電波の届かない環境でもロボットを安定して遠隔制御できる中継技術。NICTとAISTが開発

写真拡大

情報通信研究機構(以下NICT)と産業技術総合開発機構(以下AIST)は、電波の届かない環境にあるロボットを遠隔操作するための中継技術を開発したと発表しました。

遠隔制御で動くロボットが制御用電波の届かない位置にいるとき、中継局を搭載したロボットを間に介在させることで、安定した操作とモニター情報の伝送を実現する手法。

中継局の移動によって中継経路が頻繁に切り替わる場合でも通信が途切れない、安定した制御通信回線の確保を念頭に開発中で、災害などによる緊急対応といった条件での実用的な運用が期待されます。内閣府 革新的研究開発推進プログラム(ImPACT)の一環としてNICTとAISTが取り組んでいるプロジェクトの成果のひとつ。免許不要で利用できる帯域(ISMバンド)を利用し、"ロボットの制御に特化した中継伝送"の実現を目指しており、応答遅延時間の短縮と信号同士の不干渉を両立させた通信手順の開発を進めています。

今回の発表では、遠隔制御信号が空中に浮かぶドローンに搭載した中継局を経由し、制御範囲外にある小型四輪ロボットの安定した遠隔制御が可能になったことを実証しています。"制御信号の中継経路が頻繁に切り替わる"条件において、通信を切断させずに安定かつ継続した操作とモニタリングを実現した例は「世界でもまだない」とのこと。

建物や森林、地形などに電波が遮られ、通信が途絶える条件において安定した通信を行うためには、制御端末とロボットの間に中継局を介在させることが必要です。しかし従来の技術では一般向けの無線LAN技術のみを流用していたために、中継経路が切り替わる度に通信が切断されてしまい、度々遠隔制御が停止する問題を抱えていました。

また、一般向けの無線LANは無線局免許が不要でコストが安い2.4GHz帯の電波を採用しているために、PCや家電などからの混信と、障害物による減衰を受けやすい点も課題となっています。

本技術では、制御信号の発信側と中継局、中継局同士、中継局からロボットの各経路において、通信信号のやりとりをする時間のタイミングを予め割り振る『時分割多元接続』(Time Division Multiple-Access、TDMA)を採用しています。

かなりざっくり説明すると、本技術では無線の送信信号がすべての中継局、受信機に対して同時に送信される性質を活用しており、ロボットの操作および制御信号が複数の中継経路を通ることでデータが冗長性を持ち、受信側では受信したすべての信号の中から最も強い信号のみを受け取るよう手順を単純化することで、遠隔地のロボットを途切れなく制御することが可能となっています。

また、今回実証実験で使用された無線伝送装置では、一般的な無線LANで使用される2.4GHz帯よりも遠くに電波を飛ばせる920MHz帯を使用しています。920MHz帯は相互に干渉しないよう電波を共用するための規格が定められ、混信のリスクが小さい点も特徴。

今後の展望としては、バックアップ用に920MHz帯より遠くまで電波を伝送できるVHF帯(300MHz以下)を追加した無線装置に拡張する予定。将来的には、複数のロボットやドローンが相互に協調しながら安定性の高い無線ネットワークを構築するための基盤となることを期待するとのことです。

移動可能な複数の中継局を用いたネットワークの構築は、ネットワークインフラが破損している可能性のある有事の際に重要な技術です。

実用化までにはコストや安定性、あるいは電源の確保など様々な課題をクリアする必要がありますが、いつか無事に実用化されたあかつきには、大規模な災害時でも安定した通信手段が確保できる可能性があります。