就労状況にある女性の57%が非正規雇用という現代。非正規雇用のなかで多くの割合を占める派遣社員という働き方。自ら望んで正社員ではなく、非正規雇用を選んでいる場合もありますが、だいたいは正社員の職に就けなかったため仕方なくというケース。しかし、派遣社員のままずるずると30代、40代を迎えている女性も少なくありません。

出られるようで、出られない派遣スパイラル。派遣から正社員へとステップアップできずに、ずるずると職場を渡り歩いている「Tightrope walking(綱渡り)」ならぬ「Tightrope working」と言える派遣女子たち。「どうして正社員になれないのか」「派遣社員を選んでいるのか」を、彼女たちの証言から検証していこうと思います。

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今回は、都内で派遣社員をしている加藤千春さん(仮名・26歳)にお話を伺いました。一目で何かスポーツの経験があるように見える、がっちりとした筋肉質な体型に、やや不似合いな白いニットとシフォンスカートを履いていた千春さん。「結婚願望が強い」という千春さんに、どうして派遣で働いているのかを聞いてみました。

千春さんは関東圏にある女子大の栄養学科を卒業。リース会社に正社員として入社します。

「栄養学科って、卒業すれば栄養士の資格は貰えるんですよ。でも仕事にしたければ、国家試験の管理栄養士の資格が必要なので、そちらの道には進まずに就職活動をしました」

しかし、社会人生活には思いもよらない現実が待っていました。

「地方出身なので、距離感とかわからなくて。進学で上京したのですが、学校の場所が、東京ではなくて埼玉県だったんですよね。大学の近くに住んでいたのでずっとチャリ通だったのですが、毎朝の満員電車が辛くて」

思わぬ都会の洗礼を受けた千春さん。

「就職した際に引っ越したかったのですが、給与が安くて。通勤に1時間半かかるのがとにかく辛くて。一人暮らしなので家に帰っても誰もいないし、洗濯もご飯も自分で作らなければならないし。繁忙期は残業が月間40時間近くなるのもあり、2年で退社しました」

千春さんが派遣を始めたのは、意外なきっかけでした。

「友人が派遣で働いているのを知って。友達紹介キャンペーンみたいなので登録したら、私と友人に商品券が貰えるっていうのにつられて、軽い気持ちで登録に行きました」

まだ第二新卒位の年齢だった千春さん。若いために「未経験可」の求人を数多く紹介されたと言います。

「すぐに仕事が紹介されたので働き始めたのですが、オフィスもきれいだし、中小企業と違って大手はガツガツしていなくて社員も優しい。交通費が出ないのは痛いですが、必ず定時で上がれるし、すぐに派遣でいいやと思いました」

「大学デビュー」ならぬ、「派遣デビュー」という千春さん。

「大学がお嬢様校でもないし、偏差値が高いわけでもないし。田舎にあったので、他大とあまり交流もなかったし。中途半端だったんですよね。派遣で働くようになって、派遣先で優秀な男性社員とばかり出会えて。コーディネーターには、できる限り大手企業でと頼んでいます」

そんな千春さんが遭遇したのは、派遣先での待遇差だった。

「派遣社員の事を年配の男性社員が“女の子”って呼ぶんですよ。“そこの女の子に頼んでおいて”って。ここは責任ある仕事は任されないんだなって思いました」

営業事務の仕事は、男性社員とパートナーを組むことが多く、その相手との相性によって、仕事のやりやすさが変わったとか。

地元の友人から羨まれるような、有名企業へ派遣された千春さん。

派遣先で経験した、千春さんの価値観を変えるような出来事とは!? その2に続きます。