WEEKLY TOUR REPORT
米ツアー・トピックス

 今季のメジャー最終戦、全米プロ選手権(7月28日〜31日)がニュージャージー州のバルタスロールGCで開催されている。

 例年4大メジャーは4月のマスターズから8月の全米プロまで、およそ5カ月の間に行なわれ、各大会の間隔は少なくとも1カ月はある。それが今年は、リオデジャネイロ五輪でゴルフ競技が112年ぶりに復活。これを受けて、スケジュールがかなり圧縮された。

 特に今回の全米プロは、全英オープン(7月14日〜17日)からわずか2週間後の開催。このタイトなスケジュールが勝負の行方にどう影響するのか、興味深いところだ。

 全米プロがバルタスロールGCで行なわれるのは、2005年大会以来となる。そのときは、フィル・ミケルソン(46歳/アメリカ)が最終ホールで劇的なバーディーを奪って優勝。メジャー2勝目を挙げている。

 今年のセッティングは距離が長く、全長7428ヤード(パー70)。しかも開幕週の月曜日の夜、豪雨に見舞われて大量の水が流れ込んだコースはすっかり柔らかくなった。火曜日の練習ラウンドでは、フェアウェーでもほとんどランが出ず、長いコースがさらに長くなった印象だ。

 そのうえ、気温35度を記録するほどの暑さ。湿気と熱波も相当なもので、選手たちは連日汗だくになりながら調整している。この暑さは大会初日まで続き、金曜日からは雷雨の予報も出ている。気候とコースコンディションにどう対応するかも、上位進出へのひとつのファクターとなりそうだ。

 いずれにしても距離がある今年、たとえ天候が持ち直してコースがドライな状態になったとしても、"ロングヒッター"が有利なのは間違いない。

 優勝候補の筆頭に挙げられているのは、全英オープンでメジャー初勝利を飾って勢いに乗るヘンリク・ステンソン(40歳/スウェーデン)。全英の舞台となったロイヤル・トゥルーンでは、ショットメーカーらしい安定したプレーを披露し、パッティングも冴え渡った。パットが決まればメジャー制覇にもつながる、ロングヒッターの強さを存分にアピールした。

 ちなみに、ステンソンのティーからグリーンまでのストロークゲインド(平均値からの差)は、1.45。つまり、4ラウンドこなした場合、ステンソンは平均値の選手よりも6打近くもいいスコアで上がっていることになる。

 そして全米プロでも、ステンソンは連続メジャー制覇へ意欲を見せる。

「今週は、3番ウッド、4番ウッドでティーショットを打つことが多くなると思う。確実にフェアウェーをとらえることが重要。長いパー4では、ミドルからロングアイアンでグリーンを狙うことになり、それは僕のゲームスタイルに非常に合っている」

 唯一不安があるとすれば、「(全英オープンのあと)スウェーデンに戻って、大きな祝福を受けた。たくさんのメディアに囲まれて、とても忙しい日々だった」と本人が言うように、全英オープンの劇的な勝利からあまり時間が経っておらず、その余韻を引きずっていることか。

「だけど、スウェーデンにとっては長い間待っていた男子初のメジャー制覇。それは、国中が待ち焦がれていたことだった」

 ステンソンはそう語って、多忙な日々も苦にしていないというが、ひと筋縄ではいかないのがメジャーの戦い。ステンソンにとっては、気持ちの切り替えがうまくできるかどうかが、優勝争いに加わっていくポイントとなりそうだ。

 実際、昨年の覇者であるジェイソン・デイ(28歳/オーストラリア)は、そうしたメンタル面がメジャー制覇につながる重要な要素になると指摘する。

「(一度)勝利をしたら、また『次も勝てる』と周囲の期待が大きくなって、自分も知らないうちに期待をかけてしまう。それが、一番の強敵だ」

 デイ自身、そんな"呪縛"に苦しんでいたのだろう。現に今季は、常に優勝候補に挙げられながら、メジャーでは存分に力を発揮できす、まだタイトルを手にすることはできていない。

 それでも、3月のアーノルド・パーマー招待で勝利すると、続くWGCデルマッチプレーでも優勝。5月には「第2のメジャー」と呼ばれるザ・プレーヤーズ選手権を制して、今季ツアー3勝を飾っている。いつメジャーに勝ってもおかしくない状態にある。

「今週は、少し気持ちがリラックスできている」というデイ。そのまま気負わずに臨むことができれば、十分にチャンスはあるだろう。

 デイのティーからグリーンのストロークゲインドは1.055。パッティングゲインドは1.031でツアー断トツの1位。今大会でもそのパットよさを生かして、メジャー2勝目となる連覇を狙う。

 ところで、全米オープン、全英オープンと、メジャー2戦連続で予選落ちを喫した松山英樹(24歳)はどうだろう。彼のティーからグリーンのストロークゲインドも高く、1.414と堂々のツアー8位だ。

 しかし、パッティングゲインドがマイナス0.152とツアー134位。グリーン上におけるパフォーマンスの低さが足を引っ張っていることは明らかだ。

 デイの話を聞いていてふと思ったが、もしかすると松山も、周囲のメジャー制覇への期待が高まって、自らの期待も気づかないうちに膨らみすぎているのかもしれない。

 今季は2月に米ツアー2勝目を飾って、メジャー第1戦のマスターズでは優勝争いに絡んだ。最終日序盤に崩れたものの、次の全米オープンでは「今度こそ」と日本中が思ったことだろう。松山もそのムードに引っ張られてもおかしくない。

 松山にとっても、平常心で戦えるかどうか。日本人初のメジャー制覇は、メンタル面がカギを握っている。

text by Reiko Takekawa/PGA TOUR JAPAN