強い夏の太陽が照りつける日があるかと思えば、曇り空で気温が低いわりに、じめじめと湿度だけが高い日もあったりと。今年の夏は、体調管理が難しいと感じる方も多いのではないでしょうか。折しも本日からは、二十四節気「大暑」の次候・七十二候「土潤溽暑〜つち うるおうてむしあつし〜」に。気温、湿度ともに上昇するころ、一年で最も過ごしづらい時季かもしれません。


「溽暑(じょくしょ)」とは、湿度の高い蒸し暑さという意味

梅雨の湿気を帯びた大地に、強い陽射しが照りつけるころ。暑気が土中の水分を蒸発させ、草むらからはむっとするような夏の匂いがたちこめてきます…
今年も七十二候の第三十五候「土潤溽暑〜つち うるおうてむしあつし〜」が巡ってきました。
「溽暑(じょくしょ)」とは何ぞやと辞書を紐解いてみれば、湿気の多い暑さ。蒸し暑いこと。
「溽熱(じょくねつ)」とは、蒸し暑さのことをいいます。
このところ、じっとしていても、じんわりと汗がにじんでくるような暑さです。梅雨明けが遅れ気温が比較的低い関東地方でも、少し動けば高い湿度に汗が出て、その汗が体をひやりと冷やします。また、薄曇りで風もなく、じりじりと日が照って暑いことを「油照り(あぶらてり)」といい、体の内も外も暑気と湿邪で満ち、不快指数が増していきます。からりと晴れわたった炎天より、曇天の日のじめっとした空気の重さがまとわりつくような蒸し暑さが、なんだか体にはこたえるものですね。
さて、低めの気温が続いた関東地方も、そろそろ暑さがぶり返してくるとか。連日30度以上の真夏日が予想されていますので、どうぞ急激に増す暑さにお気をつけください。


湿った空気にほのかな香りを漂わせ、夏の夕暮れどきから咲く花・オシロイバナ

そんな湿り気を帯びた暑さの中で、夏の花々がわたしたちを元気づけてくれるように艶やかな色合いを競い花開いています。
さるすべり、芙蓉、カンナ、夾竹桃、昼顔、むくげ、ゼニアオイ、クチナシ、松葉ボタン……
そのなかでも、夕暮れどきから花開く「オシロイバナ」は、幼いころの夏の記憶とともに咲く花。
夕立後のしめった空気に漂ってくるほのかな香りは、懐かしい夏の思い出と重なります。直径3cmほどの小さい花をつける草花・オシロイバナは、別名ユウゲショウ(夕化粧)、ミラビリス。花の色はピンク、白、黄色、紅と白、紅と黄の染め分けになった株もあり、江戸時代に日本に渡来したといわれています。
午後遅い時間に花が開き、翌朝の9時過ぎにはしぼんでしまうオシロイバナは、一夜限りの「一日花」。けれど開花期は次々と新しい花を咲かせ、みずみずしい可憐さで見る者の心を潤ませてくれます。
花を咲かせた後できる、大きなホクロを思わせる黒い実。この実を割ると中に白粉を思わせる白い胚乳が詰まっています。この白い粉を採取してほほに塗ってみたり、ピンク色の花で爪を染めてみたり。そんなたわいない遊びができたのも、オシロイバナがより身近な夏の花と感じられる理由でしょうか。
英名「フォー・オクロック(Four O'clock)」は、夕方頃に開花するから。中国名「吃飯花(チーフカンフォア)」は、夕食の時刻に咲く花と言う意味。実の中の白粉に由来する日本名には、そこはかとない情緒と色香を感じますね。
ちなみにオシロイバナの根や種には、毒性があるとのこと。誤食すると嘔吐や腹痛、下痢を発症する危険性もありますので、お子様が口に入れてしまわないよう、くれぐれもご注意を。


湿度高く蒸し暑い日本の夜、ぞくぞくと涼を呼ぶ風物詩「怪談」

熱帯夜が続くと、ついつい睡眠不足になり、暑さにけだるい昼間はついうとうととしてしまう夏。
夢かうつつか定まりにくくなるためか、お盆の時季と重なるためか、異界との境界線もすこぉし広がってくるようです。
湿度で重く寝苦しい暑さの夜、背筋をひんやりさせる「怪談」を楽しむのも日本の夏の宵の風物詩のひとつ。
四谷怪談、皿屋敷、牡丹燈籠、雨月物語、怪談乳房榎、真景累ヶ淵……文学で、落語や講談で、歌舞伎でおなじみの怪談は数知れず。
キモ試しや百物語なども、花火と並ぶ夏の夜の楽しみ方といえますね。
各地で納涼・怪談イベントも多く開催されるこの時季、奈良の世界遺産「元興寺(がんごうじ)」でも、7月29〜31日と8月5〜7日の全6日にわたり、毎年好評な『真夏の怪談』が行われるそうです。
そもそもこの「元興寺」。飛鳥時代に「がごぜ」「元興寺の鬼」などと呼ばれる妖怪が現れたと『日本霊異記』などの文献で伝えられる古刹。通常は非公開の「禅室」(国宝)が会場になるうえ、開演前には本堂の夜間特別拝観も叶うことでも人気を呼んでいるそうです。妖怪にゆかりあるお寺の真っ暗な空間で語られる怪談噺は、さぞかしぞくぞくする非日常体験となることでしょう。

じめじめと暑い「土潤溽暑〜つち うるおうてむしあつし〜」のころ、30日には土用の丑の日を迎えます。どうか滋養ある食をとり、少しでも体をいたわってお過ごしくださいますように。