■連載/石黒謙吾のLOVEビール
〜語ってもウザくならない、スマートでコクのあるビールの話〜

 ビールが好き、もっと知りたい&楽しみたい。でも、マニア向けのものは結構、とは言っても当たり前の話は知ってる。そんな、粋でイケてるビールファンに贈る、なんでもありの読み物です。語ってもウザくならない、スマートでコクのあるビールの話をお楽しみください。


苦味「IBU」と色「EBC」が表示された極上のベルギービール!

 この数年、日本のビール環境はめきめき急上昇中。しかしそれは、クラフトビールのブルワリー、ブルワーなど、造り手側の勉強研究による味のレベルアップが引っ張っているイメージで、<飲み手側>全体としての「ビール民度」はぼちぼちいったところか。

 先日もビールが好きという人と話してたら、クラフトビールはもっと<どの土地のビールかを打ち出してほしい>と言っていたが、聞いてみると、たとえば、<エール>とか<デュンケル>といった<スタイル>については知らなかったりして、広く一般の人にビールの味の基礎知識が浸透していくにはまだまだ時間がかなるなあと痛感した。

 そこにいくとヨーロッパはさすがビールの歴史が違う。民度が高いなと思うこといろいろで、今回はその中から、<色>についてのネタ。

 この連載9回目で、[苦さの単位「IBU」]について書いた。

 そしてこの<IBU>同様、明確に数値化する<単位>として、<色>についても設定されていて、それが<EBC>というもの。

 <色>について「キリン ブラウマイスター」の公式サイトにわかりやすく説明されているのでまずはどうぞ。

「1.メラノイジン 2.カラメル 3.EBC」

 抜粋すると<淡色麦芽は5EBC前後、色麦芽の場合、カラメル麦芽で50〜400EBC、最も濃い色のファルブ麦芽は1300〜2500EBC。ビールなら、淡色ビールは5〜15EBC、濃色ビールは40〜60EBC、黒ビールなら150〜400EBCに至ります>

 さらに、「ウィキペディア」にも、<SRM>という単位と共に記されている。この色付きのバーチャートがわかりやすい。

「標準参照法」

 こちらも抜粋でこう。<大雑把に言えば、EBC値はSRM値の約2倍である>

 ひとことで言うと、<色が薄ければ数値は低く、濃ければ高い>。色付きバーチャート見ると、一昔前までの日本のメジャー系ピルスナーはほぼ、EBC4〜8ぐらいだろう。かなり濃いスタウトは日本でも昔から流通していたのでわかりやすいが、EBC70あたり。そして、近年日本で流通し始めた様々なビールは、このグラデーションの階層に微妙な違いで収まっていく。

 しかしこの<色の濃さ>は、直接味と相関関係で語れないのがまたビールの深くて面白いところ。ちなみに僕自身の好みも当然、濃い薄いと一元論ではまったく語れない。

 でも、こうして、数値化で基準を設けられることはすべて設定していくことで、<味>という深遠で繊細な世界を追求していこうという姿勢が素晴らしい。<やれることはずべてやる><やったほうがいいかやらないほうがいいかといったらやったほうがいいにきまってる>ということだ。

 このような設定は<造り手>の必然から生まれていくものだけれど、僕たち<飲み手>も、味に対する自分の感応を高めていくためには、意識していくほうが面白いに決まっている。

 おそらく多くの人が初耳であろうこの<EBC>という単位。なんとボトルに表記しているビールがある。それは、ベルギービールのブルワリー「ブラッセルズ・ビアプロジェクト」のもの。

 この「ブラッセルズ・ビアプロジェクト」の素晴らしいビールについては、この連載で2度取り上げている。僕自身、言ってしまえばすっかりファン……。

連載3回目「廃棄されるパンを使った“エコ”なベルギービール」
「バビロン」「ダークシスター」

連載17回目でも、さらに3種類を紹介
「グロスバルサ」「デルタ」「ソレイユ ルヴァン」

 そしてまた新しい限定モノが出たのですかさずインプレッション!色と<EBC>数値もご注目を。……と思ったら「ベルギービールジャパン」ではいったん売り切れていたがまた入るかだろう……。

「ブラッセルズ・ビア・プロジェクトの商品一覧」

「ブラッセルズ・ビア・プロジェクトの説明」

「ブラッセルズ・ビアプロジェクト」ベルギーの公式サイト

タントタタン
■タントタタン
(ブラッセルズ・ビアプロジェクト 度数11.2% 330ml)
★IBU30 EBC45

濃いブラウン<EBC45>で、すごい濁り! 視界の悪さは雨上がりの渓流のごとく(笑)。りんごを使っている「クアドルペル」というスタイル。「クアドルペル」とは4、手短に言うと砂糖の量が「ダブル」「トリプル」の上、4倍という意味。となると度数が高くなるので、これもかなり。見た目も味も「これがビール!?」という攻め攻めの仕上げ。ブランデーとワインと合わせたようなビールで、高級酒という印象。りんごの風味もだけど、カカオのようなアプリコットのようなフレーバーも感じる。飲むのがもったいないほど豊潤。<大人のスイーツ>とでも言いたい。マリアージュは、和でも合う。たこ酢、煮物はよかったし、重いので、鯛の昆布〆でもいけた。
★女性タレント見立ては、木村文乃

プリンセス ジャスミン
■プリンセス・ジャスミン
(ブラッセルズ・ビアプロジェクト 度数5.3% 330ml)
★IBU30 EBC7

ジャスミンを使ったホワイトビール。明るいゴールド<EBC7>なのに、かなりの濁り! ホワイトの濁りは見慣れてるがゴールド系なので派手に思える。色味から想像つかないほど苦味が立っている。オレンジピールはがつんと感じるし、フェンネルから舌にぴぴっとくるスパイシーさも。ライト目なボディなのに苦いのが、すいかに塩で甘味が増すみたいなことなのか、味わい全体の相対的なバランスがいい。オリジナリティ豊かな深みがあるホワイトは、素晴らしい完成度、超クリエイティブ!と絶賛。
★女性タレント見立ては、広瀬すず

★今日のビール川柳★
色味まで 愛でて愉しむ ビール通

文・写真/石黒謙吾(いしぐろ・けんご)

著述家・編集者・分類王。日本ビアジャーナリスト協会・副会長、日本ベルギービールプロフェッショナル協会・理事。映画化されたベストセラー『盲導犬クイールの一生』はじめ、『2択思考』『図解でユカイ』『ダジャレヌーヴォー』『エア新書』『分類脳で地アタマが良くなる』『ベルギービール大全』など幅広いジャンルで著書多数。プロデュース・編集した書籍も、ベストセラー『ジワジワ来る○○』(片岡K)、『ナガオカケンメイの考え』、『負け美女』(犬山紙子)、『読む餃子』(パラダイス山元)など200冊以上。twitter: @ishiguro_kengo、facebook:石黒謙吾、blog:イシブログケンゴ

■連載/石黒謙吾のLOVEビール
〜語ってもウザくならない、スマートでコクのあるビールの話〜