【トラベル体験記】赤・白・ビオから松ヤニまで?ギリシャで満喫ワイン旅行!

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ギリシャと聞いて、まず思い浮かぶのはエーゲ海に浮かぶ島々や真っ白な壁の建物、オリーブオイルやヘルシーな地中海式料理。しかし、ギリシャ人はワインにも造詣が深いのです。今回は産地を回ってわかった、知られざるギリシャワインの魅力をご紹介します!

ワインを楽しむために、覚えておくべき基本はなに?

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ギリシャは世界第16位(2015年度の統計)のワイン生産国で、フランスのボルドー地方の約半分の量を生産しています。ワイナリー数は900以上。意外と多いですね。

また、生産されるワインの2/3は白ワイン。全生産量の90%が在来ブドウ品種(150種以上)から造られています。

ギリシャワインを理解するポイントは、在来ブドウ品種を理解すること。とはいえ、150以上の在来ブドウ品種を覚えるのは無理!しかも、ギリシャ語の綴りは独特で読めない!
でも大丈夫。ギリシャワインのエチケットにはブドウ品種名と産地名が英語表記されることも多いので、重要な品種名とその主要産地名を覚えるだけで問題ありません。

 

覚えておきたい「白ワイン用ブドウ」(品種 ― 産地)

ASSYRTIKO(アシルティコ) ― PDO SANTORINI(サントリーニ島)MOSCHOFILERO(モスホフィレロ) ― PDO MANTINEIA(マンティニア)RODITIS(ロディティス) ― PDO PATRAS(パトラス)SAVATIANO(サヴァティアノ) ― ATTICA(アッティカ県)

覚えておきたい【赤ワイン用ブドウ】(品種 ― 産地)

AGIORGITIKO(アギオルギティコ) ― PDO NEMEA(ネメア)XINOMAVRO(クシノマヴロ) ― PDO NAOUSSA / PDO AMYNTEO(ナウサ/アミンティオ)

サントリーニ島で、名物ワインと景色を堪能

白ワインの重要産地 ―サントリーニ島

サントリーニ島は、栽培環境(テロワール)、固有のブドウ品種、ワインの独自性において、非常に優れたワイン生産地。ギリシャ最古のブドウ園はサントリーニ島に3500年前から存在すると言われています。

greece02 サントリーニ島のブドウ畑

 

サントリーニ島の土壌は、紀元前1650年頃に大噴火した火山がもたらした火山灰、火山性溶岩、多孔性の軽石、石灰岩など。

有機成分を含まない非常に貧しい土壌ですが、ブドウ栽培には最適で、ブドウの最大の敵である害虫フィロキセラ(ブドウネアブラムシ)も寄せ付けません。フィロキセラがいないため、自根で数百歳という樹もあるとか!?

 

greece03 バスケットの形の株仕立て

もうひとつ特筆すべきことは、ユニークなブドウ樹の仕立て方です。

サントリーニ島では風が強く、また陽射しも強いため、ブドウの枝を地面の上にグルグルと巻きながらバスケットのように整え、その中にブドウの房を入れるようにして、風と直射日光、夏の高温から守ります。

 

greece04 樹齢100年クラスの大きなバスケット

 

現地生産者はこのバスケットのことを「クルーラー」とも呼んでいました。某ドーナツチェーン店に●●●●クルーラーという商品がありますが、まさにその形です。

 

greece05 人が中に入れるほど大きくなったブドウの樹

 

ギリシャの観光写真でよく見られる、真っ白な外壁の建物や海の美しい風景は、サントリーニ島でよく見られます。有名なサンセットポイントや遺跡があり、著名レストランも多く集まるギリシャ随一の観光地サントリーニ島は、ぜひ訪れてほしい場所。

 

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サントリーニ島では、“アシルティコ”という白ブドウ品種から白ワインが造られています。柑橘、青リンゴ、桃、アンズ、ハチミツなどのアロマとミネラル感、キリリとしたフレッシュな酸味が特徴で、アルコールが高く、しっかりしたボディのワイン。繊細なもの、軽快なもの、樽熟成した長期熟成タイプなど、多彩なワインが造られています。

 

greece07 サントリーニ島の生産者の皆さん

 

アシルティコには、“Nikteriニキテリ”とラベルに表記された特別なワインも。

気温が下がる夜にブドウを収穫し(ナイトハーベスト)、夜中に醸造を行ないます。こうして造るニキテリは、通常のアシルティコのワインよりもアルコール度数が高いものになるそう。

 

greece09 ニキテリのワイン

ちなみに、Nikteriはnight workという意味。なるほど!

