7月22日から「ヤッさん〜築地発!おいしい事件簿〜」(テレビ東京系)がスタートした。


大人のための痛快エンターテイメントってなんだろう?


テレビ東京連続ドラマ枠「金曜8時のドラマ」のテーマは『大人のための痛快エンターテイメント』。“大人の”と言われると内容が難しかったり、ドロドロの不倫ものだったりするのかもしれないが、そこに“痛快エンターテイメント”と入ると一気に意味合いが変わってくる。

かっこいいおっさんまたはおばさんが出てきて、問題を解決する。ただそれだけのいわゆる人情劇になるのだ。過去の放送作品を見ると三匹のおっさん、保育探偵25時、釣りバカ日誌など。なるほど。『大人のための痛快エンターテイメント』だ。

キャスティングもまた『大人のための痛快エンターテイメント』にふさわしい。伊原剛志、柄本佑、里美浩太朗、板谷由夏とまったく浮かれた感じがしない。上地雄輔や山本舞香など若者人気を持っている役者もいるが、この二人も良い意味で現代っぽくない。年輩の方の眼に優しいキャスティングになっている。

これが逆に若者に刺さるような気もするし、全く刺さらない気もする。そこを踏まえて第一話をザっと振り返ってみたい。

若者はヤっさんの良さわかってくれるのだろうか?


主役は、伊原剛志が演じる宿無しでありながら食の達人という経歴不明の男・ヤっさんと、柄本佑演じる二年前に会社を辞めてそれ以降日雇いバイトで食いつなぐも結局は宿無しになってしまった青年タカオの宿無しコンビだ。若者が感情移入するとしたらヤっさんよりは、現代の若者の苦難の表現したタカオの方だろう。

無一文で路頭で行き倒れていたタカオは、同じ宿無しのヤっさんに出会う。しかしヤっさんは宿無し無一文ながら、食の知識を活かして築地と飲食店の橋渡しの様な仕事をこなし、その報酬に店の賄いを食べさせてもらうという“矜持”ある生き方をしていた。過去を語らない謎の生き様に魅せられたタカオは、弟子入りを志願。こうして名コンビが生まれた。

しかし、このヤっさんは気に入らない事があるとタカオの頭を叩く叩く。しかも地雷がまた特徴的な所にあるからめんどくさい。人情物の主人公としてはすばらしいが、ここら辺は現代の若者は理解が出来ない部分かもしれない。

グルメを自称する佐々木希って、何かを暗に示しているように感じてしまう…


そしてそこに突然現れたのはグルメライターのナカシマミキ(佐々木希)。一話のみのゲスト出演ということらしいが、急にポップな人が出てきてちょっとビックリする。

ナカシマミキはヤっさんに雑誌の企画に出演を依頼する。しかし、マスコミ嫌いのヤっさんはこれを拒否。しかたなく、タカオ一人に出演を依頼する。会社勤め時代に透明人間と呼ばれていたタカオは、初めて自分を必要としてもらい、これを承諾。

これがもとで事件が起きてしまう。ナカシマミキがタカオの発言を大袈裟に脚色し、ヤっさんがお世話になっている“都寿司”と“蕎麦屋はし田”を扱き下ろした批判記事に捏造してしまったのだ。

タカオはナカシマミキを問いただそうと出版社を訪れるも、不審者扱いで追い返されてしまう。この時のナカシマミキがまた、まぁむかつく。完全に悪者だ。

これに責任を感じたタカオはヤっさんの元を離れてしまう。そしてヤっさんは、弟子の敵討ちとばかりにナカシマミキがバースデイパーティを行っている青山の小洒落たレストランに潜入する。

ここからが痛快エンターテイメントの始まりだ。形ばかりに捉われたシェフの料理を断罪し、挙句の果てには自らが厨房に立ち、肉の焼き方を懇切丁寧に解説。去り際には「姉ちゃん、あんまり肩肘張って生きてっと、その綺麗な顔に皺が寄っちまうぞ」とナカシマミキを一蹴。

かっこいい。もはやルパン。ここまでダンディでベタなセリフは最近ではなかなかお眼にかかれない。若者からすると、逆に新鮮に感じるのではないだろうか?

お父さんと一緒に見ると仲良くなれるよ!


大人のためといっても、ストーリーはわかりやすい。金曜8時、一週間の仕事を終えたおじさんが、お酒を飲みながらゆっくりと見る。途中でトイレにも立つし、なんなら居眠りもしてしまう。少しくらい見逃してもなんとなく話がわかるように作られている。

良く言えばわかりやすい。悪く言えば単純。ヤっさんの謎の過去以外、伏線らしい伏線も見当たらない。ただぼーっと見ていても、クライマックスのヤっさんはべらぼうにかっこいい。こんなの大人じゃなくても楽しいに決まってる。だってみんな大好き勧善懲悪なのだから。

結論としては『大人の』とは言うものの誰が見てもわかりやすく楽しく作ってある。しかし、お洒落感はまるでないし、若者がヤっさんに憧れるかというと、それはちょっとわからない。

ただ、若者のみんなには、刺さるか刺さらないか、そんなことは抜きにして気楽に見てもらいたい。お父さんと話題がないという人は、一緒に見ればそれだけで親孝行になるかもしれない。そんなドラマだ。
(沢野奈津夫)