「ポケモンGO」のビジネスモデル──仮想と現実が混じる時代のゲームの稼ぎ方

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世界中で社会現象になっている人気ゲーム「ポケモンGO」。配信元企業のナイアンティックは、このゲームによって年間10億ドルの売上を生み出すことも可能だとアナリストは予想する。「ゲームは無料」が当たり前の時代に、彼らはどんな戦略で利益を出そうとしているのか。

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先週末[原文記事は7月19日(米国時間)公開]、もし『Pokémon GO』(ポケモンGO)をプレイしたなら、この大人気ゲームの配信元企業・Niantic Inc.(ナイアンティック)が、なんとか必死にサーヴァーをダウンさせないようにしていたことに気づいたかもしれない。

これは単に、モンスターを捜し求めて街に繰り出すプレーヤーたちがサクサクプレイできないことにがっかりした、という話ではない。サーヴァーのダウンはナイアンティックにとっても損失なのである。もしポケモンGOが落ちてしまったら、プレイヤーたちはゲーム内でお金を使うことはできないのだから。

ひと昔前、ゲーム開発業者はゲームを制作し、それを売りさえすればよかった。プレイヤーは『スーパーマリオブラザース3』のゲームカートリッジに50ドルを支払えば、あとは好きなだけゲームをプレイできたわけだ。

任天堂は、ゲームに関してサーヴァーの維持・管理をしたり、セキュリティーパッチを提供したりする必要はなかった。ゲームが上手く作動しなければ、カートリッジに息を吹きかけるのはプレーヤーの仕事だったのである。

しかしこの売り方はまた、当時の任天堂に、より莫大なお金を儲けるためのオンラインでの拡張性がなかったことも意味している。

オンラインゲームの新しい儲け方

今日のモバイルゲーム業界は、完全に変わっている。ゲームというものは無料か、無料同然とプレーヤーは思っている。その代わりにゲーム会社は、プレイヤーになんとかお金を使わせるために、アプリ内課金やアップグレード料金に収益源を依存している。

これが、グーグルの元子会社で、独立したいまは任天堂からもかなりの投資を受けているナイアンティックがポケモンGOからお金を稼いでいる方法だ。

プレーヤーは「ポケコイン」と呼ばれるヴァーチャル通貨を購入し、ゲーム内でアイテムと交換することができる。そしてこの通貨の売上が、ゆくゆくはナイアンティックの大儲けにつながる可能性がある。

ポケモンGOは現在、すでに1日100万ドルの利益を上げており、もしさらに多くの国々に利用範囲を拡大させ、ゲームを進化させながらサーヴァーの問題を解決することができれば、最終的には年間10億ドル稼ぐことも可能だろう、とアプリ分析会社AppAnnieは推定している。

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ナイアンティックの戦略

ナイアンティックの経営幹部は、すでに企業と、ポケストップやジムといった場所に関してスポンサー契約をすることに合意している

これによって、たとえプレーヤーがポケコインを多く使わずとも収益が上がることになる。米メディア『Quartz』によれば、ナイアンティックに投資するデヴィッド・ジョーンズも、企業がスポンサードアイテムを提供するというアイデアを提案しているそうだ。

ナイアンティックは、同社が開発した位置情報ゲーム『Ingress』(イングレス)を通して、両方のビジネスモデルを経験している。Jamba Juiceといった企業がイングレス内の場所に(ヴァーチャルな)自社店舗を設置したり、ソフトバンクやローソン、三菱UFJフィナンシャルグループといった企業が、このゲームでスポンサードアイテムを扱っている。

噂によると、ナイアンティックはマクドナルドと提携して、日本中のマクドナルドの店舗で、スポンサードのポケストップやジムを始めるらしい[編註・日本でのローンチに合わせ、7月22日にコラボが発表された]。

難点といえば、ヴァーチャルゲーム内に店舗をもつことが、(スポンサー企業にとって)実際にどれほど価値があるのかがよくわからないことだろう。例えばJamba Juiceは、2014年にナイアンティックとの契約を白紙に戻したとみられている(イングレス内から店舗が突然姿を消していた)。

混じりゆく2つの世界

この問題に対処するひとつの方法は、現実の場所を、ゲームの世界により巧妙に取り入れることだろう。

現在、ポケストップやジムの場所の設定は、ずいぶん無作為的なやり方で行われている。街に描かれた壁画や彫像、教会や商業施設に至るまで、ただ目印となるものが選ばれているにすぎない。

いまのところ、教会のポケストップは機能的にはピザ屋のポケストップと変わらない。しかし、いずれはこうした状況が変わっていくだろう。「ポケモンGOの将来の可能性を早く見てみたいものです。薬局に行けば自分のポケモンを回復させることができ、ファーストフード店に行けばモンスターの食べ物が手に入るようになるようなね」。ジョーンズは『Quartz』に語っている。

考えるべきことはほかにもある。プライヴァシー擁護派が指摘しているように、ポケモンGOによってイングレスは多くのプレイヤーの個人情報を収集することができる。アプリはグーグルアカウントへのフルアクセスこそ要求しないが、プレイしている間にプレイヤーの位置を追跡する。

これは、ゲーム内に個人向けの大々的な広告が現れる可能性を示唆している。マクドナルドは恐らく、頻繁に足を運ぶ顧客に対してのみポケモンジムを出現させることだろう。あるスポーツジムに通っているプレーヤーは、別のジムに乗り換えることでゲーム内でボーナスを獲得できるようになるかもしれない。

こうしたすべては、プレーヤーにとってぞっとすることかもしれない。ゲームのなかであまりに多くの企業ロゴを目にすれば、がっかりすることもあるだろう。たとえこうした企業とパートナーシップを組む戦略が上手くいかなくても、ポケモンGOの課金システムというビジネスモデルはすでによくできているのだが。