白ワインはシーフード料理と相性◎!

海に囲まれたサントリーニ島のレストランでシーフード料理を楽しむなら、アシリティコの白ワインは欠かせません。より手をかけて仕込んでいるニキテリなら、洗練されたレストランの上等な料理に合わせても良さそうです。価格はややお高めですが、料理との相性はバツグン!

 

greece08 サントリーニ島といえば、アシルティコの白ワイン

 

サントリーニ島でもうひとつ忘れてはならないのが、天然甘口ワインのPDO Vinsanto(ヴィンサント)です。名前はラテン語のVini di Santorini、つまり、サントリーニのワインという意味から来ています。

 

greece10 サントリーニ島のVinsanto

 

ヴィンサントとは、太陽で2週間ほど日干ししたブドウ(主にアシルティコ)から造られ、ハチミツや甘いスパイスの香り、コーヒーのニュアンスなどがある、琥珀色をした甘美なワイン。そのままデザートワインとして飲んだり、クレーム・ブリュレなどのデザートに合わせて楽しみます。

イタリアにもVin Santo(ヴィンサント)というよく似た名前の甘口ワインがありますが、本家はサントリーニ!と、サントリーニ島のワイン生産者は言っていました。

 

greece11 若い女性も多いサントリーニ島のワイン生産者

松ヤニを使う?伝統ワイン"レッツィーナ"を飲み比べ!

まだあるギリシャの白ワイン

 

 

greece12 多彩なギリシャの白ワイン

 

“モスホフィレロ”
ギリシャ本土南部のペロポネソス半島にあるPDOマンティニアという生産地が有名です。標高650mを超える高地で、日照はしっかりありますが、気候は冷涼です。夜間は気温が下がり、風の影響で湿度が低いため、ブドウ栽培に最適な環境。
モスホフィエロの果皮はピンク色で、辛口やセミドライのスティルワイン、スパークリングワインになります。花のアロマが豊かで、新鮮で特徴的な酸と、あまり高くならないアルコール度数が特徴です。

“ロディティス”
ペロポネソス半島北西部のPDOパトラスでは、辛口白ワインに仕立てられます。ピンク色の果皮のブドウで、標高の高い場所で栽培され、レモンの風味、熟成したメロン、ハチミツなどの強い香りと風味のある、爽やかなワインになります。

“サヴァティアノ”
昔は素晴らしい品種だと思われていませんでしたが、今は生産者が力を入れ、優雅で高品質なワインが造られています。フルーツの香りが強く、酸はあまり高くなく、果実味が濃厚です。複雑味はそれほどないものの、ジューシーでバランスの取れた白ワインになります。アテネの近郊のアッティカ県などで多く栽培されています。

ギリシャを代表する赤ワイン

 

 

“アギオルギティコ”
メルロと比較される品種です。色の濃いブドウができやすく、ワインも色濃くなる傾向があります。赤い果実や黒いフルーツの風味があり、飲みやすく、やわらかでソフトな軽いタイプから、長期熟成タイプまで、幅広いワインになります。主要産地はペロポネソス半島東部のネメア。標高200mから900mの高地に畑が広がり、それぞれの標高で個性あるワインが造られています。

“クシノマヴロ”
イタリアのネビオロと比較される品種で、色はそれほど濃くなく、酸が高く、タンニンが豊富です。ワインは複雑味を帯び、長熟の可能性があります。ギリシャのワイン産地で最も冷涼な北部アミンティオと、アミンティオに近いけれど、やや暖かいナウサが有名です。

ギリシャワインの伝統と言えば……

 

greece15 レッツィーナを飲み比べ

 

古くからギリシャワインを知る人には、ギリシャワインというと、松ヤニの風味のする“レッツィーナ”を思い浮かべるのではないでしょうか?

