プチ整形の流行もあり、いまや美容整形は身近なものになりつつあります。

ところが国民生活センターの発表によると、美容医療(美容整形)の相談件数は年々増加傾向にあります。

手術後に後悔しないためにも、「その手術が本当に必要なのか」「さまざまなリスクを抱える覚悟はあるのか」などを充分に考え、自分自身に問いたださなくてはいけません。

しかし、なぜ美容整形の事件が発生するのでしょうか? 美容整形の系譜とともに追ってみます。

■美容整形の経験者は18〜38歳で11%

美容整形が本格的に普及していったのは、第二次世界大戦以降とされています。

野中邦子の訳書『プラスチック・ビューテイー 美容整形の文化史(エリザベス・ハイケン、平凡社 1999年5月)』では、体の負傷を負った部位を治療することからはじまったとされています。

その後、外見に劣等感を感じている部位を治すことが一般化され、現在では美容目的の外科的措置が行われるようになっています。

また、クロス・マーケティング社が2010年に行った調査(調査対象は18〜39歳)には、美容整形をしたことのある人は11%いたという結果があります。

しかし実際には、アンチエイジングのニーズが高まる40歳〜50歳の層のデータや、プチ整形などが含まれていないため、実際にはもっと多いことが予想されます。

本調査に対して高須クリニックの高須幹弥医師は、クリニックの概況と比較したうえで「日本人女性で、一生涯のうちに美容整形を受ける人の割合を予想すると、だいたい30〜40%くらいになるのではないかと思います」と回答しています。

■美容整形の市場規模は2500億円ぐらい

では、美容整形の市場規模はどの程度になるのでしょうか。

美容外科専門の診療所および美容外科をもつ総合病院を合わせた美容整形市場には、現在1,000以上が存在するといわれています。自由診療による利益率の高さもあり、市場ニーズは拡大傾向です。

広告費が売上高の40〜50%を占める事業特性や昨今のニーズの高まりを考えると、2,500億円程度の市場規模ではないかと推測できます。

さらには推測の域を出ないものの、日本においても、一生涯のうちに美容整形を受ける人の割合を予想すると、30〜40%という数値はひとつの目安になるのではないかと考えられます。

参考までに、美容整形大国と称される韓国のデータもご紹介します。

中国の新華社通信は、韓国メディアの報道を引用し、韓国の製薬会社が行った調査の結果として、韓国では女性の約6割が自分の容姿に不満を抱いており、4割を超える女性が美容整形の手術を受けたことがあると回答したことを紹介しています(2016年3月7日)。

調査結果では、美容整形を受けたことがあると回答した韓国人女性は42%に達し、「まだ手術は受けていないが、将来的に受けたいと考えている」と回答した女性も同じく42%います。

韓国では女性の美容整形手術がごく身近にあり、あまり抵抗なく手術を受けている実態が観察できます。

■美容整形する前に留意すべき2つのリスク

少し話がずれますが、美容整形にはいくつかのリスクが存在します。これは大きく分けて2つの分類することができます。それは「手術のリスク」と、「誹謗中傷のリスク」。

(1)手術のリスク

鼻を高くする隆鼻法は人気のある手術です。シリコンでできたプロテーゼを挿入するものですが、平均手術30〜40万円で受けることが可能です。

しかし、挿入したプロテーゼが鼻の先端を飛び出てしまったり、鼻の組織が壊死するなどの術後のリスクがついてまわります。

多くの場合、定期的なプロテーゼの交換が必要になります。定期的な交換が必要である以上、一度手術に踏み切ったら相応のコストが掛かることを覚悟しなければいけません。

アゴを切る輪郭整形も人気の高い手術です。他の手術とは異なり、コストが100万円以上かかる場合もあり大がかりです。全身麻酔、入院等の設備はもちろんのこと、専用骨切り器等高級機器が必要なため、お手軽ではありません。

他にも、涙袋を膨らませたり、しわを薄くするヒアルロン酸注射、切らない二重などは、お試し感覚のプチ整形といわれていますが、術後不良を起こすなどの症例も明らかになっています。

(2)誹謗中傷のリスク

次に、ネット等での誹謗中傷を考えなくてはいけません。ネットで芸能人の名前を検索すると、次に出てくる関連キーワードが「整形」です。一般的に、整形がネガティブなイメージでとらえられていることがわかります。

メディアにおける、芸能人と美容整形をはじめとした話題は、基本的にタブーです。しかしネットを見れば、芸能人を誹謗中傷する記事の多さに気づくでしょう。

日本に匿名のブログや掲示板が多いことの弊害でもありますが、一般人でも、ネットによる誹謗中傷のリスクは考えなくてはいけません。

■なぜ美容整形トラブルが増え続けているのか

美容整形が原因とされる後遺症のケースは、数多く見られています。

しかし後遺症は判断が難しく、医者と患者の間で判断が食い違うことも多いため、裁判を起こしても賠償請求を勝ち取ることは困難といわれています。

まず、被害者が裁判の場で美容整形の失敗について提訴しにくい点があります。さらに裁判の場で、コンプレックスの箇所について指摘をされることは精神的にも楽ではありません。

次に、美容整形の場合は、医療事故などと比較して賠償額が少ない点が挙げられます。勝訴したとしても、裁判費用や弁護士費用、かかる時間等を考えれば、効率的とはいえないのです。

慰謝料についても、「外貌醜状」と認められるのが難しいという問題もあります。外貌醜状とは、頭、顔、首などに、人目につく程度以上の傷痕が残ることをいいます。

たとえば、顔であれば10円玉以上の大きさ、3cm以上の線状痕、手足では露出面に手のひら大の醜い痕を残すものとされています。

ただし、人目につくことが前提なので、人目につかなければ後遺障害と認められない場合がほとんどなのです。

美容整形にはリスクがあり、自己責任が発生することを理解しなければいけません。

お手軽さが進む一方で、依然としてリスクが小さくない美容整形。手術後に後悔しないためにも、「その手術が本当に必要なのか」「さまざまなリスクを抱える覚悟はあるのか」、充分に考えて自分自身に問いたださなくてはいけないでしょう。

(文/コラムニスト・尾藤克之)