鳥越俊太郎氏の「新公約」が波紋を呼んでいる(写真は2016年7月21日、東京・中野駅前で撮影)

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東京都知事選(2016年7月31日投開票)に出馬している鳥越俊太郎氏(76)が2016年7月25日に伊豆大島(大島町)で行った演説で新たな公約を打ち出し、波紋を広げている。19年10月に10%に引き上げられる予定の消費税率について、「大島は、10%かけません!例えば半分の5%にします」とぶち上げたのだ。

この公約は鳥越氏の「指南役」が最近国会で出した質問主意書を参考にしたとみられるが、唐突だと受け止めた人も多く、早くも「鳥越さんにドクターストップをかけるべきだ」(橋下徹・前大阪市長)などと痛烈な批判が出ている。

消費税率設定する権限ないが「ちゃんと交渉してやっていきたい」

鳥越氏は演説の中で、欧州では日本よりも消費税率が高いが、その中でもフランスのコルシカ島と英国のマン島で「消費税をずっと縮小して下げた」ことで、

「非常に経済的にも栄えることになって、住民の方も非常に喜んでおられる。そういう現実があるそうです」

などと説明。その上で、消費税率の10%への引き上げが迫っていることを念頭に、

「大島は、10%かけません!例えば半分の5%にします」

と声を張り上げた。都知事が消費税率を設定することは難しいことは承知としたうえで、

「しかし、都知事として、国に働きかけて、『少なくとも東京の島々については、消費税は半分にしてください、半分にしてください、これがないと、東京都の島々は人々が生きていることはできません』と言う風にちゃんと交渉してやっていきたいと思いますが、いかがでございますかー?」

と呼びかけた。

実は鳥越氏が例に出した2つの島のうち、コルシカ島のケースは、民進党の松原仁衆院議員(東京都連会長)が、16年5月30日付けの質問主意書で取り上げたばかりだ。松原氏は鳥越氏の「指南役」とも言える存在で、大島での演説にも同行していた。鳥越氏は松原氏の知恵を借りた可能性が高い。

松原氏の質問主意書では、欧州では離島での税率が低く抑えられているケースがあるとして、

「例えばフランスでは、付加価値税の標準税率は20%であるが、食料品やガス・電話料金などの生活必需品には軽減税率が適用され、本土では5.5%である。これがコルシカ島ではさらに2.1%とより低く設定されている」

などとコルシカ島の事例を紹介しながら、

「離島振興のために離島の消費税については軽減税率を適用するか、あるいはそれに代る施策を真剣に検討する必要があると考える」

と主張している。

「こんな演説を許していたらもう選挙は成り立たない」

松原氏の質問では離島での「生活必需品の軽減税率」について議論しているのに対して、鳥越氏は消費税そのものの税率について議論している。鳥越氏が松原氏の議論を正しく理解していないか、意図的に議論を単純化したのかは明らかではない。

この議論をめぐっては、橋下徹氏がツイッターで、

「こんな演説を許していたらもう選挙は成り立たない。言った者勝ちになる。民進党は鳥越さんの公約を実現する覚悟があるのか。その覚悟がなければ、鳥越さんにドクターストップをかけるべきだ」
「島だけ5%でいいんですか?しかも演説で立ち寄った島で、思い付いたように言っただけ」

などと批判。ほかにも、実現性を疑問視する声が相次いでいる。

政府は、松原氏の主意書に対する答弁で、特定地域で消費税の軽減税率を導入ことについて

「事業者が、当該地域に販売する商品と当該地域以外に販売する商品及び当該地域から仕入れた商品と当該地域以外から仕入れた商品とを区分して管理し、その区分に基づいて申告を行うことが必要となるとともに、当該申告の適正性を確保するため、当該地域とそれ以外の地域との間の商品の出入りを管理する仕組みが必要となるが、このような仕組みを設けることは困難である」

などと指摘。実現には否定的な見解を示している。