暑さが続くこの時期は、窓や扉を開け放して過ごすのが庶民の知恵。シャワーを浴びる際なども、浴室の窓は開けたままという人もいるかもしれないが、80代の女性が裸体を見られた場合でも、覗き見の罪は成立するのだろうか? 弁護士の竹下正己氏が回答する。

【質問】
 入浴中の86歳になる母が「覗かれた」と私に訴えてきました。「警察に通報してくれ」ともいわれたのですが、たまたま見てしまったはずですし、対応しなかったのです。でも、それ以来、母は文句ばかり。そこでお聞きしたいのですけども、たまたまでも老女の裸を見てしまった場合、罪に問われますか。

【回答】
 気持ちの若いお母さんですね。長生きしそうで、ご同慶の至りです。ともあれ、「86歳の老女の裸を、たまたま見てしまった場合」に犯罪になるかは、一概にいえません。

 軽犯罪法第1条23号では「正当な理由がなくて人の住居、浴場、更衣場、便所その他人が通常衣服をつけないでいるような場所をひそかにのぞき見た者」が処罰対象となっています。つまり、浴場等をひそかに覗き見た者であることが前提です。また、故意をもって一定の場所をこっそり覗き見ることも罪の要件となります。

 ご質問の「たまたま見てしまった」という人物が目をやった先に風呂場の窓があり、偶然にも開いていたので、老女の裸体が見えてしまったというだけでは、「覗き見た」とはいえませんし、もちろん、覗き見る故意もなかったといわざるを得ませんから、軽犯罪法違反にもなりません。

 例えば、窓が公道に面しているような場合には、偶然に目に入ってしまうこともあります。そのように、たまたま家の中を見てしまった場合も犯罪になるのであれば、一心不乱に前を向いて歩かなければいけなくなってしまいます。

 仮に、ボールが堀を越えて敷地内に入り、探す行為は「正当な理由」があり、覗き見たとはいえません。しかし、わざと背伸びなどして堀の上から敷地内を眺めるのは覗き見といえるでしょう。

 この場合でいえば、それがたまたま老女の裸体であったということに過ぎず、その人物が何かしらの意図をもって、こっそり見たのであれば、覗き見の罪の成立は否定できません。

 なんにせよ、見たのが何であるかにかかわらず、「人の住居、浴場、更衣場、便所その他人が通常衣服をつけないでいるような場所」をこっそり覗くことで、この罪が成立するのです。

【弁護士プロフィール】
◆竹下正己(たけした・まさみ):1946年、大阪生まれ。東京大学法学部卒業。1971年、弁護士登録。

※週刊ポスト2016年8月5日号