あの「料理の鉄人」で名をはせた北見博幸氏が2016年4月にオープンし、話題を集めている。伝説の『バスタ・パスタ』で料理長を務めた後、自身の店『トラットリア ミキータ』経て、『ピアット キタミ』を開いたのだ。

料理の臨場感が伝わるオープンキッチンで味わえる伝説のシェフのイタリアン!期待に胸を膨らませて訪れてみようではないか。



はにかんだような笑顔にファン多し! 優しそうなのだが実は空手は黒帯、プロボクサーだったことも!
伝説の店の料理長、北見シェフ

『バスタ・パスタ』といえば1980年代の“東京のイタリアン”界で超が3つ付くくらいの人気店。初代のシェフはかの山田宏巳氏。2代目料理長を務めた北見シェフのパスタはとりわけ独創的で、彼が作った桃の冷製パスタは多くの食通の舌を虜にしたものだった。

伝説のグルメ番組「料理の鉄人」や、「チューボーですよ」など、数多くのメディアに出演し、1999年、自身の店『トラットリア ミキータ』を青山に開く。2004年には2号店を代官山に、2013年に本店を青山から銀座に移転し『MIKITA 銀座』として再オープン。

そして2016年4月、虎の門に料理人人生の集大成とするべく『ピアット キタミ』を作った。あのパスタがまた食べられるのか!と思うと否応なしに心が躍る。



オレンジの香りは口に入れて初めて気がつくほど。繊細かつ大胆な北見シェフにしか作れない「ペスカトーレ」
ひと味もふた味も違う絶品「ペスカトーレ」に悶絶!

この日は「スパゲッティペスカトーレ」を出してくれた。オマール、ずわい蟹、アワビ、ハマグリ、紋甲イカと、まさに海の幸のオンパレード。1,6mmのスパゲッティにトマトソースがよく絡む。

少しの辛みと魚介の出汁の旨み、トマトの甘み、そしてそれらを覆うようにオレンジの香りが包む。決してオレンジが主張するわけではなく、あくまでほんのりと爽やかさを感じるのが心地よい。なんだかクセになる味で次々と巻いてしまう。

ぷっくりとしたハマグリを口に入れると、ギュギュギュッと凝縮した独特の旨みが広がる。オマールはやわらかく、アワビはコリコリ、イカのしっとりとした弾力を楽しめる。これぞ名人芸!と言いたくなる絶品パスタだ。



暑い季節は冷製のパンナコッタとスパークリングからスタート。クールダウンして食欲も増してくる
スパークリングと合わせたい人気の前菜「豆乳のパンナコッタ イクラ添え」

前菜で人気なのが「豆乳のパンナコッタ」。旬のものを使い、味を変えて提供している。この日は枝豆。ざっくりとミキサーにかけ、豆のツブツブを残してあるので食感が面白い。

「豆をやわらかく煮るんですよ。そうしないとなめらかな豆乳と合わない。」と北見シェフ。

器の下の方からすくって豆乳、枝豆、イクラ、全部の味を一緒に食べる。豆の匂いとイクラの塩味の織りなすハーモニーにシェフのセンスがキラリと光る。冷たい喉越しはこの季節には最高の前菜だ。


メインの肉料理は、牛フィレのタリアータ!



「牛フィレ肉のタリアータ」。旬の食材を使った逸品
甘酸っぱいソースが秀逸! 「牛フィレのタリアータ いちじくの赤ワインソース」

「肉は最近やっと上手になってきた。」となかなか笑わせてくれるシェフ。人肌より少し温かいくらいの低温調理した牛フィレはやわらかくて肉の味わいが際立つ完璧な火入れ。サシが強い肉はあまり使わないと言うように脂はほとんどなく肉本来の旨みがダイレクトに伝わってくる。

甘酸っぱく赤ワインといちじくを煮詰めたソースがこのフィレにはぴったり! 「ペスカトーレ」といい、香り付けにフルーツを使うのが本当に上手。「まだ子供なんでフルーツ好き!」とカウンター越しにお茶目なことを言うのだが、『バスタ・パスタ』時代からシェフの店に通い続ける40歳台が中心という客層を考えた料理なのだ。



見よ! この美味しそうな肉質を! 脂はほとんどないのにとろけてしまう

トッピングも灰汁が少なく水分の多い水茄子を使うことで油通ししたりしなくて済むし、素材の持つ自然な甘さを生かした味付けで一皿ペロリといけてしまう、身体に優しい料理なのだ。だからずっと通い続けてしまうのであろう。

“客が客を呼んできてくれる最も理想の形”になっていると言うが、食べる側の気持ちを一番に考えているシェフの料理にファンが増えていくのは至極当然のことである。



落ち着いた雰囲気と居心地の良さでつい長居をしてしまう
試作はしない! 天才肌シェフのライブ感あふれる料理

それにしても食材の合わせ方が本当に素晴らしいのだが、どうやってメニューを決めているのだろうか? シェフにぶつけてみると「試作なんてしませんよ。だって仕入れによって今ある食材が変わるのでぶっつけ本番です。」と言う。

メニューはあるが、客や気温に合わせて内容を変えてしまうそうだ。自分の好きな物を作っているだけと言うが、よほど引き出しがないとできないことである。さすが百戦錬磨のベテランシェフ、テーブル席も良いがそんな天才肌のシェフが作るのを見ながら料理を待つカウンターが楽しい。

「食事と言う文字は“人”を“良”くする“事”と書くでしょう? 美味しい食事は人を豊かにし幸せにしてくれる。お客さま同士の美味しかった、また来ようねという会話が1番嬉しい。」というシェフの言葉が忘れられない。美味しかった、また来よう。



この階段を降りれば幸せにする料理が待っている。うっかりすると見落としてしまうので要注意