画像

写真拡大

 オープンイノベーションという言葉を耳にする機会が増えてきた。実際に、新たなビジネスモデルやサービスを創出するケースも出てきている。このような潮流はなぜ起きているのか。今回、電通アイソバーの代表取締役社長CEOの得丸英俊氏、同社クリエーティブ部長の田場晋一朗氏、ディープラーニングの技術を研究・提供するLeapMindのCEO松田 総一氏にビジネス・マーケティング/クリエイティブ/テクノロジーの3つの視点から意見を聞いた。

■進むビジネスのシームレス化、その背景とは?

 オープンイノベーションという言葉をマーケティングの領域でも耳にする機会が増えてきた。実際に、これまでは関係がなかったように感じる企業同士がタッグを組み、新たなビジネスモデルやサービスを創出するケースも出てきている。業種の垣根を越えて発生するコラボレーションは、ビジネスのシームレス化とも言えるかもしれない。

 このような潮流はなぜ起きているのか。今回、電通アイソバーの代表取締役社長CEOの得丸英俊氏、同社クリエーティブ部長の田場晋一朗氏、ディープラーニングの技術を研究・提供するLeapMindのCEO松田 総一氏にビジネス・マーケティング/クリエイティブ/テクノロジーの3つの視点から意見を聞いた。
左から反時計回りに、Leap Mind株式会社代表取締役 CEO 松田総一氏
電通アイソバー株式会社 代表取締役社長 CEO 得丸英俊氏
同社クリエーティブ部長 クリエーティブディレクター/アートディレクター 田場晋一朗氏

MarkeZine編集部(以下、MZ):現在、異業種コラボレーションの取り組みが広がっています。この流れが起きている背景には何があるのでしょうか?

得丸:一つにはデジタルテクノロジーが普及したことによって環境が大きく変わった点があると思います。例えば、情報流通のコストは圧倒的に下がりましたよね。それから、情報インフラも必要なときだけ使うというスタイルが定着しました。さらに、デジタルによって国境も容易に越えられるようになりました。コラボレーションしやすい環境ができあがっているのです。

 一方で、私達もデジタル化によって普段から接する情報量が圧倒的に増えました。昔は自社内や自分の業界のことしか知らない、という状況もあったかと思います。ですが、今や別に聞きたくなくても勝手に情報が入ってくる。自然と、皆さんの視野が広がってきているのではないでしょうか。そのため、マインドセットも「自社内だけでクローズでやっているよりも、外の知恵を入れたほうがいい」という方向に変わりつつあると思います。

MZ:松田さんは外部から相談を受ける立場かと思います。得丸さんのお話を聞いて、実感はありますか?

松田:かなりありますね。個人的には、昔のようにセグメントで分ける時代には終わりがくると思います。グーグルが車を作るというのは有名な例ですが、自動車業やインターネット業、食品業といった業界で区切ろうとしても、境目が曖昧になってきている。

 というのも、皆さん悩んでいるところは大体一緒なんです。ビッグデータやIoTが悩みの焦点になっていて、今どのようなデータを持っているか、そのデータを使って何をするかを考えている。いわゆる異業種コラボレーションも、一見全く違う業種同士でも実は同じ問題を持っていて、解決したいというケースが多いのです。

 どうしても外から見ると、飲食などの事業ドメインに目が行きがちですが、もっと根底にある会社の目的に立ち返って、じゃあ何ができるのかを考える企業が多くなってきたと思います。自動車会社だから自動車のことだけやっていればいいといった時代から、人間に対して何ができるのか・どのようなサービスを提供できるかという視点に立ち返ってきている。ですから業種も関係なく、フラットになってきていると思いますね。

■企業は「私に何をしてくれるの?」に応えなければならない

MZ:コラボレーションの動きが活発な業種や業界があるのかと思っていたのですが、そうではないと。

得丸:要は、もう製造業の時代じゃなくなっているわけです。製造業もどんどんサービス企業化していて、そのサービスやインフラ自体がオンラインへ急激にシフトしている。自然と、その方面と相性のいい企業もそちらに向かいます。ですから、インダストリーで分ける話ではなくなっている。

 ぱっと見には確かに、家電だとか自動車だとかのエレクトロニクスや通信企業が相性はいいような感じがします。けれども、一方では、化粧品や日用品を作っている会社でもコラボレーションしているケースもある。それは松田さんが言うように、企業が根本を考えているからでしょう。現在、そういった動きが随所でありますから。あらゆる産業で同じことが起きてくると思います。

松田:先ほど得丸さんが言ったように、私たち消費者が大量の情報を手に入れられるようになってきました。サービスや製品の比較も当たり前のことですよね。つまり、情報の非対称性で成り立っていた企業は通用しなくなる時代です。お客さんの「私に何をしてくれるの?」に応えることが非常に重要になってきている。そこに気づいた企業が「うちは何ができるか」を考えて動き始めている印象を持っています。

MZ:クリエイティブの立場から見るといかがですか?

田場:コミュニケーションのコンタクトポイントがどんどん増えてきていて、ユーザーも多様化しています。もうF1やF2といった属性では語られなくなってきている。この多様化に対応するためにコラボレーションが加速してきているように感じています。自社だけでなく様々な視点を入れることで多面的にコミュニケーションを捉えられますから。

 また、情報の流通量が増えて市場のスピードが早まっています。ですから、自分たちだけでやろうとすると、リソースも含めて無理が出てしまう。そこで違う武器を持ったところと組んで、早めに市場に出して、その感度を測るという流れがクリエイティブでは求められていると感じています。長く温めるよりも、早く市場に出して反応に合わせてどんどん変えていくというような。

得丸:コンシューマー側の考え方の変化も影響していると思います。ものを所有してどうするかから、そのものが提供してくれる価値を使うとか利用するとかにシフトしている。所有しなくてもサービスが利用できればいい。すると企業も、製品を最終的な完成形で出すよりは、ベータ版で出して使ってもらって軌道修正していくという方法のほうがフィットする。

田場:少し話がそれますが、デジタル化によって一度のコミュニケーションも深さより速さが重要になっている気がします。昔ははがきを書いて相手に届いて読まれるまでに時間があって、その分、思いが蓄積されていた。今は瞬時に連絡を取れるので、意外と一回のコミュニケーションの深度自体は浅くなっている。ですから、企業側が仕掛けるコミュニケーションも、深さよりもスピードによる解決を求めるケースも少なくない。

松田:究極は、LINEスタンプが定着している理由もそこにあるかもしれないですね。テンポよくスタンプを打ち返すことに慣れると、文字を打つのが面倒になってきますから(笑)。

伊藤桃子(編集部)[著]