明日30日(土)は、隅田川花火ですが、5年ほど前から女性の間で和服に注目が集まり出し、花火大会の日に揃いの浴衣姿の恋人を見る機会も増えました。
花火大会に限らず、浴衣姿の女性や粋な浴衣姿の男性が、「一緒に写真を撮って」と外国人から次々声をかけられるシーンも街中でよく見る光景になりました。
今年の7月は九州・関西・東海地方をのぞき、比較的涼しい日が多かった傾向にありますが、いよいよ8月。
体感温度も“暑く”て、心も“熱い”……。そんな夏本番の8月の詩歌を紹介します。

明日30日(土)は隅田川花火大会。ほか全国各地で、大輪が夜空を焦がす季節を迎えます


約300年にわたって楽しまれてきた花火

現在は7月の下旬から8月の中旬頃に行われることの多い、花火大会。
有名なのは東京・両国の隅田川花火大会ですが、もともと江戸時代の中期に水難事故や飢饉で亡くなった人々を供養する「慰霊祭」の目的で、旧暦の5月28日(新暦では6月末ごろ)に行われたのが初めです。
※ちなみに、明日30日(土曜)に開催される「隅田川花火大会」は、荒天の場合、翌日31日(日曜)に順延される予定でしたが、東京都知事選挙投開票が31日に実施されるため、30日が荒天の場合は順延中止が決定しています。行かれる方はご注意くださいね。
さてさて、江戸時代の中期の狂歌にも、花火の美しさを詠んだものがあり、当時から両国の花火は有名でした。
〈両国も江戸の花火や千金の砂子を川にちらす夏の夜〉内成
続いて花火の句を挙げてみましょう。一茶の句からは、当時から川に船を出して花火見物をしたことが窺えます。

隅田川花火大会

隅田川花火大会

〈川舟や花火の夜も花火売〉小林一茶
〈暗く暑く大群衆と花火待つ〉西東三鬼
〈花火見て一時間後に眠り落つ〉山口誓子
〈ねむりても旅の花火の胸にひらく〉大野林火
〈遠花火開いて消えし元の闇〉寺田寅彦
〈線香花火頑張つて又咲きぬ〉島田摩耶子
〈手花火にうかぶさみしき顔ばかり〉岡本眸
〈まなうらに今の花火のしたたれり〉草間時彦
「まなうら」はまぶたのうらのこと。“たった今“の刹那の花火の残像を詠んだ句です。
俳句は花火を闇とのコントラスト、そして打ち上げられたあとの独特の寂寥感を詠むものが多いようです。線香花火もどこかはかなくて寂しい気分があります。
〈大空のミモザのごとく花火散り我の歓喜はまた闇に入る〉梅内美華子
〈はなび花火そこに光を見る人と闇を見る人いて並びおり〉俵万智
花火を見たり、そぞろ歩いたりして、川辺での夕涼みも江戸時代から盛んに行われました。
京都の川床も有名ですね。
〈ことづけの念おしに来る涼みかな〉久保田万太郎
〈川床のぼんぼり露に消ゆるらし〉川瀬一貫

粋な浴衣姿の男性も素敵!

粋な浴衣姿の男性も素敵!


夏の夜の過ごし方

花火大会の日の夕方には街に浴衣姿の女性が目立ちます。
〈浴衣着て少女の乳房高からず〉高浜虚子
〈ゆるやかに着ても浴衣の折目かな〉大槻紀奴夫
〈浴衣着てマクドナルドに待ち合はす〉黛まどか
〈性格が紺の浴衣に納まらぬ〉櫂未知子
夏の風俗を詠ったものにはこんな句もあります。
〈海暮るる岬に哀愁アロハシャツ〉秋沢猛
〈羅(うすもの)や化粧してわが心閉づ〉古賀まり子
〈おふくろの国に来てゐる端居かな〉上田五千石
羅(うすもの)は夏用の着物・単衣(ひとえ)の一種。
端居は、夏の夜に縁台などで夕涼みをすること。最近ではあまり見かけない習慣になってしまいました。
暑い夏の夜、そしてそれをやり過ごす工夫にも季節ならではの情緒があります。
遠出をしなくてもよいでしょう。大勢で楽しむ夏の夜も楽しいものですが、一人でいるときに窓を開けて夏の夜を楽しんでみる。それもまた風情がありますね。

ハッと美しい、浴衣の女性

ハッと美しい、浴衣の女性