都知事選に大学教授が出馬している。舛添要一前知事が、かつて東大助教授だったのは有名だが、こちらは現役の教授だ。

宮崎正弘さん、61歳。フリーランスでの映像制作を経て、いまは大学で後進育成に取り組んでいる。そんな人物が、なぜ都知事選に出馬したのか。筆者は2016年7月22日、宮崎さんへの取材を試みた。

「きょう夕方ならお会いできますが、写真を撮られる格好ではないので......」

謙虚な宮崎さんに、かわりに電話で、と約1時間にわたって話を聞いた。


実際に張られている選挙ポスター(以下、宮崎さん提供)

告示日当日に「事前審査」

宮崎さんは現在、日本大学芸術学部映画学科の教授。大学に休職願を出して、都知事選へ出馬した。その動機は、猪瀬直樹氏、舛添要一氏と、二代続けて都政を襲った「政治とカネ」の問題にある。

「なんで二代もお金のことで知事が辞めるのか。東京都の財政がものすごく苦しいはずなのに、そのトップである知事がお金を使ってしまうのか」

知事に金銭が集まる一方で、自身は交通事故で障害を負い、多額の医療費を払う日々。「真面目にやると、ちゃんと儲からないようにできている」と腹立たしくなり、事前審査の最終日、都選挙管理委員会に電話したという。

「『どう考えても貧乏人にはできない選挙だと思うのですが』と言ったら、『きょうの5時までに書類を取りに来るのであれば計らいます』と。当然『お金はどうするのですか?』と聞いたら、『それは決まりなので、なんとか300万円を工面して頂いて、資料が整うんだったら』というお話をうかがったので、そこまで言われて『じゃあ結構です』とは言えなくなって......」

そこから4日間で、供託金300万円を集め、選挙公報の原稿を書き、書類がそろったのは告示日の午前。あわてて選管へ行き、事前審査を受けた。

「左側を向くと、(本審査を)通っていない方が13名おられたわけですよ。私もこっちの部類なんだろうなと。『通らないんだろうな』と思っていたら、どういうわけか『受理します』と言われました」

「なにをやるんじゃなくて、どうやるんだ」


宮崎さんのポスター

当初の公約は「現在の東京は様々な問題抱えている」「プロデューサーシステムの実現」「私は、5年前に交通事故にあい、片方の耳が聞こえなくなり、もう片方も高い方が聞こえません」の3つ。都をめぐる諸問題のうち「幼児虐待」は年内にもカタを付けたいというが、それ以外は活動を通して変化しつつある。

「障害を持ちながらも、ひとりで選挙をやり抜く私のような応用力・対応力・実行力がなければ、今後の東京都政を引っ張っていくことができない。『なにをやるんじゃなくて、どうやるんだ』という所を公約にあげたいと、やっと(選挙活動を)やりながらハッキリすることができた」

対立候補の「公約」を見比べてみると、口だけで方策が示されない「口約(こうやく)」ばかりだと語る宮崎候補。とくに数人が掲げている「知事報酬ゼロ」には手厳しい。

「ギャランティーは責任の額なんですね。タダでやっている人は責任がなくて、そういうスタッフは全然信用されない。それがプロの世界。収入に見合うだけの仕事をしなければ」

ワクワクしながらの毎日

日々の活動は、公式サイトに逐一掲載している。アイスホッケー仲間と教え子、旧知の2人に手伝ってもらいながらの選挙戦。選挙活動をシステム化して、予算をかけないですむ「実証実験」を行っているという。

「いまワクワクしながら毎日を過ごしています。ただ、終わったら一週間ぐらい、ぱたーんって寝てると思いますけどね。たぶんシワ寄せは来ると思いますけど、全然後悔しないなと思っていて。気心知れた仲間と、あうんの呼吸で動ける。人海戦術よりも効率的な、一番いい方法を取れてますから。がんばります!」

宮崎さんの写真