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「派遣今日で辞めるって言った。明日から行かない」。派遣会社の対応に怒る男性のブログ日記が、はてなブックマークで話題となった。

投稿者は1年ほど派遣社員として勤めていた。3ヶ月ごとの更新だったが、派遣会社から就業条件明示書が送られてくることが遅いことに不満を感じていた。更新満了日の数日前に届くことがあり、「いくらクレームを入れても直らなかった」そうだ。

今回に至っては、更新満了日になっても書類が届かなかった。派遣会社の担当者に問い合わせても、反省している様子もないため、「明日からは出勤しません」と伝えたという。担当者から激高されたが、「時給も条件もわからないのに働けません」と伝えたそうだ。

投稿者は、「契約はお互いの合意があってはじめて成立するものだから遅くても一週間二週間前に送って当たり前だと思うんだけど」と疑問を投げかけていた。今回のような派遣会社の対応は法的に問題ないのか。労働問題に詳しい上林佑弁護士に聞いた。

●就業条件は事前に明示される必要があるが・・・

「結論から言えば、更新期日前ギリギリになって労働条件(就業条件)を明示すること自体は、法律上、違法とは言えません」

上林弁護士はこのように述べる。なぜだろうか。

「まず、労働者派遣の特徴を確認しましょう。

労働者派遣では、派遣会社などの派遣元が、『自己』の労働者として派遣労働者を雇用し、これを『他人』である派遣先に派遣して、派遣先の業務に従事させます。一方で、派遣労働者を直接指揮監督するのは、『他人』である派遣先の事業主です」

派遣労働者の契約の相手方と、実際に業務に従事して指揮監督を受ける相手方が異なるわけだ。就業条件を明示するルールはどうなっているのか。

「労働者との間で労働契約をむすぶ際は、賃金、労働時間その他の労働条件を明示する必要があります。

また、労働者派遣をしようとするときは、派遣元はあらかじめ、派遣労働者に、従事する業務の内容や派遣の期間などの就業条件を明示する必要があります。

このことは、労働基準法と『労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律(労働者派遣法)』で定められた雇用主、派遣元の義務であり、違反した場合には罰則が設けられています。

そのため、派遣元事業主は、派遣労働者と労働契約を締結する際に、労働基準法と労働者派遣法に基づき、労働条件(就業条件)を明示する必要があります」

●なぜ、「更新ギリギリ」に就業条件が示されるようなことが起きるのか?

明示する時期については規定がないのだろうか。

「労働基準法では『労働契約の締結をする際』(更新の際は、更新後の労働契約を締結する際)、労働者派遣法では『あらかじめ』とそれぞれ規定されています。

いずれも『事前に』明示することは求めていますが、『1週間前に明示せよ』『1か月前に明示せよ』とまでは定めていません。

そのため、更新期日前ギリギリになって労働条件(就業条件)を明示すること自体は、法律上、違法とは言えないのです」

更新前ギリギリに派遣労働者に対して就業条件を明示するといった運用がなされる背景には、どんな事情が考えられるのか。

「労働者派遣の場合、派遣元事業主は、派遣先事業主との間で労働者派遣契約を締結(更新)

した後に、派遣する労働者の確保をすることが一般的でしょう。

そのため、派遣元・派遣先事業主の間で、労働者派遣契約を結ぶ、あるいは更新する際の遅れが、そのまま、派遣元事業主による派遣労働者への労働条件(就業条件)の明示の遅れにつながっているということが考えられます。

派遣労働者の立場からは、契約(更新)直前に就業条件が明示され、労働契約の締結を求められても、その条件を受け入れて、契約(更新)するかは決めかねることもあるでしょう。また、派遣労働者は契約(更新)に応じなければならない義務はありません。

そのため、派遣元事業主が、更新期日ギリギリになって就業条件を明示したような場合には、派遣労働者を確保できないという事態を招く恐れがあるといえます。

派遣元事業主、派遣労働者のいずれにとっても、早めに、労働条件(就業条件)の明示がなされることが望ましいことは間違いないでしょう」

上林弁護士はこのように述べていた。

(弁護士ドットコムニュース)



【取材協力弁護士】
上林 佑(かみばやし・ゆう)弁護士
仙台弁護士会所属。労働問題を中心に、その他企業法務一般、交通事故、知的財産権等、広く取り扱っている。
事務所名:三島法律事務所