激励を受けるチーム成田(前列中央が成田選手、後列が左から打田さん、棟石さん、内田さん)

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■充実の専属スタッフが実現

リオデジャネイロ五輪パラリンピックに向けた壮行会ラッシュである。5大会目のパラリンピック出場となる水泳の成田真由美選手をサポートする『チーム成田』のスタッフを激励する会がこのほど、東京都内で開かれた。「感動です」と成田選手は約百人の出席者に感謝し、言葉に実感をこめた。

「このチーム成田として、一丸となってリオにいくことができることをすごく幸せだと思っています。だれひとり欠けても、いまの私はここに存在しないと思っています」

国際舞台で戦うためには、選手の才能や努力は当然として、それなりの環境も求められる。とくにパラリンピアンには、オリンピアンと異なる様々なサポートスタッフが必要だ。リオは遠くて危ない。過去4大会で15個の金メダルを獲得した実績や人間関係もあってだろう、45歳の成田選手には専属スタッフによる特別なチームが編成された。同選手には初めてのことだ。

2000年シドニーパラリンピック後からマネジャーを務める棟石理実さんほか、横浜のトレーナーの打田剛敏さん(朝香療術総合研究所)、福岡のドクターの内田泰彦さん(三愛健康リハビリテーション・内田病院院長)である。ボランティアで、地球の裏側のリオにいくことになった。

それぞれ、熱意と使命感を持つ。7年間のブランクを経て、昨年、現役復帰した成田選手は2008年北京大会以来のパラリンピックとなる。よくぞ、ここまで状態を戻した思う。気配りの棟石さんは「いろいろありましたから」と冗談口調でもらす。

「もう山あり谷ありで、いや谷あり谷あり谷あり谷ありで。(成田選手には)悔いのないように泳いでもらいたい。それだけです」

■「最大のパフォーマンスに必要」

トレーナーの打田さんは2012年ロンドン五輪ではボクシングの村田諒太選手らのサポートもした。とても誠実で謙虚。

「選手に最高の環境で最大のパフォーマンスを発揮してもらうのが一番の喜びです。成田さんが最大限、競技に集中できるようサポートしていきたい」

福岡から駆けつけたドクターの内田さんは2008年北京五輪のシンクロナイズドスイミングのチームドクターも務めたことがある。経験は豊富。天真爛漫。いつも明るい。

「本当は僕が何もしないで帰ってくるのがいいのでしょうが……。必要な時には、できる限りのことをするつもりです」

確かに、日本選手団スタッフとは別に、選手が専属スタッフを編成できるのは恵まれたことだ。だが、パラリンピック大会でよりよい結果を出すため、あるいは選手個人に合わせてやろうと突き詰めていけば、自ずとプライベートな専属スタッフのチームも編成されることになっていく。

五輪やパラリンピックのチーム編成には、アクレディテーションカード(資格認定証)の制限や予算などの問題がある。公認のチームスタッフと個人スタッフの関係は、議論の余地はあろう。どう選手の支援体制をつくるのか。ひとつの問題提起でもある。

成田選手は「すごい心強いですよ」と専属スタッフに感謝する。

「贅沢だとは思うんですけど、やっぱり最大のパフォーマンスを発揮するためには必要な人たちなんです。これから(専属スタッフづくりを)進めた方がいいのかどうかはともかく、選手が安心できる環境づくりとしては必要かなと感じています」

■悔いのない泳ぎを

経費については、この日の激励会に集まった人や支援団体などの寄付でおおくを賄っていく計画である。まさに応援する人々の善意の具現化といってもよい。その応援を力に変え、成田選手はリオに向かう。

北京パラリンピックで障がいによるクラスが変わって、リオパラリンピックも成田選手にとっては厳しい状況ではある。でも、闘志と挑戦意欲は衰えない。

「悔いのない泳ぎをしてきたい。決勝に残って、自分のベスト記録を出せたら、自分に対しては、一番の金メダルをあげられることになるのかなと思っています」

幾多の苦難を乗り越えてきた成田選手の真っすぐな泳ぎは見る人の心を揺さぶる。「チーム成田」の挑戦もまた、おそらくスポーツファンやトレーナー、ドクターたちの励みとなろう。人生は希望に満ち満ちている。

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松瀬 学(まつせ・まなぶ)●ノンフィクションライター。1960年、長崎県生まれ。早稲田大学ではラグビー部に所属。83年、同大卒業後、共同通信社に入社。運動部記者として、プロ野球、大相撲、オリンピックなどの取材を担当。96年から4年間はニューヨーク勤務。02年に同社退社後、ノンフィクション作家に。日本文藝家協会会員。著書に『汚れた金メダル』(文藝春秋)、『なぜ東京五輪招致は成功したのか?』(扶桑社新書)、『一流コーチのコトバ』(プレジデント社)、『新・スクラム』(東邦出版)など多数。2015年4月より、早稲田大学大学院修士課程に在学中。

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(松瀬 学=文)