフォンではおなじみの概念を車に取り入れていて、この自動運転モードは2015年の10月に提供されたアップデートで実装されたものです。通常の自動車メーカーの車なら、車の機能を増やすには新機能を搭載した新車種に買い替えなければならないでしょう。

自動車業界にITのシステムを持ち込んだ、この仕組みが導入できたのはテスラのイーロン・マスクCEOが「PayPal」(決済サービスシステム)の創業者でもあり、12歳のときから商業プログラマーとして活躍していた柔軟な発想が根幹にあるからでしょう。

6月9日にテスラ「モデルS」の廉価版が発売されたのですが、これは既存の「モデルS」から、一部の機能を削除し安価に仕立てたものでした。ハードウエアは通常の「モデルS」と同じですが、バッテリーの充電容量を20%セーブしたり、パネルに表示される画像が減らされていたりするわけです。廉価版を購入後9000ドル支払えば制限が解除され、通常の「モデルS」と同じになるというシステムです。

パソコンやオーディオなどの工業製品でも、高機能なものからその機能をあえて制限して“低機能版”として廉価発売することがありますが、テスラはソフトウエアでこれをやったのです。

僕らエンジニアの間で冗談めいた話題となったのは「クラック・パッチ(*)を作ればいい」というものでした。つまり、テスラの制限を解除するシステムを勝手に作れば9000ドルが節約でき、なんならそのパッチを安く販売して儲もうけたりする猛者が現れるかもしれない、ということです。もちろん、そんなことをすれば犯罪です。

僕がもしテスラオーナーになれたとしても、どこの誰が作ったかわからないプログラムを入れたがために変な不具合が起きてほしくないので、正規なアップデートをちゃんと購入するか、自分で作ったものを使うようにしたいなあ、と思ったりします(笑)。

(*)既存のプログラムを無許可で改造するためのソフトウエアのことで、体験版アプリを正規版にしたりするようなものがある。

●石川英治(いしかわ・ひではる)

1969年生まれ。現役の“ホワイトハッカー”で、ネットワーク犯罪評論家。不正アクセス禁止法の施行(2000年2月13日)以前は、バリバリのハッカーとしてやんちゃなことも