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アナログ半導体市場シェア4位の米Analog Devices(ADI)は7月26日(米国時間)、同8位のLinear Technologyを148億ドルで買収すると発表したが、その背景を分析してみると、アナログ半導体業界の生き残りを賭けた再編が活発になってきている様子が見えてきた。

○トップ独走のTIに引き離される他のアナログ半導体企業

現在、アナログ半導体市場は、トップの米Texas Instruments(TI。2015年シェア18%)が、2位の独Infineon Technologies(同シェア6%)を売上高で3倍ほど引き離して独走体制を敷いている。TIの売上高は、第2グループを形成する2位のinfineon、3位のSkyworks Solutions、そして4位のADIの3社の売上高の総額よりも多い。

アナログ半導体はデジタル半導体よりも種類が多いだけではなく、その出荷数量も増加傾向にあり(図1)、このためアナログ半導体業界は、多数の中小半導体メーカーがそれぞれの得意分野でビジネスを展開する群雄割拠状態にある。このため、大手10社の売上高合計は、世界市場の6割に達しておらず、シェア18%のTIがダントツのトップ企業として君臨している。TIは、2000年に有力アナログ半導体メーカーであったBarr Brownを買収して以降、2006年にはノルウェーのRF半導体ファブレスChipcon 、2011年には1959年創業という半導体業界の老舗であったNational Semiconductor(NS)を買収し、アナログ半導体のポートフォリオを広げることで売り上げを増加させ、ライバルの引き離しを図ってきた。

○打倒TI目指して東海岸と西海岸の企業が合併

これに対してADIは、東海岸のボストンに本拠を置くアナログ半導体の老舗で、TIがアナログ半導体に本格参入するはるか以前の1965年に創業した。A/Dコンバータ(ADC)やD/Aコンバータ(DAC)などのデータコンバータICで圧倒的な強みを発揮し、同社の稼ぎ頭となっている。このほかアンプ製品、無線周波数(RF)IC、マイクロ電子機械システム(MEMS)技術を利用したセンサ、DSPなどのアナログプロセッサなども手掛けている。

一方のLinearは、1981年にカリフォルニア州シリコンバレーに誕生したアナログ半導体専業で、これからはデジタル時代だと言われて多くのデジタル半導体企業が次々誕生した1980年代に、逆張り戦法で、デジタル時代になればなるほどアナログ半導体が成長するとの判断があたり、順調に業績を伸ばしてきた。売り上げよりも性能(ライバルにマネできず、値引交渉にも応じることなく売れる)や利益を重視し、業界でもっとも粗利の高い企業の1つとしても有名である。広範な標準高性能ICの設計および製造をてがけ、特に産業用パワーマネージメントICに強みを発揮している。バッテリーマネジメントICなどの車載半導体にも力を入れており、このため名古屋にも営業所を設置している。2011年には、ダストを空中にばらまくようにセンサ端末を広範囲に配置するワイヤレス・センサ・ネットワ―ク・システムおよびそのための半導体モジュール・ベンチャー企業の米Dust Networksを買収するなど、IoT時代の到来にも備えていた。

両社の製品は、補完関係にあり、今回の買収により、ADIのポートフォリオは大きく広がり、車載半導体向けやIoT向けなど将来有望なビジネスも手に入れることになる。

ADIは伝統的な(典型的な)東海岸の企業であり、地元のMIT(マサチューセッツ工科大学)はじめ、主にボストン地区の大学から人材や技術供給を受けて成長してきた。一方Linearは、自由な雰囲気のカリフォルニアのアナログ・グル―(オタク的な専門家)集団であり、2社のまったく異なる企業文化がうまく融合しシナジー効果を生むのか今後が注目される。

○アナログ半導体業界の再編は今後も続く

2015年の売上高26億ドル余りのADIが売上高が半分の規模(14億ドル余り)のLinearを買収することで、業界2位のInfineonを大きく上回る40ドル規模のアナログ半導体企業が誕生する。今回の買収は、トップであるTIに対抗するために行われたとはいえ、まだTIの売上高の5割に届かない。ADIは業績拡大のため、2015年秋にアナログ業界6位のMaxim Integratedの買収を試みたが、買収金額で折り合いがつかず不発に終わっている。その後、TIもライバルをさらに引き離すため、Maximを買収しようとしたが成功しなかった。アナログ半導体業界の生き残りを賭けた再編はさらに続きそうだ。

(服部毅)