500年前(16世紀)、ワインの劣化を防ぐため、ワインを入れた甕(アンフォラ)を松ヤニで封をしたことがレッツイーナの始まりだとか。樹皮から取り出した当初の松ヤニはベタベタしていますが、乾くと固くなります。ちなみに、日本の松とは違う種類だそう。

現代のレッツィーナの造り方は、サヴァティアノやロディティスから造ったワイン1トンに1kgまでの松ヤニを布袋に入れ、アンフォラの蓋の穴に袋の紐を引っ掛けてワインに浸し、香りを移します。浸す期間は生産者によりますが、紹介してくれたワイナリーでは2週間ほどでした。松ヤニはワインには溶けません。

 

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ワインから引き上げた昨年の松ヤニ袋(彼らはティーバッグと呼んでいました)を見せてもらいましたが、蜜蝋のような硬さです。松ヤニ臭がまだ少し残っていました。

過去の記憶から、レッツィーナは松ヤニ臭くて飲みにくいのではと心配しましたが、フルーティーで飲みやすくなっています。オーガニックのレッツィーナも。時代は変わりましたね。それでも好んで飲むのは、やはり年配世代のようです。

 

オーガニック、ビオへの取り組みも多いギリシャワイン

greece16 若手生産者が頑張っています

 

ギリシャワインは20年前くらいから徐々に変化の兆しを見せ、特にこの10年で大きく変化し、生産者たちは世界のワイン市場を意識するようになってきました。

畑の管理に重点を置き、最新の醸造設備の導入など、世界レベルの品質重視の取り組みが、国外での経験を積んだ若手生産者を中心に見られます。オーガニックやビオへの転換も増えており、自然環境との調和を取り入れたバイオクリマティック(bioclimatic)をコンセプトとしたワイナリーなども登場しています。

 

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品質の向上で国際コンクールの受賞歴も増え、また、世界のトレンドである在来品種の人気もあいまって、ギリシャワインは、世界が注目するワインのひとつとなってきました。

ギリシャ人的「ワインの楽しみ方」

 

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ギリシャの人々にとって、ワインのない食事はありえません。食事とともに楽しめる、飲みやすいワインが求められます。何かが突出して強すぎるワインや、アルコールが高くてヘビーなワインは好まれません。

ギリシャのワインは輸出よりも国内消費が多く、輸出はわずか2%。輸出はあまり意識せず、自分たちが楽しむことが第一!そのため、品質が良く、コストパフォーマンスに優れたものが多いのが、ギリシャワインの特徴です。

ギリシャの家庭では、前菜、サラダ、メイン料理まで、すべての料理が一気にテーブルに出されるため、どんな料理とも相性がいいワインが求められます。

「だから、ギリシャワインはどの国の料理にもよく合う」と、ギリシャ出身のマスター・オブ・ワイン、C.ラザラキス氏の談。

 

greece19 コンスタンティノス・ラザラキスMW

 

今回、ギリシャで色々飲みましたが、ギリシャワインは日本の食卓にも馴染みやすいものが多いと思います。日本にもいくつか輸入されていますので、見つけたら気軽に試してみてください。カベルネやシャルドネなどの国際品種もありますが、せっかくなので、ギリシャの在来品種で本場の味を堪能してみてはいかがでしょう。

※取材:2016年5月

(取材・文/綿引まゆみ)

わたびきまゆみ/ワインジャーナリスト わたびきまゆみ/ワインジャーナリスト

ワイン専門誌や料理系雑誌での記事執筆をはじめ、日本ソムリエ協会webサイトのコラムなどを執筆。ワインセミナー、トークショー、海外のワインコンクール審査員など、幅広い活動を行なっている。チーズプロフェッショナル、ビアソムリエ、コーヒー&ティーアドバイザーの資格も所有。スイーツ好き。