小学校の風景が大きく変わりつつある

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『ドラえもん』や『サザエさん』、『ちびまる子ちゃん』といった人気アニメを見ると、変わらぬ小学校の姿に中高年層は安堵感を覚えるかもしれないが、現実には教育現場にも大きな時代の波は押し寄せている。例えば学校から存在そのものが消えつつあるのが、「和式トイレ」だ。

「和式トイレの使い方を知らない子供が増え、金隠しの方にお尻を向けてしまう子供が出てきています。だから、間違えてパッとドアを開けると、しゃがんだ状態でこっちを向いている(笑い)。洋式の便座トイレが主流になり、男子でも上から覗かれないような、ほぼ完全個室に変わりつつある。新築の小学校の校舎はほぼそうですね」(教育評論家・石川幸夫氏)

 さらには男子トイレに小便器のある学校も少なくなってきているという。

「男子の場合、小便器と個室があると大便をしていることがすぐにわかってしまうので、学校で大便をしない子供が増えている。大便をすると『臭い』とか『汚い』といっていじめの対象になるからです。だから、学校から家に帰ると一目散にトイレに駆け込む男子は多いんです」(石川氏)

 学校に行って体を壊さないか心配になってしまうのは確かだ。健康といえば、逆に新しく生まれてきたのが給食の「特別食」だ。

「昔の給食といえば、何の疑いもなく、みんなでまったく同じ料理を一緒に食べていた。ところがいまはアレルギーを抱える子供が増えてきたのでそうはいきません。『この子は何のアレルギーか』を担任が把握し、給食ではそのアレルゲンを除去した『特別食』を用意しなければならなくなっている」(大阪府・元小学校校長)

 学校や担任の負担は大きいが、最悪の場合、ショック死も考えられるだけに避けては通れないという。昔はどの小学校にも動物の飼育小屋があり、鳥やウサギ、ヤギなどを飼っていた。餌をやる飼育当番は、子供にとって動物と直接触れる大切な機会だったはずだが、いつの間にか飼育小屋は姿を消しつつある。

「これもさまざまなアレルギーを持つ子供が増えたからです。私がいた学校ではカモを飼っていましたが、鳥アレルギーの子供が入学してきたのを受けて、飼育をやめました」(兵庫県・元小学校教諭)

 アレルギーの問題だけでなく、「餌やりのためだけに子供を夏休み中も学校に通わせるのか」という親のクレームも影響しているそうだ。「鳥インフルエンザが流行したため、鳥の飼育を中止した」(福島県の小学校校長)という学校もあるという。飼育小屋とともに、グラウンドの片隅にあったはずの砂場も見かけなくなった。理由は「犬や猫がフンをして、大腸菌が増殖する」という衛生上の問題である。

「学校によっては残っているところもあるようですが、ほとんど使わなかったり、放課後はビニールシートが被せてあります」(東京都・PTA顧問)

「消えた理由」はそれぞれあるようだが、これでは学校がますます息苦しくなりそうだ。教育評論家・小宮山博仁氏は、最近の小学校は地域によるが、閉ざされていく傾向があると指摘する。

「2001年に大阪教育大学附属池田小学校で起きた不幸な無差別殺傷事件が引き金になり、セキュリティが異常に強化されるようになった。再び同様の事件が起きれば、教師や教育委員会の責任問題になるからです。そのためセキュリティが厳しくなり、地域住民が学校に協力したいと思っても、できなくなっている」

 時代の移り変わりには抗しがたいものがある。だが、小学校から消えてしまった“日本の風物詩”に、思いを馳せたくなる人も多いのではあるまいか。

※週刊ポスト2016年8月5日号