クローン羊は、いまでも元気に生きている

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有名な世界初のクローン羊「ドリー」は若くして病気にかかり、6歳で安楽死させられた。この件から「クローン=健康に異常をもたらす」と考えられがちだが、ドリーと同じ体細胞を使って2007年に誕生したクローン羊4匹は、9歳になったいまでも健康に生きているという。

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2/4「ほとんどの羊で1〜2カ所の関節に軽い変形性関節炎の徴候が見られたが、脚が不自由なものはなく、治療を必要とするものもいなかった」と論文では説明されている。
PHOTOGRAPH COURTESY OF UNIVERSITY OF NOTTINGHAM

3/4羊たちは、MRIスキャンも含めて徹底的に研究される。
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いまから20年前の1996年7月、世界初の哺乳類の体細胞クローンである「ドリー」が誕生し、世界中で大きな話題となった。

ドリーは、2003年に早すぎる死を迎えた。進行性の肺疾患を発症したため、6歳と半年あまりで安楽死させられたのだ(羊の寿命は10〜12歳程度とされる)。年齢にしては早すぎる関節炎にもかかっており、クローンであることが原因だったかどうかについての論争を巻き起こした。

ドリーは、6歳の雌羊の乳腺細胞からのクローニングによって誕生した。そして2007年には、ドリーのクローニングで使われたものと同じ乳腺細胞株から、新たに4頭の羊がつくり出された。

すべてがフィン・ドーセット種の雌である羊4頭(デビー、デニス、ダイアナ、デイジーと名づけられた)は現在9歳だが、それぞれ大きな問題もなく年を重ねており、ドリーが患った変形性関節炎の徴候はわずかに見られる程度だ。

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これら4頭を含めた13頭のクローン羊について、国際的な生物学者チームが医学的な調査を行い、その結果が『Nature Communications』誌に発表された

「高齢にもかかわらず、クローン羊たちの血糖値やインスリン感受性は適切で、血圧も正常であった。X線撮影によると、ほとんどの羊で1〜2カ所の関節に軽い変形性関節炎の徴候が見られるが、脚が不自由なものはなく、治療を必要とするものもいなかった」。今回の論文でそう述べられている。

「(研究で用いた)同一の胚集団は、着床し、誕生を迎え、子孫はその後の8〜10年間正常に年齢を重ね、どれも健康です」と論文の主執筆者であるノッティンガム大学のケヴィン・シンクレア教授は言う。

4頭の羊たちは、これまでも徹底的な科学的検査を受けてきたが、これから最終的な検査を細胞レヴェルで受けることになる。「わたしたちは現在、『終わりのポイント』を見定めているところです」とシンクレア教授は言う。

「わたしたちは動物たちを、思いやりのある、管理された方法で安楽死させる予定です。それにより、検死分析や病理検査、組織病理検査を行い、さまざまな組織や臓器から細胞を収集することができます。それによって詳細な分子レヴェルの研究を開始できるのです」